カカドゥ国立公園

登録年
1981年
所在国
オーストラリア
登録区分
複合遺産
地域
オセアニア
登録基準
(i) (vi) (vii) (ix) (x)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 居住の年数が食い違う

オーストラリア、ノーザンテリトリー。

本体 1,980,994.92 ha(これまで読んだ120件でもっとも広い)
緩衝地帯 一覧に行が無い
登録 1981年
重要な境界変更 1987年・1992年
軽微な範囲変更 2011年
基準 (i)(vi)(vii)(ix)(x)=5つ(文化2+自然3=複合遺産)
dossier 147quater(四度目)
連続性資産 はい(Serial: yes)
保存状況報告 12年分(1986〜2005年)
ほかの保全の仕組み ラムサール1要素——カカドゥ国立公園

本体1,980,994.92 ha は、5章のワッデン海1314 の1,143,403 ha を超えて、これまででいちばん広い資産です。

居住の年数が、説明文と概要で食い違う

書かれている場所 年数
説明文 「40,000年以上にわたって継続して人が住んできた」
顕著な普遍的価値の概要 「カカドゥは50,000年以上にわたってアボリジナルの人びとの家であった」

1万年の差があります。

どちらかに決めず、両方を記録します。

この章では、年代と数の食い違いがいくつも出ました。先史時代の資産では、年代が研究の進みとともに書き換えられるので、一次資料の中で古い記述と新しい記述が並ぶことがあります。

dossier は四度目

`quater` は四度目です。

接尾辞 意味 例
`quinquies` 五度目 ブナ原生林1133(5章)
`quater` 四度目 カカドゥ147
`ter` 三度目 ポタラ宮707/マロティ985/ワッデン海1314/マルタの巨石神殿群132
`bis` 二度目 ヒマー1619/ヴェゼール渓谷85/ストーンヘンジ373 ほか多数

1987年と1992年の重要な境界変更、2011年の軽微な範囲変更に対応しています。

五つの基準 — 文化2と自然3

基準 区分 中身
(i) 文化 用いられた様式の広い範囲、遺跡の多さと密度、そして長く絶滅した動物を含む幅広い人間の姿と同定できる動物種の繊細で詳細な描写のゆえに、唯一無二の芸術の達成を表す
(vi) 文化 更新世から今日までのアボリジナルの人びとの狩猟採集の伝統に結びついた社会と儀礼の活動への、例外的な証拠の源
(vii) 自然 国際的に認められたラムサール登録の湿地と、壮観な岩の崖とその離れ山とのあいだの顕著な対照。崖は垂直と段をなす岩壁で最大330 m の高さに達し、何百キロメートルにもわたってぎざぎざに途切れず伸びている
(ix) 自然 熱帯オーストラリアの四つの主要な河川系の意義ある要素を取り込む。古い崖と石の国は20億年を超える地質の歴史にわたるが、氾濫原は最近の、動的な環境で、変わる海面と毎雨季の大洪水によって形づくられる
(x) 自然 大きな熱帯河川のほぼ全集水域を保護する点で唯一無二。オーストラリアの鳥類種の3分の1を超え、陸生哺乳類の4分の1、例外的に多数の爬虫類・カエル・魚の種を守る

この章の複合遺産は二つ

遺産 基準の組み合わせ
カカドゥ147 文化2((i)(vi))+自然3((vii)(ix)(x))
ウィランドラ湖167 文化1((iii))+自然1((viii))
マロティ985(5章) 文化2((i)(iii))+自然2((vii)(x))
黄山547(13章) 文化1((ii))+自然2((vii)(x))

組み合わせは資産ごとに違います。「複合遺産だから文化と自然が一つずつ」とは読みません。

狩猟採集の伝統が、いまも続いている

芸術と考古の記録に示された狩猟採集の伝統は、今日も続いている生きた人類学の伝統であり、それは世界の狩猟採集社会にとってまれなことである。

カカドゥの岩絵は、最後の氷期より前の日々における人類の文明への窓を与えている。

「窓(window)」という語が使われています。

完全性 — 「岩絵と考古の遺跡は脅威のもとにない」

資産は、その顕著な普遍的価値を伝えるのに必要なすべての自然と文化の属性を包含している。

カカドゥの先住の所有者との共同管理の体制——放牧の考慮と、統制された火入れと管理の方針の策定を含む——、意義ある研究と監視の活動、そして強い来訪者教育の計画が、資産の完全性の維持に本質的である。

