キレーネの考古遺跡

列柱の立つ神殿の跡と、崩れた石材
john copland / Adobe Stock(通常ライセンス) / 出典 / 加工: 長辺1800pxへ縮小し WebP へ変換(切り取りなし)
登録年
1982年
所在国
リビア
登録区分
文化遺産
地域
アフリカ
登録基準
(ii) (iii) (vi)

顕著な普遍的価値の節が、丸ごと無い

リビア、ゲベル・アフダル地区。

本体 131.675 ha
緩衝地帯 一覧に行が無い
登録 1982年、基準 (ii)(iii)(vi)
dossier 190
連続性資産 一覧に `Serial` の行が無い
危機遺産リスト `2016 – Present`

この資産には、顕著な普遍的価値の節が無い

ページには説明文があり、そのあとは一覧とお知らせです。`Outstanding Universal Value` の見出しそのものがありません。概要も、完全性も、真正性も、保護管理の節もありません。

2026-10-28 に組み込みブラウザでページを読み、`Outstanding Universal Value` の語を探しても、ページ下部の一般の説明文(「世界遺産の遺跡が顕著な普遍的価値を維持することを確かにすることは……」)しか見つかりませんでした。節が隠れているのではなく、無いと判断しました。

遺産 節の有り方 登録
キレーネ190 顕著な普遍的価値の節が丸ごと無い(説明文だけ) 1982年
トンガリロ421(4章) 顕著な普遍的価値の節が丸ごと無い(説明文と `Notes` だけ) 1990年
シギショアラ902(7章) 「Justification for Inscription(登録の正当化)」という古い見出しと基準だけ 1999年
ロイ・マタ1280(6章) 三つとも見出しが無く、しかも誤植がある 2008年

顕著な普遍的価値の言明を登録時に採択する運用はあとから始まったので、古い登録には遡って作られていないものがあります。キレーネ190 は1982年の登録で、これまで読んだ203件のなかで節が丸ごと無い二つ目です。

節が無いものを、節があるかのように書きません。この記事が短いのは、一次資料がこれしか書いていないからです。書かれていないことを、ほかの知識で埋めません。

説明文が書いていること — 四つの文だけ

説明文の全体

テラのギリシャ人の植民地であったキレーネは、ヘレニズム世界における主要な都市のひとつであった。それはローマ化され、365年の地震まで偉大な首都のままであった。千年の歴史がその遺構に書き込まれており、それらは18世紀以来名高い。

これが、この資産について一次資料に書かれているすべてです。四つの文から取れることを並べます。

書かれていること 中身
誰が作ったか テラ(ティーラ)のギリシャ人の植民地
どんな地位か ヘレニズム世界における主要な都市のひとつ
その後 ローマ化された
いつまでか 365年の地震まで偉大な首都のまま
どれだけの幅か 千年の歴史
いつから知られているか 18世紀以来名高い

書かれていないこと。

  • 建物の名前が一つもありません。神殿、劇場、競技場、ネクロポリスのいずれも書かれていません。
  • 植民の年が書かれていません。「テラのギリシャ人の植民地」までです。
  • 「千年の歴史」の始まりと終わりの年が書かれていません。365年の地震は「偉大な首都のまま」の終わりとして書かれるだけです。
  • 基準(ii)(iii)(vi)のそれぞれの理由が書かれていません。基準の番号だけが一覧にあります。
  • 完全性も真正性も、保護の法令も、管理の体制も書かれていません。

「18世紀以来名高い」は、遺跡が知られるようになった時期です。誰によって、どのように知られたかは書かれていません。

一覧と危機遺産リスト — リビアの五つが同じ日に載った

危機遺産リスト

`2016 – Present`。保存状況報告は19年分(2004・2006・2007・2009・2010・2011・2012・2013・2014・2015・2016・2017・2018・2019・2021・2023・2024・2025・2026年)です。危機遺産リストに載る12年前から報告が始まっています。

お知らせが語ること

年月日 お知らせ
2016年7月14日 「リビアの五つの世界遺産の遺跡が危機遺産リストに載せられた」
2016年5月13日 「鍵となるリビアと国際の協力者がリビアの遺産のための行動計画を採択するために団結した」
2014年11月18日 「UNESCO 事務局長がすべての当事者にリビアの唯一無二の文化遺産を保護するよう呼びかけた」
2016年7月17日 「ポーランドの都市クラクフが2017年の世界遺産委員会の会期を主催する」

一つの国の五つの資産が、同じ日に危機遺産リストに載りました。資産ごとの事情ではなく、国の状況によってまとめて載った例です。顕著な普遍的価値の節が無いので、載った理由はこの資産のページの本文からは読めません。

催事に「危機遺産リストに載るリビアの資産のためのオンラインの技術の会合」(2020年11月25日)があります。これも資産ごとではなく、まとめて扱われています。

一覧の下部

記載 中身
本体 131.675 ha(小数第3位まで)
緩衝地帯 行が無い
`Serial` 行が無い
保存状況報告 19年分(2004-2026年のうち)
GIS のデータ 未受領
ほかの保全の仕組み 記載なし
タブ `Assistance` は無い

本体が小数第3位まで書かれる資産です。これまで読んだ200件でこれより細かい桁はありませんが、同じ小数第3位はほかにもあります——アーヘン3(0.223 ha)・ヴィエリチカ32(1,104.947 ha)・ブリッゲン59(1.268 ha)・ロロペニ1225(1.113 ha)ほか。「ここだけ」ではありません。緩衝地帯の行が無い理由は、本文が無いので分かりません。

