カスビのブガンダ王国の王墓

草で葺かれた、大きな円形の建物
nyiragongo / Adobe Stock(通常ライセンス) / 出典 / 加工: 長辺1800pxへ縮小し WebP へ変換(切り取りなし)
登録年
2001年
所在国
ウガンダ
登録区分
文化遺産
地域
アフリカ
登録基準
(i) (iii) (iv) (vi)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 意義は無形の価値にある

ウガンダ・カンパラ市の中のカスビの丘。敷地の大部分は伝統的な方法で耕される農地です。

丘の頂にブガンダのカバカ(王)たちの旧宮殿があります。1882年に建てられ、1884年に王家の埋葬地に転換されました。主たる建物ムジブ・アザーラ・ムパンガ(円形でドームを戴く)の中に、4人のカバカの墓があります。

墓の建物は13世紀から存在してきました。いまの建物はその最新のものです。

建築としての価値

主たる墓の建物は、木の柱・槍草(spear grass)・葦・小舞(wattle)という植物性の材料で建てられた建築的達成の主要な例です。並外れた規模と際立った細部がバガンダの創造的な才を証し、形と職人技の傑作として、13世紀以来の強大なブガンダ王国が発展させた建築様式の例外的に残る例とされます。

だが、主たる意義は別にある

UNESCO は二度、同じことを書いています。

この資産の主たる意義は、しかしながら、信仰・精神性・継続・アイデンティティという無形の価値にある。

ここはバガンダの主要な精神的中心で、王国でもっとも活発な宗教の場です。儀礼が頻繁に行われ、カバカとその代理人がブガンダ文化に関わる重要な儀礼を執り行います。霊的な世界との交信の連なりが保たれている場所とされます。

基準は(i)(iii)(iv)(vi)の四つ。(i) 人間の創造性の傑作が付いている点が、この章で際立ちます。

登録の範囲 — 境界が生きた木で標されている

本体 26.8 ha
緩衝地帯 設定されていない
登録 2001年
危機遺産 2010年〜2023年(解除された)

説明文(Description)は「約30 ha」と書きます。顕著な普遍的価値は26.8 ha。「約」の付いた概数と、登録範囲の数値の違いです。

境界が木で標されている

墓が位置する土地の境界は、伝統的な樹皮布の木(bark cloth tree, Ficus sp.)で明確に標され、1882年の伝統的な境界と一致している。 この生きた標識が、住宅建設やその他の開発のための土地の侵入者を遠ざけるのに役立ってきたため、元来の土地の広さが保たれている。

法でも柵でもなく、植えられた木が境界を守ってきたという書き方です。

節の見出しに年が入っている — 火災の前と後

UNESCO のページで、三つの節の見出しに「(2010)」が付いています。

“`Integrity (2010)Authenticity (2010)Protection and management requirements (2010)“`

2010年に主たる墓の建物が火災で焼けました。その年に、完全性・真正性・保護管理の節が書き直されています。資産は2010年に危機遺産となり、2023年に解除されました。

顕著な普遍的価値の節(Brief synthesis と基準)には年が付いていません。価値の説明は変えず、状態の説明だけを更新したと読めます。

この章と4章を通して、一次資料の節の有り方は五通りになりました。

型 例
完全性と真正性が別の節 ほとんどの資産
完全性と真正性の見出しが無い ラヴォー(1243)
顕著な普遍的価値の節が丸ごと無い トンガリロ(421)
完全性と真正性が一つの節 スレイマン・トー(1230)
節の見出しに年が入っている カスビの王墓(1022)

いつの時点の記述なのかを確かめる必要がある、という印です。

完全性と真正性 — 失われた属性を「建て直せる」と書く

完全性(2010)

