RSI Labとは?Sakana AIの自己改善型AI研究を解説

先に要点

RSI Labは、Sakana AIが2026年6月5日に始動を発表した、再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement)を研究する専任グループです。AIが研究・評価・改良の工程へ入り、AI開発プロセスそのものを改善する循環を、限られた計算資源でも進められる形で設計することを掲げています。

  • RSIは、AIが自分を作る工程へ継続的に関与し、次のAIを改善していく研究テーマ
  • RSI Labは東京を拠点に、研究者とエンジニアの専任体制を立ち上げる組織
  • 発表は研究構想と組織設立であり、一般向け製品や無制限な自己改善の完成発表ではない

RSI Labとは

RSIは「Recursive Self-Improvement」の略で、日本語では再帰的自己改善と訳されます。Sakana AIは、AIを人間が毎回手作業で調整するだけでなく、AI自身が研究案を作り、実験し、評価し、次のモデルやアルゴリズムを改善する循環へ移すことを目指しています。

ここでいう自己改善は、公開中のチャットAIが監督なしに勝手に書き換わるという意味ではありません。公式発表では、AIエージェントが基盤アーキテクチャのコードを書き、ベンチマークし、検証する研究開発ループとして説明されています。検証可能な安全策を最初から組み込むことも、中心課題に置かれています。

Sakana AIが示す4段階のロードマップ

  1. Agent-Native Models:チャット応答だけでなく、エージェントとして考え、計画し、動く用途を前提にした基盤モデルを作る。
  2. The AI Scientist:モデルが研究アイデア、実験、論文作成、査読などの研究工程を自動で進める。
  3. Recursive Self-Improvement:AIが自分を支えるアーキテクチャのコードを作成・評価・検証し、次の改善へつなぐ。
  4. Democratized AI:サンプル効率の高い自己改善により、巨大な計算基盤を持たない国や組織でも必要なAIを作れる状態を目指す。

Sakana AIは、単一モデルへ計算資源を大量投入する競争だけでなく、少ない試行から学ぶ仕組みを重視しています。日本の計算資源上の制約を、計算効率の高い研究設計を生む条件として捉えている点がRSI Labの特徴です。

RSI Labにつながる主な研究

  • LLM-Squared / DiscoPOP(2024):LLMが、LLMを学習させる新しい選好最適化アルゴリズムを進化的な探索で発見。
  • The Darwin Gödel Machine(2025):コードを書き換えるエージェントの系統を維持しながら、ソフトウェア工学能力を継続的に改善。
  • ShinkaEvolve(2025):適応的サンプリングと新規性フィルタリングにより、少ない試行でプログラムを進化させる枠組み。
  • ALE-Agent(2025):試行錯誤から教訓を抽出し、AtCoder Heuristic Contest 058で人間参加者804名を上回った最適化エージェント。
  • Digital Red Queen(2026):攻撃と防御のような敵対的なコード進化を扱い、RSIのサイバーセキュリティ応用を探る研究。
  • The AI Scientist(2024〜2026):アイデア生成から実験、論文作成、査読までを自動化する研究システム。

これらは同じ成果を言い換えたものではなく、アルゴリズム発見、自己改変エージェント、プログラム進化、研究自動化など、RSIに必要な工程を別々の角度から積み上げた研究群です。

発表から分かること・まだ分からないこと

  • 分かること:専任研究グループを東京で立ち上げ、計算効率、エージェント向け基盤モデル、AI Scientist、自己改善ループ、安全策を一体で研究する方針。
  • まだ分からないこと:一般利用できる製品の提供時期、統一ベンチマーク、必要計算量、実環境での再現性、各安全策の具体的な実装。
  • 誤解しない点:個別研究のベンチマーク改善は、あらゆるAIが際限なく自己改善できることを証明したものではない。

責任あるRSIで重視される課題

公式発表は、進化ループが想定分布から外れること、ベンチマークでは通っても実環境で失敗する自己改変、与えた制約の抜け道を見つけるエージェントを、中心的な工学課題として挙げています。RSI Labは、否定的な結果も含む公開と、検証可能な安全策を最初から設計する方針を示しています。

関連するSakana AI研究と業務活用

Sakana AIの個別研究を続けて読む場合は、ブラックボックス最適化を統一的に整理したICML 2026論文の解説も参考にしてください。

現在の業務改善で実装対象になるのは、検証可能な範囲へ絞った生成AI、外部API、エージェント連携です。Neutrope BizのAI活用・業務効率化支援では、RSIの完成を前提にせず、要件整理、小規模な検証、評価基準、運用上の安全策を設計します。

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