イルリサット・アイスフィヨルド

海を埋めるように並ぶ、切り立った白い氷山。
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登録年
2004年
所在国
デンマーク
登録区分
自然遺産
地域
南北アメリカ
登録基準
(vii) (viii)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 氷の量が説明文と概要で違う

デンマーク(グリーンランド西海岸)。北極圏の北250 km。一覧の所在地は「ディスコ湾(Disko Bugt)の入江、イルリサット自治体」です。

本体 399,800 ha
緩衝地帯 64,890 ha(本体の約0.16倍)
登録 2004年、基準 (vii)(viii)=2つ
軽微な範囲変更 2019年
dossier 1149bis
保存状況報告 2年分(2007・2009年)
活動 1件——「世界遺産と北極(World Heritage and the Arctic)」
催事 1件——「専門家会合:北極地域における新しい潜在的な世界遺産海洋遺跡」(2016年2月25-26日)
訳のある言語 8つ(英・仏・アラビア・中・露・西・日・蘭)

氷の量が、説明文と概要で違う

どこ 書かれている量
説明文 「年間に35 km³ を超える氷を分離する(annually calves over 35 km3 of ice)」
概要 「年間の46立方キロメートルを超える氷の分離」
基準(viii) 「年間の46 km³ を超える氷の分離」

どちらも「グリーンランドの分離氷の生産の10%」「南極の外のいかなる氷河よりも多い」と続きます。割合は同じで、絶対量だけが違います。どちらが正しいとは書かれていないので、節と位置を添えて両方を記録します。

流れる速さ(1日40 m)は概要と基準(viii)にだけ書かれ、説明文には無い。「研究されて250年を超える」はどちらにもあります。

氷の年代と、何が読み取れるか

二つの基準

基準 何を根拠にするか
(vii) 見え方と音——「巨大な氷床と、氷山に覆われたフィヨルドへ分離する速く動く氷河の氷流の組み合わせは、グリーンランドと南極でしか見られない現象である」。「動く氷によって生み出される劇的な音」も価値に入る
(viii) 地球の歴史の段階——「第四紀の最後の氷期」。「氷河は250年のあいだ科学の注意の対象であり、その比較的な接近しやすさとともに、氷床氷河学、気候変動、関連する地形の過程の理解に意義深く加えてきた」

基準(vii)に音が入る資産は少数です。説明文も「速く動く氷河の氷流が分離する劇的な音」を書きます。

氷の年代が二つの数で書かれる

数 何の年代か
250,000年 「もっとも古い氷は250,000年前と見積もられる」
250,000年前から約11,550年前まで 「過去の気候の変化と大気の条件についての詳しい情報を与える」範囲。11,550年前に「気候がより安定になった」

「見積もられる(is estimated to be)」という留保が付いています。外しません。11,550年という十の位までの数と、250,000年という概数が同じ文のなかに並びます。桁の細かさが違う数を並べて書く資料の書き方として記録します。

グリーンランドの氷冠そのものの位置づけも書かれます。

グリーンランドの氷冠は、第四紀氷期の大陸氷床の、北半球における唯一の残存物である。

「過去250年の研究」が示したこととして、「最後の氷期のあいだ、気候は極端に寒い時期とより暖かい時期のあいだで変動した」ことが書かれ、いまは「分離と縁での融解による喪失に見合う年ごとの雪の蓄積によって氷冠が維持されている」とされます。「維持されている」と書かれているので、減っているとも増えているとも読み替えません。

集落を資産の外に出す — 人の扱いの六通り目

完全性の節が、どこを境界にしたかを書きます。

資産の境界は、自然の集水域という論理的な地形の基準との関係で明確に定められており、近隣の村イリマナクとイルリサットの集落は資産から除外されている。気候の制約と、遺跡に道路が存在しないという事実とともに、この区域の物理の特徴は高い度合いの自然の完全性を保っている。

31章で作った「人が住んでいることの扱い」の台帳に、六通り目が足されます。

遺産 扱い
イルリサット1149 除外する——村の集落を資産の境界から外し、「保護区のすべての土地は国有で、恒久の集落は許されていない」
九寨溝637(31章) 減らす(自発的な合意で徐々に)
ハ・ロン湾とカット・バ672(31章) 移転の可能性(中核区域から)
グランマ889(31章) 監視する(漁の共同体の資源利用)
レンソイス1611(30章) 権利を守る
ヘーガ・クステン898(30章) 影響が小さいと書く