宮殿の設計——ムジブ・アザーラ・ムパンガの周りに王家の建物と墓を配する構成——は、いまも元来のまとまりで保たれているとされます。

最近の火災の悲劇が主たる墓の建物を破壊したことは、鍵となる属性が一つ失われたことを意味する。しかし、柱・槍草・葦・小舞で建てる文化的伝統はいまも活発であり、この墓の建物の再現を可能にするだろう。

ほかの伝統的な構造物はいまもあり、伝統的な儀礼と宗教の慣行、土地保有と土地利用の慣行に関わる鍵となる属性は保たれているとされます。

真正性(2010)

真正性はこの資産に結びついた伝統的・文化的な慣行の継続に表れるとされます。カバカの元来の埋葬の仕組みはいまも保たれ、大きな中央の庭(オルギャ)を囲む配置、太鼓の家と入口の門屋を含む前庭は、ブガンダ王国の宮殿の典型的なまとまりです。

ヤシの葉の構造の輪に載せた草葺きの屋根という慣行、そして樹皮布で巻いた長い木の柱という内部の要素と仕上げの材料も保たれています。

火災による主たる墓の構造物の喪失によって資産の真正性は弱められたが、その建物の伝統的な職人技と必要な技能はいまも利用でき、再現を可能にする。この要因が建物の広範な記録とあいまって、この鍵となる属性の真正な更新を可能にするだろう。

「失われた」で終わらず「真正な更新ができる」と書いています。根拠は二つ——技能が生きていることと記録があること。

無形の価値が主たる意義である資産では、物が焼けても価値の担い手が残ります。ここが2級の読みどころです。

誰が守っているか — 最大の脅威は火災

所有と法

管理 ブガンダ王国
指定 1972年の法定文書第163号と歴史記念物法(1967年法律第22号)で保護地に指定
強化 1995年の国の憲法でこの法的地位がさらに強められた
土地 1998年土地法で登記。カバカ(王)の信託として、王国のために登記されている
観光 ウガンダの各種観光政策でさらに強化
計画 承認済みの総合管理計画(2009-2015)。サイトマネージャーが置かれている

歴史記念物法は、カスビの王墓を住宅の侵入やその性格と相容れないあらゆる目的から守ります。

残っている課題

課題
最大の脅威は火災。とくにこれに対処する詳細なリスク管理計画を作る必要があり、記録が可能なかぎり完全で、安全に保管されるようにする必要
伝統的な建築の過程を時を越えて保つため、若い教育を受けた人びとを訓練する継続的な必要
建て直しの原則を、主要な関係者すべて——UNESCO 世界遺産委員会・ブガンダ王国・ウガンダ共和国政府——で合意する必要があり、再現の過程が体系的で、証拠に基づき、適切に記録される必要

「誰が建て直し方を決めるか」が課題として書かれています。技能と記録があっても、合意がなければ進みません。

2級で押さえること

主たる意義は無形の価値(信仰・精神性・継続・アイデンティティ)とUNESCO が明記している。基準は(i)(iii)(iv)(vi)の四つで、(i)人間の創造性の傑作が付く。節の見出しに「(2010)」が付いている——2010年の火災で完全性・真正性・保護管理が書き直された(五つめの型)。顕著な普遍的価値には年が付いていない=価値の説明は変えず状態だけ更新。火災で鍵となる属性が一つ失われたが「真正な更新ができる」と書かれている——根拠は技能が生きていることと広範な記録があること。境界は生きた樹皮布の木(Ficus sp.)で標され、1882年の境界と一致。危機遺産は2010〜2023年で、解除された。最大の脅威は火災で、建て直しの原則を関係者すべてで合意する必要が残る。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで3通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
無形文化遺産別の条約のもの。要素の名は資産の名と違うことが多い「信仰・精神性・継続・アイデンティティという無形の価値」
墓地・埋葬墓が、資産の内と外のどちらに置かれているか「1882年に建てられ、1884年に王家の埋葬地に転換」
火災の被害同じ火災が、どの節に書かれるかで意味が変わる「鍵となる属性が一つ失われた」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:カスビのブガンダ王国の王墓について、UNESCO が「主たる意義」としているものは?