岩絵と考古の遺跡は、脅威のもとにない。

「脅威のもとにない」と明記される資産は、これまで読んだ120件でここだけです。

一方で、自然の属性については「隣接する土地利用・侵略的種・観光からの圧力が継続する注意を要する」と書かれます。文化の属性と自然の属性を、別に書き分けています。

境界は人工的だと書かれている

多くの保護区域の場合と同じく、カカドゥの直線の境界は人工的なものである。それらは、ノーザンテリトリー政府とアーネムランドのアボリジナル保留地との行政の土地利用の決定の長い歴史に関わる。

サウス・アリゲーター川の流域は公園の中に含まれているが、ほかの川の源流は外に横たわっている。 境界は十分であるが、理想の世界では、生態・水文の基準が異なる構成を許すだろう——そしてアーネムランドのイースト・アリゲーター川の流域も含み、それはカカドゥに追加の価値と完全性を加えるだろう。

「理想の世界では(in an ideal world)」という書き方です。

ゼミは、これを「境界が不十分である」と読み替えません。書かれているのは「境界は十分である」+「別の構成もありえた」です。

ウラン鉱山の三つの扱い

鉱山 扱い
レンジャー ウラン鉱山。資産から切り出されている(excised)
ジャビルカ もう一つの切り出された借地。公園内の重要な氾濫原の近くに位置する
クーンガラ 三つ目の、以前は切り出されていた区域。2011年に、締約国と伝統的所有者の要請で資産に組み込まれた

「締約国と伝統的所有者の要請で組み込まれた」と書かれる例です。

真正性

カカドゥの大きな区域は、先住の伝統的所有者と、先住および非先住の国立公園の管理者以外の人びとには、事実上近づけない。したがって文化の遺跡は干渉をほとんど受けていない。

「近づけないことが干渉を防いでいる」という書き方です。

16章では、近づきにくさが保存に寄与したと書かれる資産が三つありました。

遺産 書かれ方
カカドゥ147 大きな区域が事実上近づけないので、文化の遺跡は干渉をほとんど受けていない
ヒマー1619 きわめて乾燥した環境と、太古からのベドウィンの守護のゆえに、例外的によく保存されてきた
メディナ・アサーラ1560(11章) 隠れていた性格が保存に寄与し、その間に建て直されたり改変されたりしていない

誰が守っているか — 管理委員会の過半が伝統的所有者

共同管理

資産は法令によってよく保護され、アボリジナルの伝統的所有者と共同で管理されており、それは管理体系の本質的な側面である。

国立公園長は、1999年環境保護・生物多様性保全法のもとで、公園の管理計画とカカドゥ国立公園管理委員会の関連する決定に従って職務を遂行し権限を行使する。 委員の過半が公園の伝統的所有者を代表する。

「過半(a majority)」と書かれています。

法が外からの影響も対象にする

この法はオーストラリアのすべての世界遺産資産を保護し、世界遺産条約のもとでのオーストラリアの義務を実施するための法令の道具である。 それは資産の外に起源を持つ影響を含めて、世界遺産資産の価値を保護することを目指している。 法により、世界遺産資産の価値に意義ある影響を与える、与えるであろう、または与えるおそれのあるいかなる行為も、担当大臣に検討のため付託されなければならない。承認なくそうした行為を取ることには罰則が適用され、この法は世界遺産資産の価値の保護に関して法廷で試されてきた。

「法廷で試されてきた(has been tested in court)」と書かれる資産は、これまで読んだ120件でここだけです。

2007年、カカドゥは国家遺産一覧に追加された。

挙げられている管理の課題

課題 中身
観光 世界遺産登録の結果としての来訪の意義ある増加
鉱業 放棄された小規模ウラン採掘の遺跡の管理と、既存のレンジャー鉱山の借地の監視
文化の遺跡 自然と化学の風化、水・植生・泥を作るハチ・シロアリ・野生化動物・人間からの損傷に直面しての岩絵の保全
導入された植物 ミモザ・ピグラとサルビニア・モレスタ
導入された動物 アジア水牛の除去と、影響を受けた生態系の回復