「減らす」「移転させる」ではなく最初から境界の外に出す形です。境界の引き方で人の問題を扱っているので、ほかの五つとは段階が違います。

ただし、資産の中で行われていることも書かれます。

広範な狩猟と漁が資産の一部分で行われており、この区域における生物の資源の利用が持続可能であることを確かにするために、特別の狩猟法が執行され監視されている。

「住んでいない」ことと「使われていない」ことは別です。恒久の集落は許されないが、狩猟と漁は行われている。書き分けて記録します。

境界が「自然の集水域という論理的な地形の基準」で引かれたことは、30章のヘーガ・クステン898 の「地質の境界は法的または行政の境界と一致しないが、その選定の背後にある科学は正当である」と同じ軸です。

一覧に緩衝地帯があるのに、本文は「計画された緩衝地帯」と書く

保護管理の節の最後の一文です。

資産の保護は、計画された緩衝地帯が採択されたときにさらに高められるだろう(The protection of the property will be further enhanced when a planned buffer zone is adopted)。

ところが一覧には `Buffer zone: 64,890 ha` の行があります。

どこ 緩衝地帯
一覧 64,890 ha(数がある)
本文 「計画された緩衝地帯が採択されたとき」(まだ無いという書き方)

一覧は「軽微な範囲変更の登録年2019年」と dossier 1149bis も示しています。2019年の変更で緩衝地帯が入り、顕著な普遍的価値の本文が登録時(2004年)のままであるとも読めますが、一次資料はそう書いていません。「一覧に数があり、本文はこれからの話として書いている」までを記録します。31章のアペニン1692 は緩衝地帯の中の採石場を名前つきで書き、グランマ889 は「陸の緩衝地帯」と書いていました。緩衝地帯の書かれ方は資産ごとに違い、一覧と本文が食い違うこともあると覚えます。

ほかにも将来形が並ぶ

書かれ方
「増加した管理が求められるだろう」 「観光と資源の収穫からの圧力が増え続けるので」
「資産は監視の計画から利益を得るだろう」 包括的な管理計画は「発展させられてきた」と完了形
「イルリサットの町の訪問者センターが計画されている」 「標識と訪問者の基盤施設は高度化されてきた」とは段階が違う

同じ節のなかで、完了したこと(管理計画、標識)とこれからのこと(監視計画、訪問者センター、緩衝地帯)が混ざって書かれます。どれがどちらかを読み分けます。

誰が守っているか — 日付と番号の付いた二つの法

法に番号と日付が入る

法 中身
グリーンランド議会法 第29号(2003年12月18日)(自然保護について) 「種、生態系、保護区域の保護のための基礎となる枠組み」
グリーンランド自治政府令 第10号(2007年6月15日)(イルリサット・アイスフィヨルドの保護について) この資産そのもののための命令

法と命令に番号と月日の両方が書かれる資産は、この章のヨセミテ308(「1916年8月25日の組織法」)と並んで同じ章に二つ出ました。308 は日付だけ、1149 は番号と日付の両方なので、細かさが違います。

資産に接する区域は「廃棄物処理、スノーモービルの利用、建物の建設、景観保護についての国の規制」で統制されます。スノーモービルが名指しされるのは、北極の資産であることと合わせて読めます。

管理は二者の理事会

資産そのものは、環境自然省とイルリサット自治体の代表からなる理事会(a Board)によって協同で管理されている。

31章の管理の形と並べます。

遺産 管理の形
イルリサット1149 国の省と自治体の二者の理事会
九寨溝637(31章) 21の部門を持つ管理局
ハ・ロン湾とカット・バ672(31章) 三つの単位の調整
アペニン1692(31章) 世界遺産のための調整室(focal point)

観光が乗り物ごとに規制される

「とくに遺跡を訪れるクルーズ船とヘリコプターの往来から生じる圧力」に「特別の注意が払われた」と書かれ、規制の対象が乗り物ごとに並びます。

対象
船・徒歩・ヘリコプター・犬そりによる訪問の規制 犬そりが規制の対象として名指しされる
廃棄物とその処理の管理 —
建物の建設 —
区域における生物の資源の利用 —
資産の内側の文化遺産の遺跡の保護 基準は(vii)(viii)だけで文化の基準は付いていない