  1. 信仰・精神性・継続・アイデンティティという無形の価値
  2. 植物性の材料で建てられた主たる墓の建物の規模と細部
  3. 4人のカバカが埋葬されているという歴史的事実
  4. 13世紀以来の建築様式が、円形でドームを戴く形として現在まで途切れずに受け継がれてきたこと
正解と解説を開く

正解:1.信仰・精神性・継続・アイデンティティという無形の価値

> この資産の主たる意義は、しかしながら、信仰・精神性・継続・アイデンティティという無形の価値にある。UNESCO はこれを説明文と顕著な普遍的価値の両方に書いています。建築としての価値(植物性の材料・並外れた規模・際立った細部)も認められていますが、主たる意義は無形の側です。だから物が焼けても価値の担い手が残るという読み方になります。

確認2:カスビのブガンダ王国の王墓の一次資料で、ほかの資産と違う点は?

  1. 顕著な普遍的価値の節が無い
  2. 完全性と真正性が一つの節になっている
  3. 完全性・真正性・保護管理の節の見出しに「(2010)」という年が入っている
  4. 完全性と真正性の見出しが無く、顕著な普遍的価値の節だけに年が入っているので、価値の説明が更新されたことが分かる
正解と解説を開く

正解:3.完全性・真正性・保護管理の節の見出しに「(2010)」という年が入っている

三つの節の見出しに「(2010)」が付いています——`Integrity (2010)` / `Authenticity (2010)` / `Protection and management requirements (2010)`。2010年に主たる墓の建物が火災で焼け、その年に書き直されたためです。顕著な普遍的価値の節(Brief synthesis と基準)には年が付いていません——価値の説明は変えず、状態の説明だけを更新したと読めます。いつの時点の記述なのかを確かめる必要があるという印です。

確認3:カスビの王墓の真正性について、火災で失われた建物の「真正な更新」が可能だとされる根拠は?

  1. 焼け残った材料を再利用できること
  2. 伝統的な職人技と必要な技能がいまも利用でき、建物の広範な記録があること
  3. 同じ様式の建物がほかの場所に残っていること
  4. 1882年の伝統的な境界が樹皮布の木で明確に標されており、元来の配置を図面から復元できること
正解と解説を開く

正解:2.伝統的な職人技と必要な技能がいまも利用でき、建物の広範な記録があること

火災による喪失で真正性は弱められたとしつつ、その建物の伝統的な職人技と必要な技能はいまも利用でき、再現を可能にする。この要因が建物の広範な記録とあいまって、この鍵となる属性の真正な更新を可能にするだろうと書かれています。根拠は二つ——技能が生きていることと、記録があること。完全性の節でも、柱・槍草・葦・小舞で建てる文化的伝統がいまも活発だとされています。

確認4:カスビの王墓の保護管理で、建て直しについて課題として書かれていることは?

  1. 建て直しに必要な予算が確保されていない
  2. 建て直しの可否について、まだ世界遺産委員会の判断が出ていない
  3. 伝統的な材料が入手できなくなっており、近代的な材料で建て直すかどうかの判断が残っているため、職人の訓練も止まっている
  4. 建て直しの原則を、世界遺産委員会・ブガンダ王国・ウガンダ政府の主要な関係者すべてで合意する必要がある
正解と解説を開く

正解:4.建て直しの原則を、世界遺産委員会・ブガンダ王国・ウガンダ政府の主要な関係者すべてで合意する必要がある

建て直しの原則を、主要な関係者すべて——UNESCO 世界遺産委員会・ブガンダ王国・ウガンダ共和国政府——で合意する必要があり、再現の過程が体系的で、証拠に基づき、適切に記録される必要があると書かれています。技能と記録があっても、合意がなければ進みません。材料については、柱・槍草・葦・小舞で建てる伝統がいまも活発だとされています。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。