アムステルダム中心部:ジンフェルグラハト内部の17世紀の環状運河地区

登録年
2010年
所在国
オランダ
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(i) (ii) (iv)

どこにあり、何が登録されたのか — 完全に人工の「港市」

オランダ王国。

本体 198.2 ha
緩衝地帯 481.7 ha(本体の約2.43倍)
登録 2010年、基準 (i)(ii)(iv)
dossier 1349
節の形 完全性と真正性が一つの節(`Integrity and authenticity`)
保存状況報告 2011年

何が作られたか

アムステルダムの運河地区の歴史的な都市の総体は、16世紀末から17世紀初めに建てられた新しい「港市」のための事業であった。

要素 中身
運河の網 歴史的な旧市街と中世の港の西と南に。旧市街を取り囲んだ
同時に 市の要塞化された境界、ジンフェルグラハトを内陸へ置き直すこと
やり方 沼地を排水して市を拡げる長期の計画。同心の弧をなす運河の体系を用い、中間の空間を埋める

これらの空間が、破風の家と多数の記念物を含む均質な都市の総体の発展を可能にした。

この都市の拡張は、その時代のもっとも大規模でもっとも均質なものであった。それは大規模な都市計画の模型であり、19世紀まで世界中で参照とされた。

「参照とされた」期間が書かれています。

何が価値とされたか

アムステルダム運河地区は、大規模な港市の完全に人工的な創造を通じて、模範的な水利と都市の計画を大きな尺度で例示している。

破風の正面はこの中産階級の環境に特徴的であり、その住居は、海の交易を通じた市の富裕化と、カルヴァン派の改革に結びついた人文主義的で寛容な文化の発展の両方を証している。

「寛容」が価値として書かれる例はザモシチ564 にもあります(「高い水準の宗教の寛容」)。

三つの基準 — 世界経済の首都

基準 中身
(i) 16世紀末の設計と17世紀の建設による、新しく完全に人工的な「港市」。水利工学・都市計画・建設の合理的な計画・中産階級の建築の傑作であり、唯一無二で革新的、大規模でありながら均質な都市の総体
(ii) ほぼ二世紀にわたる相当な影響の交流を証する——土木工学・都市計画・建築だけでなく、一連の技術・海事・文化の分野においても。17世紀にアムステルダムは、国際的な商業の交易と知的な交流、人文主義思想の形成と普及のための決定的な中心であり、その時代の「世界経済(world-economy)」の首都であった
(iv) 水利・土木工学・都市計画・建設と建築の知識における専門性を要し、それを例示する、建てられた都市の総体の際立った例。17世紀に、完全に人工の「港市」の模型と、さまざまな正面と破風を持つオランダの単一住居の型を確立した。市は、最高の水準において、近代世界の歴史における意義ある時代への証言である

基準(i)が付いています。

この章で基準(i)が付くのはここだけです。

基準(i)は「人間の創造的才能の傑作」で、アムステルダムでは「水利工学・都市計画・建設の合理的な計画・中産階級の建築の傑作」と四つを並べて書かれます。

「世界経済の首都」という語が基準(ii)に入っています。

完全性と真正性が一つの節 — 広告が視覚の条件を汚染する

この資産は、完全性と真正性が一つの節(`Integrity and authenticity`)にまとめられています。

これまでに同じ形が出たのは次の資産です。

遺産 章
ラヴォーのブドウ畑の段々畑1243 4章
聖山スレイマン・トー1230 4章
ロロペニの遺跡群1225 24章
アムステルダムの環状運河1349 8章
ラ・ショー・ド・フォン/ル・ロクル1302 8章

同じ章に二つ入りました。

残っているもの

都市の配置の基礎をなす同心の円弧の運河の網は、放射の水路と街路とともに、その古い堤と歴史的な正面の整列を伴って全体として生き延びている。

17世紀と18世紀に建てられた家の大多数はいまも存在し、概してよい保全の状態にある。この基本の状況は、いまも生きて活動している都市の総体にとって、根本的に健全である。

「根本的に健全(fundamentally healthy)」と書かれる資産は、これまで読んだ106件でここだけです。

失われたもの・影響しているもの

街路がときに拡げられ、正面の住居が建て直された(とくに現在のウェースペルストラート幹線道路)
古い土木と水利の構造物は、概して置き換えられた
高層の近代の建物が、一部の景観の見通しに影響している(とくに資産の北部)
攻撃的な広告が、資産の視覚の条件を汚染している