「泥を作るハチ(mud-building wasps)」が岩絵の損傷の原因として挙げられます。

1991年の推薦以降に現れた脅威

脅威 中身
気候変動 淡水の生態系への塩水の侵入、変わる火の季節と体制、外来の動植物の拡散の可能性の増大。公園の管理者は気候変動の戦略を実施している
北オーストラリア全体の小型哺乳類の減少 減少の原因は不明だが、最初の理論は火の管理の体制、野生化したネコ、病気の持ち込みをありうる原因として示唆している
オオヒキガエル 急速な定着。大きな区域にわたって個体群を管理する既知の方法は無いが、オーストラリア政府が統制と適応の選択肢の研究を行っている

「既知の方法は無い」と書かれる脅威は、これまで読んだ120件でここだけです。

「原因は不明」と「最初の理論は……を示唆している」もそのまま記録します。断定に変えません。

2級で押さえること

複合遺産で基準は(i)(vi)(vii)(ix)(x)=5つ(文化2+自然3。ウィランドラ湖167 は文化1+自然1、5章のマロティ985 は文化2+自然2)、本体1,980,994.92 ha(これまで読んだ120件でもっとも広い。5章のワッデン海1314 の1,143,403 ha を超える)、一覧に緩衝地帯の行が無い、1981年登録・1987年と1992年に重要な境界変更・2011年に軽微な範囲変更(dossier は 147quater=四度目。5章のブナ原生林1133 の `quinquies` に次ぐ)、連続性資産(Serial: yes)、保存状況報告12年分(1986〜2005年)、ラムサール1要素。居住の年数が食い違う——説明文は「40,000年以上にわたって継続して人が住んできた」、概要は「50,000年以上にわたってアボリジナルの人びとの家であった」。1万年の差があるので、どちらかに決めず両方を記録する。基準(i)は長く絶滅した動物を含む幅広い人間の姿と同定できる動物種の繊細で詳細な描写、基準(vii)はラムサール登録の湿地と壮観な岩の崖の対照(崖は最大330 m、何百キロメートルにもわたってぎざぎざに途切れず)、基準(ix)は古い崖と石の国が20億年を超える地質の歴史にわたる一方、氾濫原は最近の動的な環境、基準(x)はオーストラリアの鳥類種の3分の1超、陸生哺乳類の4分の1。芸術と考古の記録に示された狩猟採集の伝統は「今日も続いている生きた人類学の伝統」で、「世界の狩猟採集社会にとってまれなこと」。「カカドゥの岩絵は、最後の氷期より前の日々における人類の文明への窓を与えている」。完全性に「岩絵と考古の遺跡は脅威のもとにない」と明記される——これまで読んだ120件でここだけ。一方、自然の属性は「隣接する土地利用・侵略的種・観光からの圧力が継続する注意を要する」——文化と自然を書き分けている。「直線の境界は人工的なもの」で、ほかの川の源流は外に横たわっており、「理想の世界では、生態・水文の基準が異なる構成を許すだろう」と書かれる——ただし「境界は十分である」とも書かれているので、「境界が不十分」と読み替えない。ウラン鉱山の扱いが三つに分かれる——レンジャー(資産から切り出されている)/ジャビルカ(もう一つの切り出された借地。公園内の重要な氾濫原の近く)/クーンガラ(2011年に、締約国と伝統的所有者の要請で資産に組み込まれた)。真正性は「大きな区域が、先住の伝統的所有者と国立公園の管理者以外には事実上近づけない。したがって文化の遺跡は干渉をほとんど受けていない」。アボリジナルの伝統的所有者との共同管理で、カカドゥ国立公園管理委員会の委員の過半が伝統的所有者を代表する。1999年環境保護・生物多様性保全法は「資産の外に起源を持つ影響を含めて」価値を保護することを目指し、意義ある影響を与えるおそれのある行為は担当大臣に付託されなければならず、「この法は世界遺産資産の価値の保護に関して法廷で試されてきた」——これも120件でここだけ。2007年に国家遺産一覧に追加された。管理の課題は観光・鉱業・文化の遺跡(風化と、水・植生・泥を作るハチ・シロアリ・野生化動物・人間からの損傷)・導入された植物(ミモザ・ピグラ、サルビニア・モレスタ)・導入された動物(アジア水牛)。1991年の推薦以降に現れた脅威は、気候変動(淡水への塩水の侵入、変わる火の季節と体制)、北オーストラリア全体の小型哺乳類の減少(「原因は不明」で「最初の理論は……を示唆している」)、オオヒキガエル(「大きな区域にわたって個体群を管理する既知の方法は無い」)——「既知の方法は無い」と書かれるのも120件でここだけ。推量・不明の形はそのまま記録し、断定に変えない。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで3通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
ラムサール条約ラムサール条約が、記述のどこに現れるか「国際的に認められたラムサール登録の湿地と、壮観な岩の崖とその離れ山とのあいだの顕著な対照。」
産業・経済活動関連遺産産業の跡が、どんな形で資産になっているか「ウラン鉱山の扱いが三つに分かれる」
気候変動基準・完全性・脅威・機会のどこに置かれるか「気候変動の戦略を実施している」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:カカドゥ国立公園の居住の年数について、UNESCO のページをどう記録すべきか?

