ラヴォーのブドウ畑の段々畑

登録年
2007年
所在国
スイス
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(iii) (iv) (v)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか

スイス・ヴォー州。レマン湖の北岸、南向きの斜面を約30 km。シヨン城からローザンヌの東の外れまで、村と湖の間の山腹の下部を覆います。

ローマ時代にこの地でブドウが育てられていた証跡はあるものの、いまの段々畑はさかのぼれば11世紀——ベネディクト会とシトー会の修道院がこの地域を支配していた時代です。

UNESCO は、ここが1,000年近くにわたる発展をよく保たれた景観と建物を通して目に見える形で示し、その土地に固有の長く続く文化的伝統の継続と適応も示していると書いています。

三つの基準が、別のことを言っている

基準 何に対して認められたか
(iii) 1,000年近い発展を、よく保たれた景観と建物を通して目に見える形で示していること
(iv) 庇護・支配・保護の物語——それがローザンヌとその地域の発展に大きく寄与し、地理文化的な地域の歴史で重要な役割を果たしたこと
(v) 地域の資源を最適に用いて価値の高いワインを作る、人と環境の数世紀にわたる相互作用。急速に広がる都市への脆弱さが、地域共同体の強い支持を得た保護措置を促したこと

(iv) の「庇護・支配・保護の物語」が2級の読みどころです。ブドウ畑そのものではなく、誰がそれを所有し守ってきたかの歴史が価値とされています。

登録の範囲

面積
本体 898 ha
緩衝地帯 1,408 ha

ここも緩衝地帯のほうが広い(本体の約1.57倍)。

境界はブドウ栽培の過程のすべての要素と、少なくとも12世紀以来の伝統的な栽培地域の広がりを含むとされています。

登録は2007年、基準は(iii)(iv)(v)。この資産は2003年の無形文化遺産保護条約の記載要素「ヴヴェイのワイン生産者祭」とも結びついています。

完全性と真正性の「節」が無い

UNESCO のページに、完全性と真正性の見出しがありません。

紅河ハニ族棚田群・英国の湖水地方・景邁山古茶林・キューバのコーヒー農園には、どれも`Integrity` と `Authenticity` という見出しがありました。ラヴォーのページには無く、顕著な普遍的価値の節は導入の段落 → 基準(iii)(iv)(v) → 見出しの無い段落、という並びです。

節が無いものを、節があるかのように書きません。ゼミはこの扱いをエルサレムの旧市街(148)で決めています——一次資料に節が無い遺産を、あるように書かない。

代わりに、見出しの無い段落が何を言っているか

完全性に相当することは、次のように書かれています。

推薦された境界は、ブドウ栽培の過程のすべての要素と、少なくとも12世紀以来の伝統的な栽培地域の広がりを含む。段々畑は継続して使われ、よく手入れされている。数世紀をかけていまの形へ発展してきた。変化は地域の伝統への敬意によって和らげられる必要がある、といういまは合意がある。

「変化を止める」ではなく「変化を和らげる」という書き方です。生きているブドウ畑なので、変わらないことはありえません。

これは完全性の節ではありません。それでも、作業指針第88項の(a)(必要なすべての要素を含むか)と(b)(十分な大きさがあるか)に当たることが述べられています。節の名前ではなく、何が述べられているかで読みます。

誰が守っているか — 連邦と州で七つ、そして住民

保護は「都市化への反応」として育った

UNESCO は、強い保護が西のローザンヌと東のヴヴェイ-モントルー都市圏から忍び寄る都市化への反応として育ったと書いています。

層 仕組み
連邦 国土計画法(LAT)
連邦 LAT に基づく景観・遺跡・自然記念物の連邦目録(IFP)
連邦 建造された遺跡の連邦目録(ISOS)
州 ラヴォー保護計画法(LPPL)
州 自然記念物・遺跡の目録(IMNS)
州 土地利用計画(PGA)
州 PGA の建築規則(RPGA)

七つが重なっています。緩衝地帯も設定されています。

「住民による例外的な保護」

導入の段落に、見逃しやすい一言があります。この景観は、急速に成長する集落の隣にあるという脆弱さに応えて、例外的な住民の保護(exceptional popular protection)を促したと書かれています。

基準(v)にも、脆弱さが地域共同体の強い支持を得た保護措置を促したとあります。

法が上から保護したのではなく、住民の支持が保護を作ったという書き方です。

村・個々の建物・道と歩道・ブドウ畑の区画の保存状態は高いとされます。管理計画は承認済みで、社会経済データの分析と、研究と文化・経済・土地利用計画・観光についての一連の管理戦略を示しています。

