パレスチナ:オリーヴとワインの土地 — 南エルサレムの文化的景観、バッティール

登録年
2014年
所在国
パレスチナ
登録区分
文化遺産
地域
アジア
登録基準
(iv) (v)

どこにあり、何が登録されたのか

エルサレムの南西数キロ、ナブルスとヘブロンの間の中央高地。バッティールの丘の景観は、ワーディアーン(widian)と呼ばれる一連の耕作された谷からなります。特徴的な石の段々畑があり、一部は市場向けの野菜作りのために灌漑され、一部は乾いたままブドウとオリーヴが植えられています。

急峻な山地で段々畑の農業が成り立つのは、地下の水源に養われた灌漑水路の網があるからです。

水の分け方が価値の中心にある

UNESCO は、バッティールの家族たちが使う水の分配の仕組みを古代の平等な分配体系の証と書いています。

単純な数学的計算と、明確に時間で管理された輪番の仕組みに基づいて、段々畑の農地へ水を届ける。

「水路がある」ではなく「どう分けるか」が価値です。

基準(iv)は空石積みの建築に対して、基準(v)は立地と泉の存在が人を住まわせ、急な景観を耕地に変えたことに対して認められています。基準(iv)の記述には、バッティール村が土地を耕してきて、いまも耕している農民によって住まわれ、この仕組みの持続性と、少なくとも千年にわたる継続を証しているとあります。

登録の範囲 — 登録と同時に危機遺産

本体 348.83 ha
緩衝地帯 623.88 ha
構成 連続資産(serial)
登録 2014年
危機遺産 2014年から現在まで

登録された年から危機遺産です。この章のほかの14件には、危機遺産のものはありません。

緩衝地帯(623.88 ha)は本体(348.83 ha)の約1.79倍。この章では紅河(約1.8倍)・景邁山(約1.66倍)・ラヴォー(約1.57倍)と同じく、緩衝地帯のほうが広い型です。

完全性 — 家族たちが保証している

完全性について挙げられている構成要素は次のとおりです。

古い段々畑
考古遺跡
岩を掘った墓
農業用の塔
そしてもっとも重要なのが、無傷の水の体系(集水池・水路など)

その水の体系の完全性を保証しているのは誰か。

この伝統的な水の体系の完全性は、それに依存しているバッティールの家族たちによって保証されている。

法や機関ではなく、使っている人びとが完全性の担保です。使われなくなれば保証も消えます。生きている慣行に完全性が乗っている例です。

真正性 — 節が、将来の工事への警告になっている

この節の書き方は、この章のどれとも違います。

灌漑の体系と耕作は、時を経てもほとんど変わっていない。文化的景観の真正性は高い水準にある。 これは分離壁の建設によって激しく損なわれるだろう。壁の両側の管理道路のために、景観と段々畑の体系の大部分が、視覚的にも物理的にも破壊されることになるため。

真正性の節が、まだ起きていない工事への警告として書かれています。

ほかの遺産の真正性の節は、いまの状態の判定(紅河は「材料が弱点」、湖水地方は「13の谷への分布で価値が伝わる」)でした。バッティールは「高い水準にある。しかしこれが行われれば壊れる」という形です。

2014年の登録と同時に危機遺産になったことと、この真正性の節は同じことを言っています。

誰が守っているか

文化的景観はパレスチナの法によってよく保護されているとされ、そのなかに「パレスチナにおける文化遺産の保存のための国家憲章」が挙げられています。この憲章はUNESCO と ICCROM の寄与を得て起草されたものです。

仕組み 状態
パレスチナの法/国家憲章 保護している
管理計画 村議会が最終化を進めている(登録時点で未完成)
段々畑・小径・灌漑体系の保全 措置が取られている
エコミュージアム 持続的な管理と保護の仕組みを確かにするため創設された

これらの取り組みは主要な関係者と地域共同体との完全な連携のもとで行われたと書かれています。

管理計画が登録時点で未完成なのは、紅河ハニ族棚田群と同じです。紅河は「法的承認のあとに受け入れられる」、バッティールは「村議会が最終化を進めている」。登録は管理計画の完成を待たないことがあります。

