イヴレーア:20世紀の産業都市

登録年
2018年
所在国
イタリア
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(iv)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 基準が(iv)だけ

イタリア、ピエモンテ州イヴレーア。オリヴェッティの試験場として発展した産業都市。

本体 52.37 ha
緩衝地帯 278.32 ha
登録 2018年、基準 (iv)だけ=1つ
軽微な範囲変更 2021年
dossier 1538bis
保存状況報告 一覧に記載なし
GIS データ 未受領
ほかの保全の仕組み 一覧に記載なし

基準が1つだけの資産

遺産 単独の基準
イヴレーア1538 (iv)
アトランティダの教会1612(21章) (iv)
フランク・ロイド・ライト1496(21章) (ii)
アユタヤ576(12章) (iii)
プレア・ビヒア1224(13章) (i)

誰が、いつ始めたか

創業 1908年、カミッロ・オリヴェッティ
製品 タイプライター、機械式計算機、デスクトップコンピュータ
都市の設計 1930年代から1960年代の、イタリアのもっともよく知られた建築家と都市計画家の何人かによる。アドリアーノ・オリヴェッティの指導下
構成 製造、行政、社会サービス、住居の用途の建物

共同体運動とその本

「それらは、1947年にイヴレーアで創設された共同体運動(Movimento Comunità)の思想を映している。それはアドリアーノ・オリヴェッティの1945年の著書『共同体の政治的秩序(l’Ordine politico delle Comunità)』に基づく」とされます。

概要が、資産の思想の源として書名と年を挙げる例です。21章のブラジリア445 は基準(iv)の文で1943年アテネ憲章とル・コルビュジエの1946年の論考を引いていました。イヴレーア1538 は概要で引くので、節が違います。

属性が概要の末尾で列挙され、無形の要素が入る

資産の属性は、産業都市の空間計画、公共の建物と空間、オリヴェッティが開発した住居の建物(現存する内部の要素を含む)である。

概要の節で属性が列挙される資産は、これで三つ目です。

遺産 どの節に いくつ
バイロイト1379(20章) 概要 四つ
フランク・ロイド・ライト1496(21章) 概要 六つ
イヴレーア1538 概要 三つ+無形の要素
ブラジリア445(21章) 真正性 六つ+「四つの尺度」

無形の要素が属性に入る

住居と社会の目的のための建物の供給への共同体運動の影響は重要な無形の要素である。ただし、非住居の建物の大半の機能は停止している。

属性に無形の要素が挙げられ、同じ文でその機能が停止していると書かれます。「価値を担うもの」と「いま働いているもの」を書き分けます。

基準(iv)

イヴレーアの産業都市は、イタリアの近代主義の設計者と建築家の仕事を代表する際立った建築の質のアンサンブルであり、変化する産業と社会の必要を考慮に入れた、生産の設計における20世紀の発展の例外的な例を示す。イヴレーアは、産業の建設の歴史に関して、そして機械の産業からデジタル化された産業の技術への移行に関して、地球規模での生産・建築の設計・社会の側面に関わる近代の視野の最初でもっとも高い表現の一つを代表する。

「機械からデジタルへの移行」が価値の説明に入る点に注意します。産業遺産では、技術の世代の交代そのものが書かれることがあります。

完全性 — 「脆弱であるとみなされる」と明記される

この都市区域の完全性は、イヴレーアの20世紀の発展の意義を伝えるために必要な建物、空間、都市形態を含めることに基づいている。市の構成要素の保存状態はさまざまである。住居の建物の多くは良い/適切な保存状態を示す。しかし、資産の完全性は、多くの要因と圧力のために脆弱であるとみなされる。

脆弱さの要因が五つ挙げられる

要因
新しい都市開発の侵入 —
いくつかの鍵となる産業建築と建物内部の劣化する状態 —
資産の境界と緩衝地帯の内側にある視覚的に侵入的な新しい建造物 —
製造の衰退による元の活動と目的の喪失 —
空き建物の多さと、新しい用途を見つける必要 「イヴレーアの脆弱な完全性に寄与している」

完全性が「脆弱であるとみなされる(is considered to be vulnerable)」と明記される資産は少ないので、そのまま記録します。「完全性が低い」とは書かれていません。

