バンディアガラの断崖(ドゴン人の地)

登録年
1989年
所在国
マリ
登録区分
複合遺産
地域
アフリカ
登録基準
(v) (vii)

どこにあり、何が登録されたのか

マリ。400,000 ha におよぶ広大な文化的景観で、289の村が三つの自然地域に散っています。

地域
砂岩の台地
断崖(エスカープメント)
平野

登録範囲の3分の2以上が台地と断崖に覆われています。

住民は本質的にドゴンの人びとで、聖なる儀礼と伝統に表れるきわめて密な環境との関係を持ちます。

なぜここに住んだのか

旧石器時代以来の人の居住が、豊かで密な有形・無形の文化を景観へ調和して統合してきました。もっともよく知られるのは洞窟に住んだとされるテレムとドゴンの文化です。

この過酷な環境と到達の難しさは、15世紀以来、恐るべき侵略者に対するドゴンの防衛の必要に応える自然の避難所だった。 台地に塹壕を築き、断崖の面にしがみついて、ドゴンはこの防御の避難所のおかげで、数世紀来の文化と伝統を保つことができた。

「守りにくい場所だったから文化が残った」という読み方です。キューバのコーヒー農園(1008)が放棄されたから残ったのと並べて読めます。

何が建っているか

ドゴンの建築は場所の物理的な制約を利して適応してきました。高い台地でも、断崖の面でも、平野でも、手に入るすべての要素を使って村を建て、その才知と生死の哲学を映しているとされます。

建物 中身
穀倉 多くは方形で、茅を葺いた先細りの屋根。文化圏によっては村に多数ある
ギンナ(gin’na) 大家族の家。一般に2層。バンコ(日干し土)の正面は窓がなく、一連の壁龕と扉があり、しばしば彫刻の文様で飾られる——夫婦の代々の世代を象徴する男女の人物の列
トグ・ナ(togu-na) 大きな日陰。粗く削った木の柱で枝の屋根を支え、男たちのためのベンチのある台に陰を作る長い建造物
ビヌ(binu) トーテムの聖所。きわめて多様で、洞窟のものはテレムの祭祀の場を生かしており、バンコで建てたものは家に似る

もっとも崇敬されるビヌはホゴン(一つまたは複数の村の司祭で、独りで暮らす)の責任にあり、その霊感の源は蛇レベ(Lèbe)で、そのトーテムはしばしば住居の扉の近くに彫られています。

複合遺産 — 基準(vii)に固有植物と聖なる動物が入る

この資産は複合遺産です。基準は(v) と (vii)。

基準 対象
(v) 伝統的な宗教に結びついた思考の体系の際立った現れで、岩屑と印象的な地質的特徴の自然景観の中で、建築遺産と調和して統合されたこと
(vii) 断崖とその岩屑が西アフリカで唯一無二の例外的な美しさの自然域をなすこと

基準(vii)の記述に挙げられているものを読むと、自然の価値の中に文化が入り込んでいます。

要素
地形の多様性(台地・断崖・平野)と自然の記念物(洞窟・二次砂丘・岩陰)——異なる侵食現象の継続する影響を証する
固有植物 Acridocarpus monodii——生育域が断崖に限られる
ドゴンの治療者と呪医が使う特定の薬用植物
淡いキツネ・ジャッカル・ワニを精神的に結びつける聖なる儀礼

これらの植物は、気候変動(干ばつと砂漠化)と伐採によって漸次減っているとされます。

自然遺産の基準の中に、薬用植物と聖なる動物が書かれています。自然と文化が分けられていない例です。

完全性 — 「もはや属性のすべてを含まない区域がある」

この節は、この章でもっとも厳しい書き方です。

挙げられている原因は三つの層に分かれます。

層 中身
社会経済 流出(exodus)・就学・基盤整備
人の活動 —
環境の劣化 気候変動による干ばつ・砂漠化、あるいは豪雨。人口圧

人びとは急な断崖に位置する村を離れ、平野へ移っている。 いくつかの無形の文化的慣行は、他の移入された価値体系(宗教、文化観光……)との接触に結びついた変異を受けている。 したがって、このきわめて広大な資産の完全性は脅かされており、いくつかの区域はもはや顕著な普遍的価値の属性のすべてを含まない。

