ヨーロッパの大温泉都市群

登録年
2021年
所在国
オーストリア/ベルギー/チェコ/フランス/ドイツ/イタリア/イギリス
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(ii) (iii)

どこにあり、何が登録されたのか — 7か国11都市

7つのヨーロッパの国にある11の温泉町。

本体 7,018 ha
緩衝地帯 11,449 ha(本体の約1.63倍)
登録 2021年、基準 (ii)(iii)
軽微な範囲変更 2024年
dossier 1613bis
連続性資産 はい(Serial: yes)
国 都市
オーストリア バーデン・バイ・ウィーン
ベルギー スパ
チェコ カルロヴィ・ヴァリ/フランティシュコヴィ・ラーズニェ/マリアーンスケー・ラーズニェ(3都市)
フランス ヴィシー
ドイツ バート・エムス/バーデン・バーデン/バート・キッシンゲン(3都市)
イタリア モンテカティーニ・テルメ
イギリス バース市

国名の由来になった都市(ベルギーの「スパ」)が構成要素に入っています。

「何百もの中から選ばれた」

この連続は、ヨーロッパの温泉現象に寄与した何百もの温泉町のなかで、もっとも流行し、動的で、国際的な温泉町を捉えている。

24章で見た「これが全部ではない」の書き方と同じ系統です。

遺産 全体に対する部分
ヨーロッパの大温泉都市群1613 何百もの温泉町のなかから11
ペルシアの隊商宿1668 多数の隊商宿のうち54
ロロペニ1225 約100の石造の囲いのうち1
アルマデンとイドリア1313 水銀を実質的な量で長期に産出した少数の鉱山のうち最大の二つ

時期

ヨーロッパの温泉現象は、古代にその根を持つが、約1700年から1930年代までにその最高の表現を得た。

温泉町の建物と、「見て、見られる」こと

それぞれの温泉町は異なるが、すべての町が鉱泉の源の周りに発展した。それが、治療・療法・娯楽・社交の機能に捧げられた空間組織の模型の触媒であった。

温泉の建物

建物
浴場
クアハウス(kurhaus)/クアザール(kursaal) 療法に捧げられた建物と部屋
ポンプ室
飲泉ホール(trinkhalle)
列柱廊とギャラリー 天然の鉱泉の資源を利用し、入浴と飲用のための実際の使用を可能にするよう設計された

関連する施設とインフラ

『治療を受ける(taking the cure)』ことは、外的にも内的にも、運動と社交の活動によって補われた。それが集会室、カジノ、劇場、ホテル、ヴィラ、そして関連するインフラ(水の配管の体系と塩の生産から、鉄道とケーブルカーまで)といった来訪者の施設を必要とした。

インフラに「塩の生産」と「ケーブルカー」が入っています。

すべてが、公園、庭園、遊歩道、運動施設、森林からなる、注意深く管理された娯楽と療法の環境を含む全体の都市の文脈に統合されている。 建物と空間は、周囲の景観と視覚的・物理的につながっており、その景観は、治療の療法への寄与としての運動のために、また休息と享楽のために、定期的に使われる。

基準(ii) — 伝達の担い手に庭師が入る

約1700年から1930年代まで、医学、鉱泉療法学(balneology)、余暇の活動の発展に影響した革新的な思想の重要な交換を示している。

大温泉は実験の中心となり、来訪者の変わる好み、感性、要求に適応することで競争相手に遅れずについていった。医師のほか、伝達の主たる担い手は、温泉の生活を枠づける建造された環境と『自然の』環境を創った建築家、デザイナー、庭師であった。

「庭師」が伝達の担い手に挙げられています。

基準(iii) — 「見て、見られる」

『治療を受ける』こと——外的に(入浴によって)、または内的に(飲用と吸入によって)——は、きわめて構造化され時間を定めた日々の規則と、医学の側面と余暇の組み合わせを伴った。それには娯楽と社交の活動(たとえば賭け、劇、音楽、踊り)、そして屋外の療法的な温泉景観の中での運動が含まれた。

これらの媒介変数が、温泉町の空間の配置と、温泉の建物すなわち「温泉建築」の形と機能に直接に影響した。都市の公園と遊歩道が、治療を受ける人びとが互いに「見て、見られる」ことを可能にした。

「見て、見られる」が基準の文に書かれています。

完全性と真正性 — 緩衝地帯の目的が二つ

完全性 — どれもいまも機能している

すべての構成部分が、その歴史と発展のもっとも意義ある「文化を創る」段階、約1700年から1930年代までの盛期の時代に形づくられた一組の決定的な特徴を共有している。そのどれもが、もともと開発された目的のために機能し続けている。

「どれもいまも機能し続けている」と書かれています。

連続は温泉現象の発展の主要な段階を例証している——18世紀のもっとも影響力ある温泉町から始まり、19世紀の模範的な温泉町の発展、そして20世紀初頭の現象の最後の段階を証する町まで。