2級で押さえること

一次資料に完全性と真正性の節が無い(エルサレム148と同じ扱い。節が無いものを節があるかのように書かない)。代わりに見出しの無い段落が境界と保護を述べ、「変化は地域の伝統への敬意によって和らげられる必要がある」という合意が記されている。基準(iv)は「庇護・支配・保護の物語」に対して認められた——畑そのものではなく、誰が所有し守ってきたかの歴史が価値。保護は連邦3つ+州4つの七重で、住民の支持が保護を作ったと書かれている。緩衝地帯(1,408 ha)は本体(898 ha)の約1.57倍。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産が出てくるキーワード

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
嗜好品作物そのものか、作る仕組みの全体か「ブドウ畑そのものではなく」

いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:ラヴォーのブドウ畑の段々畑について、UNESCO のページの作りでほかの文化的景観と違う点は?

  1. 登録基準が示されていない
  2. 完全性と真正性の見出しが無く、顕著な普遍的価値は導入の段落と基準と見出しの無い段落で書かれている
  3. 面積と緩衝地帯の記載が無い
  4. 完全性の見出しはあるが真正性の見出しが無く、真正性に当たることは基準(iii)の中で述べられている
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正解:2.完全性と真正性の見出しが無く、顕著な普遍的価値は導入の段落と基準と見出しの無い段落で書かれている

ラヴォーのページには `Integrity` と `Authenticity` の見出しがありません。顕著な普遍的価値の節は、導入の段落 → 基準(iii)(iv)(v) → 見出しの無い段落、という並びです。ゼミは、節が無いものを節があるかのように書きません(エルサレムの旧市街148で決めた扱い)。基準は(iii)(iv)(v)、本体898 ha・緩衝地帯1,408 ha が記載されています。

確認2:ラヴォーの登録基準(iv)が認められた対象は?

  1. 庇護・支配・保護の物語が、ローザンヌとその地域の発展に大きく寄与し、地理文化的な地域の歴史で重要な役割を果たしたこと
  2. 11世紀にベネディクト会とシトー会が段々畑を築いた技術そのもの
  3. ローマ時代からブドウ栽培が続いてきたことが考古学的に証明されたこと
  4. 南向きの斜面を利用して湖面の反射光を取り込む栽培の工夫が、ほかの地域に例を見ないものであること。その工夫が11世紀に確立したこと
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正解:1.庇護・支配・保護の物語が、ローザンヌとその地域の発展に大きく寄与し、地理文化的な地域の歴史で重要な役割を果たしたこと

基準(iv)は「庇護・支配・保護の物語(the story of patronage, control and protection)」に対して認められています。ブドウ畑そのものではなく、誰がそれを所有し守ってきたかの歴史が価値です。ローマ時代の証跡は「ある」とされますが、いまの段々畑は11世紀にさかのぼると書かれています。基準(iii)は1,000年近い発展の可視性、(v)は人と環境の相互作用に対してです。

確認3:ラヴォーの保護について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 州法のラヴォー保護計画法(LPPL)だけが根拠である
  2. 連邦の国土計画法(LAT)が単独で景観を保護している
  3. 国の法による保護は無く、地域共同体の自主的な取り決めと管理計画だけで守られており、緩衝地帯も設定されていない
  4. 連邦の3つと州の4つ、合わせて七つの法と目録が重なり、保護は周囲の都市化への反応として育った
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正解:4.連邦の3つと州の4つ、合わせて七つの法と目録が重なり、保護は周囲の都市化への反応として育った

連邦の国土計画法(LAT)・連邦目録(IFP)・ISOSと、州のラヴォー保護計画法(LPPL)・自然記念物と遺跡の目録(IMNS)・土地利用計画(PGA)・建築規則(RPGA)で七つが重なります。UNESCO は、強い保護が西のローザンヌと東のヴヴェイ-モントルー都市圏から忍び寄る都市化への反応として育ったと書いています。さらに「例外的な住民の保護」が促されたとも記されています。

確認4:ラヴォーの見出しの無い段落で、段々畑の変化について「いまは合意がある」とされている内容は?

  1. 段々畑の形はいかなる変更も認められない
  2. 経済的な必要があれば区画の統合を進めてよい
  3. 変化は地域の伝統への敬意によって和らげられる必要がある
  4. 変化を記録に残しさえすれば、新しい工法や材料を用いた区画の作り替えは認められる
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正解:3.変化は地域の伝統への敬意によって和らげられる必要がある

該当の段落は、段々畑が継続して使われよく手入れされているとし、数世紀をかけていまの形へ発展してきたうえで、「変化は地域の伝統への敬意によって和らげられる必要がある、といういまは合意がある」と書いています。「変化を止める」ではなく「和らげる」です。生きているブドウ畑なので、変わらないことはありえません。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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