「広告が汚染している(advertising pollutes)」と書かれる資産は、これまで読んだ102件でここだけです。

ゼミは、脅威として何が書かれているかを資産ごとに見ます。「開発」「観光」「気候変動」だけが脅威ではありません。

遺産 変わった脅威
アムステルダム1349 攻撃的な広告
ジャイプール1605 通信塔/成木の喪失
マロティ985(5章) 火に敏感な固有のカエルへの火の影響
ワッデン海1314(5章) 石油とガスのリグ/風力発電所
ルーネンバーグ741 不動産価値の上昇と維持の費用(所有者への圧力)

誰が守っているか — 推量形で書かれた保護管理

保護

きわめて多数の建物と構造物が、国と市の遺産の記載によって保護されている。

保護に関する状況は、アムステルダム中央区(市の心臓部)の運営の文脈の中で複雑であるように見えるが、保護を規律する手続は守られている。

「複雑であるように見える(seems to be complex)」——推量形です。

責任を持つ者の側のよい意識は、近年の過去にときに統制が難しかった都市の成長の行き過ぎが、ますますよく管理されているように見えることを意味している——とくに資産内の広告と、資産の都市の景観への高層の建物の視覚の影響について。

一段落に推量形が二度出てきます。

この章と前の章では、推量形の扱いが問題になりました。

遺産 推量形
アムステルダム1349 「複雑であるように見える」「ますますよく管理されているように見える」
泉州1561(24章) 気候変動は「実効的な統制のもとにあるように見える」

ゼミは、推量形を断定に変えません。「保護は複雑だ」「よく管理されている」と書き換えると、一次資料より強い主張になります。

管理

すべての管理の措置は、実効的で一貫した体系をなしている——アムステルダム中央区の責任のもとで、記念物局の保証を伴って。

資産のための水平の管理と監視の機関がいま実施されている——アムステルダム世界遺産局である。

「水平の(horizontal)」管理機関という語が使われます。

複数の部門をまたいで横に通す機関、という意味で書かれています。

この章では、調整の機関の呼び方がいくつも出てきました。

遺産 調整の機関
アムステルダム1349 水平の管理と監視の機関(アムステルダム世界遺産局)
ラ・ショー・ド・フォン1302 常設調整委員会(推薦書の運営委員会が2008年3月に移行)+多分野のグループ
プレチニクの作品群1643 管理主体+共同の管理者(リュブリャナ建築デザイン博物館)
北京中軸線1714 助言・調整の仕組み+北京中軸線保護センター(19機関)
ル・アーヴル1181 在地の委員会(市の選出公職者・国の代表・資格ある人物)

2級で押さえること

基準(i)(ii)(iv)、本体198.2 ha・緩衝481.7 ha(約2.43倍)、2010年登録。完全性と真正性が一つの節(`Integrity and authenticity`。4章のラヴォー1243・聖山スレイマン・トー1230、24章のロロペニ1225 と同じ形で、同じ8章のラ・ショー・ド・フォン1302 も同型)。16世紀末から17世紀初めに建てられた新しい「港市」のための事業。沼地を排水して市を拡げる長期の計画で、同心の弧をなす運河の体系を用い、中間の空間を埋めた。同時に、市の要塞化された境界ジンフェルグラハトを内陸へ置き直した。この都市の拡張はその時代のもっとも大規模でもっとも均質なもので、19世紀まで世界中で参照とされた。破風の正面が中産階級の環境に特徴的で、住居は海の交易を通じた富裕化と、カルヴァン派の改革に結びついた人文主義的で寛容な文化の発展の両方を証する。この章で基準(i)が付くのはここだけで、「水利工学・都市計画・建設の合理的な計画・中産階級の建築の傑作」と四つを並べて書く。基準(ii)は「17世紀にアムステルダムは……その時代の世界経済の首都であった」。基準(iv)は完全に人工の「港市」の模型と、さまざまな正面と破風を持つオランダの単一住居の型を確立したとする。同心の円弧の運河の網は、古い堤と歴史的な正面の整列を伴って全体として生き延びている。17世紀と18世紀の家の大多数はいまも存在し、「この基本の状況は、いまも生きて活動している都市の総体にとって、根本的に健全である」——この書き方は106件でここだけ。失われたもの・影響しているものは、街路の拡幅と正面の建て直し(ウェースペルストラート幹線道路)・古い土木と水利の構造物の置き換え・高層の近代の建物による景観の見通しへの影響(とくに北部)・攻撃的な広告が資産の視覚の条件を汚染していること——広告が脅威として書かれるのは106件でここだけ。保護管理が推量形で書かれる——「保護に関する状況は……複雑であるように見える」「都市の成長の行き過ぎが、ますますよく管理されているように見える」。ゼミは推量形を断定に変えない。管理はアムステルダム中央区の責任のもと、記念物局の保証を伴い、「水平の管理と監視の機関」としてアムステルダム世界遺産局が実施されている。保存状況報告は2011年。