  1. 概要が顕著な普遍的価値なので「50,000年以上」だけを記録する
  2. 説明文が先に書かれているので「40,000年以上」だけを記録する
  3. 説明文の「40,000年以上」と概要の「50,000年以上」の両方を記録する
  4. 説明文の「40,000年以上」と概要の「50,000年以上」が食い違うので、居住の年数については何も記録しない
正解と解説を開く

正解:3.説明文の「40,000年以上」と概要の「50,000年以上」の両方を記録する

説明文は「40,000年以上にわたって継続して人が住んできた」、概要は「50,000年以上にわたってアボリジナルの人びとの家であった」です。1万年の差があります。何も記録しないのではありません——どちらかに決めず、両方を記録します。先史時代の資産では、年代が研究の進みとともに書き換えられるので、一次資料の中で古い記述と新しい記述が並ぶことがあります。

確認2:カカドゥ国立公園の完全性に書かれている、これまで読んだ121件でここだけの記述は?

  1. すべての属性が資産の境界の中にある
  2. 岩絵と考古の遺跡は、脅威のもとにない
  3. 完全性についての記述は無い
  4. 岩絵と考古の遺跡は脅威のもとになく、自然の属性についても圧力は書かれていない
正解と解説を開く

正解:2.岩絵と考古の遺跡は、脅威のもとにない

> 岩絵と考古の遺跡は、脅威のもとにない。自然の属性については圧力が書かれています——「隣接する土地利用・侵略的種・観光からの圧力が継続する注意を要する」。文化の属性と自然の属性を、別に書き分けています。「すべての属性が境界の中にある」は多くの資産に書かれる定型です。

確認3:カカドゥ国立公園の境界について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 境界は不十分であると書かれている
  2. 境界についての記述は無い
  3. 「直線の境界は人工的なもの」で「理想の世界では、生態・水文の基準が異なる構成を許すだろう」とされ、そのため境界の改訂が近いうちに予定されている
  4. 「直線の境界は人工的なもの」で「理想の世界では、生態・水文の基準が異なる構成を許すだろう」とされるが、「境界は十分である」とも書かれている
正解と解説を開く

正解:4.「直線の境界は人工的なもの」で「理想の世界では、生態・水文の基準が異なる構成を許すだろう」とされるが、「境界は十分である」とも書かれている

> 境界は十分であるが、理想の世界では、生態・水文の基準が異なる構成を許すだろう——そしてアーネムランドのイースト・アリゲーター川の流域も含み……改訂の予定は書かれていません。「境界は十分である」と書かれているので、「境界が不十分」と読み替えません。

確認4:カカドゥ国立公園のオオヒキガエルについて、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 大きな区域にわたって個体群を管理する既知の方法は無いが、オーストラリア政府が統制と適応の選択肢の研究を行っている
  2. 監視計画によって個体群は統制されている
  3. オオヒキガエルについての記述は無い
  4. 大きな区域にわたって個体群を管理する既知の方法は無く、そのためオーストラリア政府による統制と適応の選択肢の研究も行われていない
正解と解説を開く

正解:1.大きな区域にわたって個体群を管理する既知の方法は無いが、オーストラリア政府が統制と適応の選択肢の研究を行っている

> 大きな区域にわたってオオヒキガエルの個体群を管理する既知の方法は無いが、オーストラリア政府が統制と適応の選択肢の研究を行っている。「既知の方法は無い」と書かれる脅威は、これまで読んだ120件でここだけです。監視計画は「オオヒキガエルの分布と、公園の異なる生息地内の在来の野生生物への影響を決めるため」にあります。

参考資料

確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。