2級で押さえること

水路があることではなく、どう分けるかが価値——単純な数学的計算と時間で管理された輪番による古代の平等な分配体系。完全性を保証しているのは、それに依存しているバッティールの家族たち。真正性の節が、分離壁という将来の工事への警告になっている(この章のどれとも違う書き方)。2014年の登録と同時に危機遺産で、この章で唯一。管理計画は登録時点で村議会が最終化中(紅河と同じく未完成)。

オリジナル確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:バッティールの文化的景観で、UNESCO が「古代の平等な分配体系の証」と書いているものは?

  1. 段々畑の面積を家族の人数で割る土地の分配
  2. 収穫したオリーヴとブドウを村で均等に分ける仕組み
  3. 単純な数学的計算と、時間で管理された輪番の仕組みに基づく水の分配
  4. 灌漑水路の維持の労役を家族ごとに割り当てる仕組みで、負担の量が耕地の面積に比例して決まっている
正解と解説を開く

正解:3.単純な数学的計算と、時間で管理された輪番の仕組みに基づく水の分配

UNESCO は、村で使われている水の分配の仕組みを古代の平等な分配体系の証と書いています。単純な数学的計算と、明確に時間で管理された輪番の仕組みに基づいて段々畑の農地へ水を届ける、という書き方です。「水路がある」ではなく「どう分けるか」が価値です。土地・収穫・労役の分配についての記述はありません。

確認2:バッティールの完全性について、無傷の水の体系の完全性を「保証している」とされているのは?

  1. それに依存しているバッティールの家族たち
  2. パレスチナ自治政府の文化遺産当局
  3. UNESCO と ICCROM
  4. 村議会が最終化を進めている管理計画と、創設されたエコミュージアム
正解と解説を開く

正解:1.それに依存しているバッティールの家族たち

UNESCO は、この伝統的な水の体系の完全性は、それに依存しているバッティールの家族たちによって保証されていると書いています。法や機関ではなく、使っている人びとが完全性の担保です。使われなくなれば保証も消えます。生きている慣行に完全性が乗っている例です。

確認3:バッティールの真正性の節が、この章のほかの遺産と違う点は?

  1. 真正性の節が無い
  2. 真正性が既に失われたと判定されている
  3. 真正性の判定を保留し、管理計画が最終化されたあとに改めて評価すると書かれている。危機遺産の記載もその判定を待っており、段々畑の体系の扱いは保留のままである
  4. 真正性は高い水準にあるとしたうえで、分離壁の建設によって激しく損なわれるだろうと、まだ起きていない工事への警告になっている
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正解:4.真正性は高い水準にあるとしたうえで、分離壁の建設によって激しく損なわれるだろうと、まだ起きていない工事への警告になっている

節は「文化的景観の真正性は高い水準にある」としたうえで、「これは分離壁の建設によって激しく損なわれるだろう」と続きます。壁の両側の管理道路のために、景観と段々畑の体系の大部分が視覚的にも物理的にも破壊されるため、という理由です。真正性の節が、まだ起きていない工事への警告として書かれています。この資産は2014年の登録と同時に危機遺産になっています。

確認4:バッティールと紅河ハニ族棚田群に共通する、管理計画の状態は?

  1. どちらも登録の前に管理計画が法的に承認されていた
  2. どちらも登録の時点で管理計画が完成していなかった
  3. どちらも管理計画を作らない方針を採っている
  4. どちらも登録の時点で管理計画は完成していたが、観光の戦略だけが未着手のまま残っていた
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正解:2.どちらも登録の時点で管理計画が完成していなかった

バッティールの管理計画は村議会が最終化を進めている(登録時点で未完成)、紅河の管理計画は法的承認のあとに法的・技術的文書として受け入れられるという書き方(登録時点で未承認)です。登録は管理計画の完成を待たないことがあります。バッティールではエコミュージアムが持続的な管理と保護の仕組みを確かにするために創設されています。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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