「完全性が脅かされている」と断定されています。

4章では、紅河ハニ族棚田群が「脅威を受けていない」としつつ弱点を並べ、リオが「どの要素も脅威にない」としつつ損なわれているものを挙げました。バンディアガラは「脅かされている」と書き切っています。

真正性 — 「脆い」と書かれている

ドゴンの社会的・文化的伝統は、重要で不可逆な社会経済的変異があるにもかかわらず、サハラ以南アフリカでもっともよく保存されたものの一つとされます。村とその住民は元来の暮らし方に結びついた祖先の価値に忠実で、文化的要素(建築)の自然景観への調和した統合は真正で、際立っており、唯一無二だとされます。

とはいえ、住居と建築に結びついた伝統的な慣行は脆弱になっており、場所によっては物的な属性と顕著な普遍的価値との関係が脆い。

「もっともよく保存された」と「関係が脆い」が同じ節にあります。

誰が守っているか — 管理計画の期限が切れ、登録の見直しが要る

法と機関

国の遺産 1989年12月28日の政令第89-428 P-RM 号により自然かつ文化のサンクチュアリとして登録
ほかに適用 森林利用を規制する法(1968年2月の第68-8/AN-RN 号)、狩猟に関する令(1969年11月11日の第60/CMLN 号)
責任 マリ文化省が全体の責任機関で、管理をバンディアガラ文化ミッションに委任
計画 文化ミッションが管理保全計画(2006-2010)を作成

計画の期間は2006年から2010年です。計画は統合的な保全計画に関わる活動の実施を求め、遺産の価値の担い手である共同体の生活条件の改善を強調しています。

暮らしを支えないと価値が保てない

ドゴン人の地は生きている資産だが脆弱であり、いくつかの重要な価値は、地域共同体の福利を考慮することによってのみ保全されうる。

それは的を絞った開発と基盤整備の事業に翻訳される、とされます——例として高所に位置する遺跡への給水と遺産資源の経済的な価値づけが挙げられています。

「保存」と「給水」が同じ文に並びます。メイマンド(1423)の「村を博物館に変えない」と同じ論点です。

登録そのものの見直しが課題に挙がっている

もう一つの懸念は、この資産の登録を見直す必要である。境界のいかなる見直しも、真正性と完全性の面での資産の一部の脆弱性を反映すべきである。

「登録の見直しが必要」と一次資料に書かれている例は珍しいものです。ケルソネソス(1411)は拡大が望ましいでしたが、バンディアガラは脆弱な部分を反映した見直し——縮小もありうる書き方です。

2級で押さえること

複合遺産で基準は(v)(vii)。基準(vii)(自然の美)の中に、断崖だけに生える固有植物Acridocarpus monodii、ドゴンの治療者が使う薬用植物、淡いキツネ・ジャッカル・ワニを結ぶ聖なる儀礼が書かれている——自然と文化が分けられていない。「守りにくい場所だったから文化が残った」(15世紀以来の自然の避難所)。完全性は「脅かされている」と断定され、「いくつかの区域はもはや属性のすべてを含まない」と書かれている。真正性も「もっともよく保存された」と「関係が脆い」が同じ節に並ぶ。管理計画は2006-2010で期限が切れている。「登録の見直しが必要」と課題に挙がり、境界の見直しは脆弱性を反映すべきとされる(縮小もありうる書き方)。400,000 ha・289の村。

オリジナル確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:バンディアガラの断崖の登録基準(vii)(自然の美)に書かれている内容に含まれるものは?