危機遺産リストに載っていて、しかも `Assistance`(国際援助)のタブが無い資産です。10章までで `Assistance` のタブは十になりましたが、「危機遺産リストに載っているから `Assistance` がある」とは読めません。

2級で押さえること

基準(ii)(iii)(vi)、リビア・ゲベル・アフダル地区、本体131.675 ha(小数第3位まで)、緩衝地帯と `Serial` の行は無い、1982年登録、危機遺産リスト `2016 – Present`(保存状況報告19年分)。この資産には顕著な普遍的価値の節が丸ごと無い。概要も完全性も真正性も保護管理の節もなく、説明文だけ。203件で節が丸ごと無いのはトンガリロ421(4章)に続いて二つ目(顕著な普遍的価値の言明を登録時に採択する運用はあとから始まったため)。説明文の全体は四つの文——「テラのギリシャ人の植民地であったキレーネは、ヘレニズム世界における主要な都市のひとつであった。それはローマ化され、365年の地震まで偉大な首都のままであった。千年の歴史がその遺構に書き込まれており、それらは18世紀以来名高い。」建物の名前は一つも書かれず、植民の年も、「千年の歴史」の始まりと終わりの年も、基準(ii)(iii)(vi)のそれぞれの理由も書かれていない。「18世紀以来名高い」は遺跡が知られるようになった時期で、誰によってどのように知られたかは書かれていない。お知らせに2016年7月14日の「リビアの五つの世界遺産の遺跡が危機遺産リストに載せられた」があり、一つの国の五つの資産が同じ日に載った。資産ごとの事情ではなく国の状況によってまとめて載った例で、載った理由はこの資産のページの本文からは読めない。危機遺産リストに載っているが `Assistance` のタブは無い——「載っているから `Assistance` がある」とは読めない。GIS のデータは未受領、ほかの保全の仕組みの記載なし。節が無いものを節があるかのように書かず、書かれていないことをほかの知識で埋めない。

オリジナル確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:キレーネ190 の顕著な普遍的価値の節について、正しいのは?

  1. 概要だけがあり、完全性と真正性の節が無い
  2. 四つの節がすべてそろっている
  3. 節そのものが丸ごと無く、概要も完全性も真正性も保護管理の節もない
  4. 完全性と真正性が一つの節になっており、概要と保護管理の節は別にある
正解と解説を開く

正解:3.節そのものが丸ごと無く、概要も完全性も真正性も保護管理の節もない

ページには説明文があり、そのあとは一覧とお知らせです。`Outstanding Universal Value` の見出しそのものがありません。203件で節が丸ごと無いのは、トンガリロ421(4章)に続いて二つ目です。顕著な普遍的価値の言明を登録時に採択する運用はあとから始まったので、古い登録(キレーネは1982年)には遡って作られていないものがあります。節が無いものを、節があるかのように書きません。

確認2:キレーネ190 の説明文が書いている、都市が偉大な首都のままであった終わりは?

  1. 紀元前365年の地震まで
  2. 7世紀のイスラムの征服まで
  3. 365年の地震までだが、その後も18世紀まで都市として続いたと書かれている
  4. 365年の地震まで
正解と解説を開く

正解:4.365年の地震まで

> それはローマ化され、365年の地震まで偉大な首都のままであった。紀元前ではなく365年です。「18世紀以来名高い」は、遺跡が知られるようになった時期で、都市が続いた時期ではありません。イスラムの征服についての記述はありません。書かれていないことを、ほかの知識で埋めません。

確認3:キレーネ190 が危機遺産リストに載ったことについて、ページから読めるのは?

  1. お知らせに2016年7月14日の「リビアの五つの世界遺産の遺跡が危機遺産リストに載せられた」があり、一つの国の五つの資産が同じ日に載った
  2. 顕著な普遍的価値の節に、載った理由が詳しく書かれている
  3. キレーネだけが単独で載ったとお知らせに書かれている
  4. お知らせに「リビアの五つの世界遺産の遺跡が危機遺産リストに載せられた」があり、同時に `Assistance`(国際援助)のタブも設けられている
正解と解説を開く

正解:1.お知らせに2016年7月14日の「リビアの五つの世界遺産の遺跡が危機遺産リストに載せられた」があり、一つの国の五つの資産が同じ日に載った

お知らせは2016年7月14日の「リビアの五つの世界遺産の遺跡が危機遺産リストに載せられた」です。資産ごとの事情ではなく、国の状況によってまとめて載った例です。顕著な普遍的価値の節が無いので、載った理由はこの資産のページの本文からは読めません。なお`Assistance` のタブはありません。「危機遺産リストに載っているから `Assistance` がある」とは読めません。

確認4:キレーネ190 の一覧の面積の記載は?

  1. 本体131.675 ha と緩衝地帯263.35 ha が書かれている
  2. 本体131.675 ha と小数第3位まで書かれ、緩衝地帯の行は無い
  3. 本体も緩衝地帯も行が無い
  4. 本体131.675 ha と小数第3位まで書かれ、緩衝地帯の行は無いが、完全性の節が緩衝地帯の設定を勧告している
正解と解説を開く

正解:2.本体131.675 ha と小数第3位まで書かれ、緩衝地帯の行は無い

本体131.675 ha で、小数第3位まで書かれます。これまで読んだ200件でこれより細かい桁はありませんが、同じ小数第3位はほかにもあります(アーヘン3・ヴィエリチカ32・ブリッゲン59・ロロペニ1225 ほか)。緩衝地帯の行はありません。緩衝地帯の行が無い理由は、本文そのものが無いので分かりません。11章のサナア385 は完全性の節が緩衝地帯の設定の勧告を引いていましたが、キレーネには節がありません。

参考資料

確認日:2026年10月28日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。