真正性 — 失われる危険が書かれる

根拠 「イヴレーアが産業都市として発展した第一次の時期にさかのぼる都市と建築の事業の数の多さと質」
分析 「個々の構成要素について、その形、設計、材料、および立地と直近の環境の点での詳細な分析が行われた」
残ったもの 「過去20年のあいだに市に影響した生産の変化にもかかわらず、多くの要素が元の特性を維持してきた」
状態の分かれ 「住居、行政、サービスの建物の多くは無傷だが、ほかのものは改修された。そして多数の建物が現在空いており、将来は不確かである」
危険 「大規模な改修の提案、ファサードの外部の仕上げの腐朽、内部の装飾と細部の劣化のために、資産の真正性が徐々に失われる危険がある」
努力 「元の用途と類型が似た新しい用途(電気通信、生産、文化の活動など)を開発する努力がなされてきた」

「真正性が高い」とも「低い」とも書かず、「徐々に失われる危険がある」と書く形です。時制と語調をそのまま写します。

衰退そのものが脅威になっている

44%が空いているか十分に使われていない

イヴレーアの顕著な普遍的価値の長期の保全への課題は、保全の資源の確保と、市の要素全体にわたる新しい用途の必要に関わって生じる。資産の旧産業・企業建物の44%が空いているか十分に使われておらず、維持の戦略への短期の必要がある。住民とほかの利用者との関与は進行中の優先事項である。

訪問者が少ないことが課題

現在、訪問者の水準は低く、観光の収容力を増やす計画がある。

訪問者が少ないことが課題として書かれる資産は、これまで読んだ165件でここだけです。

遺産 訪問者について書かれていること
イヴレーア1538 「訪問者の水準は低く、観光の収容力を増やす計画がある」
ガウディ320(21章) 「増える訪問者数からの圧力の高まりに実効的に応える必要がある」
バイロイト1379(20章) 「訪問者の数と催事の頻度を統制する実効的な措置」。修復計画の完了後は夏期に限る
ロドス493(22章) 「観光開発と資産の商業的過剰利用による増大する危険」
パレンケ411(18章) 「来訪者の増える数(今日では年間60万に達する)」

産業遺産では、使われなくなったことが脅威になります。「訪問者が多いから問題」とは限りません。何が脅威とされているかを、資産ごとに読みます。

完全性でも「製造の衰退による元の活動と目的の喪失」が脆弱さの要因に挙げられ、属性の節でも「非住居の建物の大半の機能は停止している」と書かれます。同じ「衰退」が三つの節に出てきます。

保護管理 — 保護が未完成で、期限つきの将来形がある

三層の法令

水準 法令
国 文化遺産景観法典(2004年改訂)
地域 地域の景観文化遺産法典と地域景観計画(2015年)
地方 イヴレーア土地利用計画(2006年)

国の保護はまだ完成していない

イヴレーアへの国の保護はいくつかの建物についてのみ有効で、まだ完成していない。法的保護の体系は複雑で多層的であり、国と市の両方の当局の関与、資源、専門知識に大きく依存している。地方・地域・国の制度のあいだの合理化と調整の改善が必要である。

「保護されている」で止めず、どこまで保護されているかを読みます。イヴレーア1538 は「まだ完成していない」と明記されます。

期限つきの将来形

資産とその緩衝地帯の視覚の完全性の保護は、2019年10月までに、イヴレーア市議会が地域景観計画の規則を採択し、資産の保護・保全・向上に直接関わる指針と指示を市の規則に統合することによって強化される。

同じ章のリューカン・ノトッデン1486 も「2015年6月までに保護される」と書きます。期限つきの将来形が二つの資産に出てきます。どちらも、その後どうなったかは書かれていません。

「市の技術サービス部門が、提案された事業に直接応答し、建物と景観(緩衝地帯について)への国・地域・地方の指定を考慮に入れて許可を与える」とされます。

管理体系

機関
運営委員会 市長が議長を務める
技術諮問委員会 運営委員会が任命する
サイトコーディネーター —
イヴレーア市の事務総長 運営の代表で、管理計画の行動の実施に関わるすべての市の部門を調整する