「混雑(クルーズ観光から)と侵食のような管理の課題は、イルリサットの町に近い小さな区域に限られている」と、どこで起きているかまで書かれます。「訪問者の接近は、道路も人の作った構造物も無い景観の原生自然の性格によって限られている」ともあり、地形そのものが訪問を制限していると読めます。

2級で押さえること

本体399,800 ha/緩衝地帯64,890 ha=本体の約0.16倍、2004年登録・軽微な範囲変更2019年、基準(vii)(viii)=2つで246件で7件目、dossier 1149bis、保存状況報告2年分(2007・2009年)、活動1件「世界遺産と北極」/催事1件(北極の海洋遺跡の専門家会合)、訳のある言語は8つ。氷の量が説明文と概要で違う——説明文「35 km³ を超える」/概要と基準(viii)「46 km³ を超える」。割合(グリーンランドの分離氷の10%)と比較(南極の外のいかなる氷河より多い)は同じで、絶対量だけが違う。どちらが正しいとは書かれていないので節を添えて両方を記録する。流れる速さ(1日40 m)は概要と基準(viii)にだけあり説明文には無い。氷の年代の桁が二通り——「もっとも古い氷は250,000年前と見積もられる」という概数と、「250,000年前から約11,550年前まで」という十の位までの数が同じ文に並ぶ。11,550年前に「気候がより安定になった」。「見積もられる」の留保は外さない。氷冠は「第四紀氷期の大陸氷床の、北半球における唯一の残存物」。基準(vii)に音が入る——「動く氷によって生み出される劇的な音」が価値の説明に入り、「グリーンランドと南極でしか見られない現象」と書かれる。集落を資産の外に出す——境界が「自然の集水域という論理的な地形の基準」で引かれ、近隣の村イリマナクとイルリサットの集落は資産から除外されている。「保護区のすべての土地は国有で、恒久の集落は許されていない」。31章の五通りに続く六通り目で、境界の引き方で人の問題を扱う形。ただし「広範な狩猟と漁が資産の一部分で行われており、特別の狩猟法が執行され監視されている」ので、住んでいないことと使われていないことは別。一覧に緩衝地帯があるのに本文は「計画された緩衝地帯」と書く——一覧は `Buffer zone: 64,890 ha`、本文は「計画された緩衝地帯が採択されたときにさらに高められるだろう」。2019年の軽微な範囲変更と dossier 1149bis から本文が登録時のままとも読めるが一次資料は書いていないので、食い違いの形だけを記録する。ほかにも「増加した管理が求められるだろう」「監視計画から利益を得るだろう」「訪問者センターが計画されている」が並び、完了したこと(管理計画・標識)と混ざる。法に番号と日付の両方が入る——グリーンランド議会法第29号(2003年12月18日)が自然保護の基礎の枠組み、グリーンランド自治政府令第10号(2007年6月15日)がこの資産そのもののための命令。同じ章のヨセミテ308(1916年8月25日の組織法)は日付だけなので細かさが違う。接する区域は廃棄物処理・スノーモービルの利用・建物の建設・景観保護の国の規制で統制される。管理は環境自然省とイルリサット自治体の二者の理事会。「保護区域における採掘の禁止」が法的保護の中に書かれる。観光が乗り物ごとに規制される——船・徒歩・ヘリコプター・犬そりの訪問の規制。クルーズ船とヘリコプターの往来に特別の注意が払われ、混雑と侵食は「イルリサットの町に近い小さな区域に限られている」。「訪問者の接近は……原生自然の性格によって限られている」で地形が訪問を制限している。規制の項目に「資産の内側の文化遺産の遺跡の保護」が入るが、基準は(vii)(viii)だけ。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで3通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
伝統的な暮らし人が住んでいることを、資産がどう扱うか「恒久の集落は許されていない」
気候変動基準・完全性・脅威・機会のどこに置かれるか「意義深く加えてきた」
観光課題「多い=脅威」の一本道では書かれない「クルーズ観光から」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:イルリサットが年間に分離する氷の量は、一次資料ではどう書かれていますか?

