基本を学ぶ
どこにあり、何が登録されたのか — 三つの集落
中国・雲南省南西部、標高2,400 m の麗江平野。周囲の山を抜ける戦略的な峠が連なる場所です。
北西の玉龍雪山が川と泉の源で、黒龍潭(Black Dragon Pond)に水を供給し、そこから水路が運河と水道の網へ分かれて町に行き渡ります。
資産は三つの部分からなります。
| 構成 | 中身 |
|---|---|
| 大研(Dayan)旧市街 | 黒龍潭を含む。明代に商業の中心として成立。麗江軍民府の役所、旧木氏邸宅から残る宜子亭と掛壁楼、黒龍潭公園の玉泉の建築 |
| 白沙(Baisha)の住居群 | より早く宋代と元代に成立。大研の北8 km。家は中央の段状の広場を囲んで南北の軸に配される。宗教の複合体に13世紀初めからの40点を超える絵画があり、仏教・道教・ナシの人びとの暮らしを描き、ペー(Bai)の人びとの文化要素を取り込む |
| 束河(Shuhe)の住居群 | 大研の北西4 km |
大研の家々は二階建て・瓦屋根・木造の軸組で、漢と蔵(チベット)の建築と装飾の要素をアーチ形の門・衝立壁・中庭・彫刻された梁に合わせ持ち、ナシ文化を代表して山腹の等高線に沿って列をなします。木の部材には陶器・楽器・花鳥といった生活と文化の要素が精巧に彫られています。
基準 — 茶馬古道と絹の道が合わさる場所
| 基準 | 対象 |
|---|---|
| (ii) | 12世紀以降、四川・雲南・チベット間の交易の重要な物資の集散地であり、南の絹の道(シルクロード)が古代の茶馬古道と合わさる場所。ナシ・漢・チベット・ペーなどさまざまな民族集団の経済的・文化的な交流の重要な中心となった。過去800年の文化的・技術的な交流が独特の地域の建築・美術・都市計画・景観・社会生活・習俗・工芸を生み、漢・ペー・チベットなどの精髄を取り込みながら同時にナシの際立った特徴を示す。とくに宗教建築などの壁画が儒教・道教・仏教の調和した共存を反映している |
| (iv) | 三つの部分が異なる時代の社会・経済・文化の特徴を十分に反映し、山と水源の自然の地形に従って、ナシ・漢・ペー・チベットの人びとの住居の伝統を合わせた際立った集落をなす |
| (v) | 山・川・樹木・建築を統合して人と自然の一体(unity between man and nature)を特徴とする人の住まいを作った。水が旧市街の独特な建築様式・都市配置・景観で重要な役割を果たす——大通りと小路が運河に面し、いくつかの建物と多数の橋が運河をまたいで架かる |
水の仕組み
雪山から出た分岐する水系が村と農地を貫きます。黒龍潭と、散在する井戸と泉が完全な水系をなし、防火・日々の暮らし・生産の必要を満たしています。
防火が水系の機能として名指しされています。ホローケー(401)が木造のため周期的に焼けたのと並べて読めます。
完全性 — 境界が「修正の過程にある」
完全性の節が短く、しかし重要なことが書かれています。
麗江の旧市街の周囲の山はよく保存されており、由緒ある給水の仕組みはいまも機能している。 資産の境界と緩衝地帯は、資産の顕著な普遍的価値をよりよく守るために修正の過程にある(in the process of being modified)。
境界そのものが、いま動いています。
| 本体 | 136.5 ha |
|---|---|
| 緩衝地帯 | 607 ha |
| 登録 | 1997年 |
| 軽微な範囲変更 | 2012年 |
この章と4章では、境界の見直しの書かれ方が三通りありました。
| 書かれ方 | 例 |
|---|---|
| 拡大が望ましい | ケルソネソス1411(コーラをさらに含める)/ティムリチ・オヒンガ1450(南へ。委員会の決定に沿って) |
| 脆弱性を反映した見直しが必要 | バンディアガラ516(縮小もありうる書き方) |
| いま修正の過程にある | 麗江811 |
真正性 — 1996年の大地震にもかかわらず
大研・白沙・束河の資産区域は、1996年2月3日の大地震を含む多数の地震にもかかわらず、明代と清代の全体の配置・都市形態・街路景観・建築様式を保ってきた。
日付まで書かれています。
麗江の旧市街の無形遺産——トンパ(東巴)文化、ナシ文字、伝統的住居の建築技能——は、ナシ社会の発展とともに受け継がれ、促されてきた。
無形遺産が真正性の対象に入っています。
この章では、無形のものが真正性や価値の中心に来る資産が繰り返し出てきました。
| 資産 | 無形のもの |
|---|---|
| カスビの王墓1022 | 主たる意義が無形の価値(信仰・精神性・継続・アイデンティティ) |
| ロイ・マタ1280 | 口承伝統とタブーの禁止 |
| ナン・マドール1503 | 真正性に無形文化が含まれる |
| パパハナウモクアケア1326 | 生きた伝統と宇宙観 |
| 麗江811 | トンパ文化・ナシ文字・建築技能 |
誰が守っているか — 委員会の監視に応えてきた
法
| 法 |