管理計画は2017年9月に更新され、保護・保全・記録、能力構築、広報と教育、提示について短期と長期の行動計画を概説します。

境界が二つの自治体にまたがる

バンケッテ市が、その境界内に生じる小さな区域に関して管理計画を実施するための覚書に署名した。

資産の主要部分と、別の自治体にかかる小さな区域が覚書で結ばれる形です。21章のバウハウス729 は三つの州にまたがり、州ごとに別の法で保護されていました。またがり方と結び方が資産によって違います。

2級で押さえること

基準(iv)だけ=1つ、本体52.37 ha / 緩衝地帯278.32 ha、2018年登録・2021年に軽微な範囲変更、dossier 1538bis、一覧に保存状況報告・ほかの保全の仕組みの記載は無い、GIS データ未受領。1908年にカミッロ・オリヴェッティが創業し、タイプライター・機械式計算機・デスクトップコンピュータを製造。都市の形と建物は1930年代から1960年代に、アドリアーノ・オリヴェッティの指導下でイタリアのもっともよく知られた建築家と都市計画家の何人かが設計した。概要が思想の源として書名と年を挙げる——「1947年にイヴレーアで創設された共同体運動(Movimento Comunità)の思想を映している。それはアドリアーノ・オリヴェッティの1945年の著書『共同体の政治的秩序』に基づく」。21章のブラジリア445 は基準(iv)の文で憲章と論考を引いたので、節が違う。概要の末尾で属性が三つ列挙され、無形の要素が入る——「資産の属性は、産業都市の空間計画、公共の建物と空間、オリヴェッティが開発した住居の建物(現存する内部の要素を含む)である」。そのうえで「住居と社会の目的のための建物の供給への共同体運動の影響は重要な無形の要素である。ただし、非住居の建物の大半の機能は停止している」と、同じ文で機能の停止を書く——「価値を担うもの」と「いま働いているもの」を書き分ける。基準(iv)が「機械の産業からデジタル化された産業の技術への移行」を価値の説明に入れる——産業遺産では技術の世代の交代そのものが書かれることがある。完全性が「脆弱であるとみなされる」と明記される——「市の構成要素の保存状態はさまざまである」としたうえで、要因を五つ挙げる(新しい都市開発の侵入/いくつかの鍵となる産業建築と建物内部の劣化する状態/資産の境界と緩衝地帯の内側にある視覚的に侵入的な新しい建造物/製造の衰退による元の活動と目的の喪失/空き建物の多さと新しい用途を見つける必要)。「完全性が低い」とは書かれていない。真正性が「徐々に失われる危険がある」と書く——根拠は「第一次の時期にさかのぼる都市と建築の事業の数の多さと質」で、「過去20年のあいだに市に影響した生産の変化にもかかわらず、多くの要素が元の特性を維持してきた」が、「多数の建物が現在空いており、将来は不確かである」。危険は「大規模な改修の提案、ファサードの外部の仕上げの腐朽、内部の装飾と細部の劣化」。元の用途と類型が似た新しい用途(電気通信、生産、文化の活動)を開発する努力がなされてきた。時制と語調をそのまま写す。衰退そのものが脅威——「資産の旧産業・企業建物の44%が空いているか十分に使われておらず、維持の戦略への短期の必要がある」。そして「現在、訪問者の水準は低く、観光の収容力を増やす計画がある」——訪問者が少ないことが課題として書かれる資産はこれまで読んだ165件でここだけ。ガウディ320・ロドス493・パレンケ411 は逆に増える訪問者が脅威なので、何が脅威とされているかを資産ごとに読む。同じ「衰退」が完全性・属性・保護管理の三つの節に出てくる。法令は三層(国の文化遺産景観法典(2004年改訂)/地域の景観文化遺産法典と地域景観計画(2015年)/イヴレーア土地利用計画(2006年))。「イヴレーアへの国の保護はいくつかの建物についてのみ有効で、まだ完成していない」「法的保護の体系は複雑で多層的であり、……地方・地域・国の制度のあいだの合理化と調整の改善が必要である」——「保護されている」で止めず、どこまで保護されているかを読む。期限つきの将来形——「2019年10月までに」イヴレーア市議会が地域景観計画の規則を採択することによって視覚の完全性の保護が「強化される」。同じ章のリューカン・ノトッデン1486 の「2015年6月までに保護される」と同型で、どちらもその後どうなったかは書かれていない。管理体系は市長が議長を務める運営委員会/運営委員会が任命する技術諮問委員会/サイトコーディネーターで、イヴレーア市の事務総長が運営の代表として市の全部門を調整する。管理計画は2017年9月に更新された。境界が二つの自治体にまたがり、バンケッテ市が「その境界内に生じる小さな区域」に関して管理計画を実施するための覚書に署名した——21章のバウハウス729(三つの州にまたがり州ごとに別の法)とは、またがり方と結び方が違う。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで3通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
歴史上の人物人の名が、その資産でどんな働きをしているか「アドリアーノ・オリヴェッティの指導下でイタリアのもっともよく知られた建築家と都市計画家の何人かが設計した」
産業・経済活動関連遺産産業の跡が、どんな形で資産になっているか「機械の産業からデジタル化された産業の技術への移行」
観光課題「多い=脅威」の一本道では書かれない「訪問者の水準は低く」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:イヴレーアの訪問者について、保護管理の節に書かれているのは?