  1. 台地・断崖・平野という地形の多様性のみ
  2. 断崖だけに生育する固有植物とドゴンの治療者が使う薬用植物、淡いキツネ・ジャッカル・ワニを結ぶ聖なる儀礼
  3. テレム人が住んだとされる洞窟の分布
  4. 289の村が三つの自然地域に散っているという集落の配置と、それが生み出す景観の美しさで、植物と動物は基準(v)の側に入る
正解と解説を開く

正解:2.断崖だけに生育する固有植物とドゴンの治療者が使う薬用植物、淡いキツネ・ジャッカル・ワニを結ぶ聖なる儀礼

基準(vii)には、地形の多様性と自然の記念物(洞窟・二次砂丘・岩陰)のほか、生育域が断崖に限られる固有植物 Acridocarpus monodii、ドゴンの治療者と呪医が使う特定の薬用植物、そして淡いキツネ・ジャッカル・ワニを精神的に結びつける聖なる儀礼が書かれています。自然遺産の基準の中に薬用植物と聖なる動物が入っており、自然と文化が分けられていません。

確認2:バンディアガラの断崖の完全性について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 完全性は保たれており、脅威は将来のものとして予想されている
  2. 完全性の節が置かれていない
  3. 完全性は保たれているが、289の村のうち一部で属性の記録が追いついておらず、台地と断崖の調査が残っているとされている
  4. 完全性は脅かされており、いくつかの区域はもはや顕著な普遍的価値の属性のすべてを含まないとされている
正解と解説を開く

正解:4.完全性は脅かされており、いくつかの区域はもはや顕著な普遍的価値の属性のすべてを含まないとされている

> したがって、このきわめて広大な資産の完全性は脅かされており、いくつかの区域はもはや顕著な普遍的価値の属性のすべてを含まない。原因は社会経済(流出・就学・基盤整備)、人の活動、環境の劣化(干ばつ・砂漠化・豪雨・人口圧)です。人びとは急な断崖の村を離れて平野へ移っています。4章の紅河やリオは「脅威にない」としつつ弱点を並べましたが、バンディアガラは「脅かされている」と書き切っています。

確認3:バンディアガラの断崖の保護管理で、課題として挙げられているものは?

  1. 管理を文化省から文化ミッションへ委任する必要がある
  2. 国の遺産としての登録がまだ行われていない
  3. 資産の登録を見直す必要があり、境界の見直しは真正性と完全性の面での一部の脆弱性を反映すべきだとされている
  4. 管理保全計画が作られておらず、まず計画の策定から始める必要があるとされており、管理の委任先も決まっていない
正解と解説を開く

正解:3.資産の登録を見直す必要があり、境界の見直しは真正性と完全性の面での一部の脆弱性を反映すべきだとされている

> もう一つの懸念は、この資産の登録を見直す必要である。境界のいかなる見直しも、真正性と完全性の面での資産の一部の脆弱性を反映すべきである。「登録の見直しが必要」と一次資料に書かれている例は珍しいものです。ケルソネソス1411 は拡大が望ましいでしたが、バンディアガラは脆弱な部分を反映した見直しで、縮小もありうる書き方です。管理は既に文化省からバンディアガラ文化ミッションへ委任され、管理保全計画(2006-2010)も作られています(期限は切れています)。

確認4:バンディアガラの断崖で、価値の保全について UNESCO が書いていることは?

  1. いくつかの重要な価値は、地域共同体の福利を考慮することによってのみ保全されうるとされ、高所への給水などが例に挙げられている
  2. 住民を平野へ移して断崖の村を無人のまま保存すべきだとされている
  3. 文化観光の拡大が保全の主たる手段とされている
  4. 伝統的な宗教の慣行を記録に残すことが保全の中心であり、暮らしの条件は保全の範囲外とされているため、給水の事業は計画に入っていない
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正解:1.いくつかの重要な価値は、地域共同体の福利を考慮することによってのみ保全されうるとされ、高所への給水などが例に挙げられている

> ドゴン人の地は生きている資産だが脆弱であり、いくつかの重要な価値は、地域共同体の福利を考慮することによってのみ保全されうる。それは的を絞った開発と基盤整備の事業に翻訳されるとされ、高所に位置する遺跡への給水と遺産資源の経済的な価値づけが例に挙げられています。「保存」と「給水」が同じ文に並びます。メイマンド1423 の「村を博物館に変えない」と同じ論点です。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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