時代の順に段階が並ぶように選ばれています。

緩衝地帯の目的が二つ書かれている

緩衝地帯は、泉の集水域の保護と重要な環境の両方のために引かれている。

緩衝地帯の目的が二つ明記される資産は、これまで読んだ94件でここだけです。

泉の水が地下から来るので、地表の環境だけでは足りないという理屈です。

更新と保全の緊張

サービス、衛生、新しい温泉技術の基準に歩調を合わせるために行われる更新と再開発は、歴史的建造物としてのその保全との緊張を生みうるので、注意深く扱う必要がある。産業の構造の適応的な再利用と技術の更新における課題も、同様の課題をもたらす。

真正性 — 五つの属性

資産は、形と設計、材料と実体、用途と機能、伝統、立地と環境の点で真正性の条件を満たしている。

真正性の根拠
大きな多様性を持つ鉱泉——実体、立地、環境を含む自然の物理的な性質を維持している
際立って読み取りやすい空間の配置と、よく維持された立地と環境——合わさって持続する精神と感覚を保つ
温泉建築——一部の建物が用途の変化を経てきたにもかかわらず、形と設計、元の材料と実体において真正なまま残っている
温泉の療法的な景観——形、設計、機能を保ち、設計された目的のために使われ続けている
温泉のインフラ——その多くが元のものか、元の原則に沿って進化したもので、いまも使われている
今日の基準を満たす必要にもかかわらず続いている温泉の使用と機能

約1700年から1930年代までに遡る構造に体現された属性の真実性と信頼できる表現は、それぞれの構成部分で保たれている計画・文書・出版物・写真の広大な記録の集積によって裏づけられた、実質的で持続的な保全の工事のあいだにさらに証拠が示されている。

誰が守っているか — 11市長の理事会

それぞれの国が守る

11の構成部分のそれぞれの保護と管理の責任は、国/地域の政府にある(ドイツの場合は州(Länder)の政府と、その締約国の地方当局に)。 それぞれの構成部分は、その締約国または個別の州で適用される法令と空間計画の規則を通じて、また鍵となる建物と景観の公的/慈善の所有の著しい程度によって保護されている。

それぞれの構成部分が、資産管理者または調整者と、全体の資産管理計画に適合する在地の管理計画を持っている。

個別の管理計画が全体の計画に適合する形です。

この章では、個別の管理計画の扱いが三通りに分かれます。

遺産 個別の管理計画
ヨーロッパの大温泉都市群1613 それぞれが在地の管理計画を持ち、全体の資産管理計画に適合する
カルパティアの木造教会群1424 個別の管理計画の代わりに、運営委員会がすべての事項を監督する
インドの山岳鉄道群944 三つのうち二つに資産管理計画があり、最初に登録されたダージリン鉄道にはいまも承認された保全管理計画が無い

四つの層の体制

体制 構成と役割
政府間委員会 国の世界遺産フォーカルポイントおよび/または最高の記念物または遺産保護当局の代表からなり、資産に関わる事項を把握する
大温泉管理理事会(GSMB) 11の構成部分の市長からなる。運用の調整と資産全体の管理に責任を持ち、全体の管理機能の予算を定め管理し、行動計画を監視・見直し、年次報告を承認・公表し、事務局を雇用する
遺跡管理者グループ それぞれの構成部分の遺跡管理者、事務局、そして専門の助言者を含む。討論と経験の交換のための専門家グループで、GSMB に管理の問題について助言する
事務局 すべての構成部分が共同で資金を出して支えられ、業務を提供される

「11の構成部分の市長からなる理事会」は、これまで読んだなかで珍しい形です。

24章の真珠採取1364 の運営委員会は12の政府機関を閣僚級で集め、文化大臣が議長でした。大温泉都市群は市長です。

残っている課題

重要な懸念は、個々の構成部分のあいだの協力と協働を発展させ続けること、そして資産全体が実効的に管理され、全体の管理体系が十分に資源を与えられることを確かにすることである。 開発圧力が問題になりうる。これらは生きた都市であり、温泉町としての役割を保つために適応し変化し続ける必要があるからである。 観光が真に持続可能であるよう管理することも課題になりうる。 景観の水準での管理の取り組みも必要である——それぞれの構成部分、緩衝地帯、より広い環境の関係を考慮して、絵のように美しいより広い景観への、またそこからの眺望を保つために。