オリジナル確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:アムステルダムの運河地区の都市の拡張について、説明文が書いていることは?

  1. その時代のもっとも大規模なものだが、均質さの点では同じ17世紀のほかの港市の事業に劣ると説明文に書かれている
  2. 19世紀に入ってから世界中で参照されるようになった
  3. 均質な都市の総体ではあるが、都市計画の模型とまでは書かれていない
  4. その時代のもっとも大規模でもっとも均質なもので、都市計画の模型として19世紀まで世界中で参照とされた
正解と解説を開く

正解:4.その時代のもっとも大規模でもっとも均質なもので、都市計画の模型として19世紀まで世界中で参照とされた

説明文は `This urban extension was the largest and most homogeneous of its time. It was a model of large-scale town planning, and served as a reference throughout the world until the 19th century` と書きます。「もっとも大規模」と「もっとも均質」の両方が付き、分母は「その時代の」です。参照とされたのは19世紀までで、19世紀から始まったのではありません。

確認2:アムステルダムの環状運河の脅威として、これまで読んだ106件でここだけ書かれているものは?

  1. 高層の近代の建物が景観の見通しに影響していること
  2. 攻撃的な広告が、資産の視覚の条件を汚染していること
  3. 脅威は挙げられていない
  4. 攻撃的な広告による視覚の条件の汚染と、運河の水質の悪化の両方
正解と解説を開く

正解:2.攻撃的な広告が、資産の視覚の条件を汚染していること

> 攻撃的な広告が、資産の視覚の条件を汚染している。水質についての記述はありません。高層の建物の影響も書かれていますが、ほかの資産にもあります(ジャイプール1605 の通信塔、ル・アーヴル1181 の高さの扱いなど)。脅威として何が書かれているかは資産ごとに違うので、「開発」「観光」「気候変動」だけを探しません。

確認3:アムステルダムの環状運河の保護管理の節の書き方の特徴は?

  1. すべて断定で書かれている
  2. 保護管理の節は無い
  3. 推量形が二度ある(「複雑であるように見える」「ますますよく管理されているように見える」)
  4. 推量形が二度あり、さらに同じ段落に保護を規律する手続は守られていないとも断定で書かれている
正解と解説を開く

正解:3.推量形が二度ある(「複雑であるように見える」「ますますよく管理されているように見える」)

> 保護に関する状況は……複雑であるように見えるが、保護を規律する手続は守られている。> ……都市の成長の行き過ぎが、ますますよく管理されているように見える……手続は守られていると断定されています。ゼミは推量形を断定に変えません。24章の泉州1561 も気候変動を「実効的な統制のもとにあるように見える」と書きました。

確認4:アムステルダムの環状運河の管理機関について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. アムステルダム世界遺産局が「水平の管理と監視の機関」としていま実施されている
  2. 記念物局が単独で管理している
  3. 管理機関についての記述は無い
  4. アムステルダム世界遺産局が「水平の管理と監視の機関」として実施されているが、その設立はまだ提案の段階である
正解と解説を開く

正解:1.アムステルダム世界遺産局が「水平の管理と監視の機関」としていま実施されている

> 資産のための水平の管理と監視の機関がいま実施されている——アムステルダム世界遺産局である。提案の段階ではありません。管理の措置はアムステルダム中央区の責任のもとで記念物局の保証を伴ってなされ、「水平の(horizontal)」は複数の部門をまたいで横に通す、という意味で書かれています。

参考資料

確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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