  1. 説明文と概要の両方が「35 km³ を超える」で一致している
  2. 説明文は「35 km³ を超える」、概要と基準(viii)は「46 km³ を超える」で食い違う
  3. 量は書かれず、「グリーンランドの分離氷の生産の10%」という割合と、南極の外でいちばん多いという比較だけが書かれている
  4. 概要にだけ量が書かれ、説明文は速さ(1日40 m)だけを書いている
正解と解説を開く

正解:2.説明文は「35 km³ を超える」、概要と基準(viii)は「46 km³ を超える」で食い違う

割合(グリーンランドの分離氷の生産の10%)と比較(南極の外のいかなる氷河よりも多い)はどちらも同じで、絶対量だけが違います。どちらが正しいとは書かれていないので、節と位置を添えて両方を記録します。流れる速さ(1日40 m)は概要と基準(viii)にだけ書かれ、説明文には書かれていません。

確認2:イルリサットの資産の境界と、近隣の村の集落の関係は?

  1. 村の集落は資産の中核区域にあり、段階的な移転が計画されている
  2. 村の集落は資産の中に残され、保護区の内側の人の人口を徐々に減らすための自発的な合意を求める方針が書かれている
  3. 境界は自然の集水域という地形の基準で引かれ、イリマナクとイルリサットの集落は資産から除外されている
  4. 村の集落は緩衝地帯の中にあり、そこだけ別の制度で守られている
正解と解説を開く

正解:3.境界は自然の集水域という地形の基準で引かれ、イリマナクとイルリサットの集落は資産から除外されている

「保護区のすべての土地は国有で、恒久の集落は許されていない」とも書かれます。31章で読んだ五通り(減らす・移転の可能性・監視する・権利を守る・影響が小さい)に続く六通り目で、境界の引き方で人の問題を扱う形です。ただし「広範な狩猟と漁が資産の一部分で行われており、特別の狩猟法が執行され監視されている」とも書かれます。住んでいないことと使われていないことは別です。

確認3:イルリサットの緩衝地帯について、一覧と本文を比べて読めるのは?

  1. 一覧にも本文にも緩衝地帯は書かれていない
  2. 一覧には緩衝地帯の行がまったく無いのに、本文だけが数を挙げて、すでに採択されていると書いていて、一覧と本文の向きがちょうど入れ替わっている
  3. 一覧と本文の数が違い、本文のほうが大きい
  4. 一覧には64,890 ha の行があるのに、本文は「計画された緩衝地帯が採択されたとき」とこれからの話として書いている
正解と解説を開く

正解:4.一覧には64,890 ha の行があるのに、本文は「計画された緩衝地帯が採択されたとき」とこれからの話として書いている

一覧は「軽微な範囲変更の登録年2019年」と dossier 1149bis も示しています。2019年の変更で緩衝地帯が入り、顕著な普遍的価値の本文が登録時(2004年)のままであるとも読めますが、一次資料はそう書いていません。「一覧に数があり、本文はこれからの話として書いている」までを記録します。

確認4:イルリサットの保護の根拠として一次資料に挙がっている法は?

  1. グリーンランド議会法第29号(2003年12月18日)と、グリーンランド自治政府令第10号(2007年6月15日)
  2. デンマーク本国の自然保護法だけで、グリーンランドの法は挙がっていない
  3. 資産に固有の法は無く、廃棄物処理やスノーモービルの利用についての国の規制と地方の計画方針だけで守られていると書かれている
  4. 資産の名を持つ法はまだ作られておらず、制定が求められている
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正解:1.グリーンランド議会法第29号(2003年12月18日)と、グリーンランド自治政府令第10号(2007年6月15日)

法と命令に番号と月日の両方が書かれます。同じ章のヨセミテ308 は「1916年8月25日の組織法」で日付だけなので、細かさが違います。第29号は「種、生態系、保護区域の保護のための基礎となる枠組み」、第10号はこの資産そのもののための命令です。資産に接する区域は、廃棄物処理・スノーモービルの利用・建物の建設・景観保護についての国の規制で統制されます。

参考資料

確認日:2026年10月28日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。