レーン生物圏保存地域とウィーンの森生物圏保存地域(2件)が記録されています。

2級で押さえること

基準(ii)(iii)、7か国11都市の越境連続性資産、本体7,018 ha・緩衝11,449 ha、2021年登録、2024年に軽微な範囲変更(dossier は 1613bis)。11都市はバーデン・バイ・ウィーン(オーストリア)/スパ(ベルギー)/カルロヴィ・ヴァリ、フランティシュコヴィ・ラーズニェ、マリアーンスケー・ラーズニェ(チェコ)/ヴィシー(フランス)/バート・エムス、バーデン・バーデン、バート・キッシンゲン(ドイツ)/モンテカティーニ・テルメ(イタリア)/バース市(イギリス)。国名の由来になったベルギーの「スパ」が構成要素に入っている。何百もの温泉町のなかから、もっとも流行し動的で国際的な町を捉えた連続。約1700年から1930年代までが最高の表現の時期。建物は浴場・クアハウス・クアザール・ポンプ室・飲泉ホール・列柱廊で、インフラに塩の生産とケーブルカーまで入る。基準(ii)は伝達の主たる担い手に建築家・デザイナー・庭師を挙げる。基準(iii)は「都市の公園と遊歩道が、治療を受ける人びとが互いに『見て、見られる』ことを可能にした」。構成部分のどれもが、もともと開発された目的のために機能し続けている。連続は、18世紀のもっとも影響力ある町から、19世紀の模範的な町、20世紀初頭の最後の段階まで、発展の主要な段階を例証する。緩衝地帯は、泉の集水域の保護と重要な環境の両方のために引かれている(目的が二つ明記される唯一の例)。それぞれの構成部分が在地の管理計画を持ち、全体の資産管理計画に適合する。大温泉管理理事会(GSMB)は11の構成部分の市長からなり、予算を定め、行動計画を監視し、年次報告を承認し、事務局を雇用する。事務局はすべての構成部分が共同で資金を出す。

オリジナル確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:ヨーロッパの大温泉都市群の構成について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 11のヨーロッパの国にある11の温泉町
  2. 7つのヨーロッパの国にある11の温泉町で、チェコとドイツがそれぞれ3都市
  3. 7つの国にある7の温泉町
  4. 7つのヨーロッパの国にある11の温泉町で、チェコとドイツがそれぞれ3都市、イタリアが2都市
正解と解説を開く

正解:2.7つのヨーロッパの国にある11の温泉町で、チェコとドイツがそれぞれ3都市

7か国11都市で、チェコ(カルロヴィ・ヴァリ、フランティシュコヴィ・ラーズニェ、マリアーンスケー・ラーズニェ)とドイツ(バート・エムス、バーデン・バーデン、バート・キッシンゲン)がそれぞれ3都市です。イタリアはモンテカティーニ・テルメの1都市です。ほかはオーストリア(バーデン・バイ・ウィーン)、ベルギー(スパ)、フランス(ヴィシー)、イギリス(バース市)が各1都市。

確認2:ヨーロッパの大温泉都市群の基準(iii)に書かれている、都市の公園と遊歩道の役割は?

  1. 鉱泉の源を物理的に保護した
  2. 公園と遊歩道については書かれていない
  3. 治療を受ける人びとが互いに「見て、見られる」ことを可能にし、かつ鉱泉の源を物理的に保護した
  4. 治療を受ける人びとが互いに「見て、見られる」ことを可能にした
正解と解説を開く

正解:4.治療を受ける人びとが互いに「見て、見られる」ことを可能にした

> 都市の公園と遊歩道が、治療を受ける人びとが互いに「見て、見られる」ことを可能にした。鉱泉の保護についての記述はありません。泉の保護に関わるのは緩衝地帯のほうです。

確認3:ヨーロッパの大温泉都市群の緩衝地帯について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 泉の集水域の保護と重要な環境の両方のために引かれている
  2. 重要な環境の保護のためだけに引かれている
  3. 緩衝地帯についての記述は無い
  4. 泉の集水域の保護と重要な環境の両方のために引かれており、さらにその外側に「より広い環境」の区域も画されている
正解と解説を開く

正解:1.泉の集水域の保護と重要な環境の両方のために引かれている

> 緩衝地帯は、泉の集水域の保護と重要な環境の両方のために引かれている。緩衝地帯の目的が二つ明記される資産は、これまで読んだ94件でここだけです。「より広い環境」の区域が画されているのは24章の泉州1561 です(本体・緩衝地帯・より広い環境の三層)。

確認4:ヨーロッパの大温泉都市群の大温泉管理理事会(GSMB)の構成は?

  1. 国の世界遺産フォーカルポイントからなる
  2. それぞれの構成部分の遺跡管理者からなる
  3. 11の構成部分の市長からなる
  4. 11の構成部分の市長と、国の世界遺産フォーカルポイントの両方からなる
正解と解説を開く

正解:3.11の構成部分の市長からなる

大温泉管理理事会(GSMB)は11の構成部分の市長からなり、運用の調整と資産全体の管理に責任を持ち、予算を定め管理し、行動計画を監視・見直し、年次報告を承認・公表し、事務局を雇用します。国の世界遺産フォーカルポイントからなるのは政府間委員会、遺跡管理者からなるのは遺跡管理者グループです。

参考資料

確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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