  1. 訪問者については書かれていない
  2. 現在、訪問者の水準は低く、観光の収容力を増やす計画がある
  3. 増える訪問者数からの圧力の高まりに実効的に応える必要がある
  4. 現在、訪問者の水準は低いが、観光の収容力を増やす計画は無いと書かれている
正解と解説を開く

正解:2.現在、訪問者の水準は低く、観光の収容力を増やす計画がある

訪問者が少ないことが課題として書かれる資産は、これまで読んだ165件でここだけです。産業遺産では「使われなくなったこと」が脅威になります。何が脅威とされているかを資産ごとに読みます。

確認2:イヴレーアの完全性について、UNESCO のページに書かれているのは?

  1. 完全性についての記述は無い
  2. 市の構成要素の保存状態はいずれも良く、資産の完全性は十分に確保されている
  3. 市の構成要素の保存状態はさまざまだが、住居の建物の多くが良い状態なので、資産の完全性は脆弱ではないとみなされる
  4. 市の構成要素の保存状態はさまざまで、資産の完全性は多くの要因と圧力のために脆弱であるとみなされる
正解と解説を開く

正解:4.市の構成要素の保存状態はさまざまで、資産の完全性は多くの要因と圧力のために脆弱であるとみなされる

「脆弱であるとみなされる」と明記される資産は少ないので、そのまま記録します。「完全性が低い」とは書かれていません。要因は五つ挙げられ、そのうち三つが衰退に関わります。

確認3:イヴレーアの属性について、概要の節に書かれているのは?

  1. 空間計画・公共の建物と空間・住居の建物の三つに加えて、共同体運動の影響が重要な無形の要素とされる
  2. 属性は列挙されていない
  3. 空間計画・公共の建物と空間・住居の建物の三つだけで、無形の要素は属性に含まれないとされている
  4. 空間計画・公共の建物と空間・住居の建物の三つに加えて、共同体運動の影響が重要な無形の要素とされるが、その影響はいまも非住居の建物の機能として働いているとされている
正解と解説を開く

正解:1.空間計画・公共の建物と空間・住居の建物の三つに加えて、共同体運動の影響が重要な無形の要素とされる

同じ文で「非住居の建物の大半の機能は停止している」と書かれます。「価値を担うもの」と「いま働いているもの」を書き分けます。概要で属性が列挙される資産は、バイロイト1379・ライト1496 に続いて三つ目です。

確認4:イヴレーアへの国の保護について、保護管理の節に書かれているのは?

  1. 国の保護については書かれていない
  2. すべての建物について有効で、すでに完成している
  3. いくつかの建物についてのみ有効で、まだ完成していない
  4. いくつかの建物についてのみ有効で、まだ完成していないが、地方と地域の保護がそれを補っているので制度の調整は必要ないとされている
正解と解説を開く

正解:3.いくつかの建物についてのみ有効で、まだ完成していない

「保護されている」で止めず、どこまで保護されているかを読みます。一次資料は「地方・地域・国の制度のあいだの合理化と調整の改善が必要である」とも書きます。

参考資料

確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。