|---|
| 中華人民共和国文物保護法 |
| 同法の実施条例 |
| 歴史文化名城・名鎮・名村の保護条例 |
近年行われたこと
近年、さまざまなレベルの世界遺産の保護管理機関が追加の措置を取ってきた。彼らは世界遺産委員会が行ったリアクティブ・モニタリングに積極的に応え、委員会の決定を注意深く実施し、専門機関と専門家を組織して麗江の旧市街の顕著な普遍的価値についての研究を強めた。
「リアクティブ・モニタリングに応えた」と一次資料に書かれています。委員会から監視を受けた経緯があることが読めます。
| 作られた文書 |
|---|
| 世界文化遺産としての麗江旧市街保護マスタープラン |
| 民家修理マニュアル |
| 環境保護マニュアル |
| 商業発展計画 |
| 管理計画 |
さらに保護区域の面積を調整することによって、資産の周囲の区域における観光と商業の開発への統制と管理を強めたとされます。
「商業発展計画」が保護の文書に並んでいるのが特徴です。観光と商業を止めるのではなく、計画して統制する形です。
2級で押さえること
三つの集落からなる(明代の大研/宋元代の白沙/束河)。基準(ii)は南の絹の道が古代の茶馬古道と合わさる場所で、壁画が儒教・道教・仏教の調和した共存を反映。水系の機能に防火が名指しされている。完全性の節に「資産の境界と緩衝地帯は修正の過程にある」と書かれ、境界そのものがいま動いている(登録1997年・軽微な範囲変更2012年)。真正性は1996年2月3日の大地震を含む多数の地震にもかかわらず明清の配置と様式を保ったことと、無形遺産(トンパ文化・ナシ文字・建築技能)。保護管理に世界遺産委員会のリアクティブ・モニタリングに応えたと書かれており、「商業発展計画」が保護の文書に並んでいる。
準1級
準1級向けに理解を深める
準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。
この遺産が出てくるキーワード
| キーワード | このキーワードで見るもの | 本文の手がかり |
|---|---|---|
| 地震の被害 | 同じ地震でも、書かれる資産と書かれない資産がある | 「1996年2月3日の大地震」 |
いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。
準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。
キーワードで練習する
級別の確認問題
2級 確認問題
答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。
確認1:麗江の旧市街の登録基準(ii)が述べている内容に含まれるものは?
- 三つの部分が異なる時代の社会・経済・文化の特徴を反映していること
- 山・川・樹木・建築を統合して人と自然の一体を作ったこと
- 12世紀以降の交易の中心であり、玉龍雪山からの水系が防火の機能を果たしてきたことと、三つの集落が同じ時代に成立したこと
- 南の絹の道が古代の茶馬古道と合わさる場所であり、壁画が儒教・道教・仏教の調和した共存を反映していること
正解と解説を開く
正解:4.南の絹の道が古代の茶馬古道と合わさる場所であり、壁画が儒教・道教・仏教の調和した共存を反映していること
基準(ii)は、12世紀以降の四川・雲南・チベット間の交易の重要な集散地で、南の絹の道が古代の茶馬古道と合わさる場所であり、とくに宗教建築などの壁画が儒教・道教・仏教の調和した共存を反映しているとしています。三つの部分が異なる時代を反映することは基準(iv)、人と自然の一体は基準(v)。防火は基準(v)の水系の記述の中にあります。
確認2:麗江の旧市街の完全性について、UNESCO の記述に合うものは?
- 境界と緩衝地帯の見直しは完了している
- 資産の境界と緩衝地帯が、顕著な普遍的価値をよりよく守るために修正の過程にある
- 緩衝地帯が設定されていない
- 資産の境界と緩衝地帯の修正が必要とされているが、2012年の軽微な範囲変更によってすでに完了している
正解と解説を開く
正解:2.資産の境界と緩衝地帯が、顕著な普遍的価値をよりよく守るために修正の過程にある
> 資産の境界と緩衝地帯は、資産の顕著な普遍的価値をよりよく守るために修正の過程にある。境界そのものがいま動いています。登録は1997年、軽微な範囲変更が2012年に行われていますが、完全性の節は修正が進行中であると書いています。本体は136.5 ha、緩衝地帯は607 ha です。
確認3:麗江の旧市街の真正性について、UNESCO の記述に合うものは?
- 地震による被害が大きく、真正性は部分的に失われた
- 明清の建築はすべて建て替えられたが、都市の配置だけが残った
- 1996年2月3日の大地震を含む多数の地震にもかかわらず、明代と清代の配置・都市形態・街路景観・建築様式を保ってきた
- 1996年2月3日の大地震を含む多数の地震にもかかわらず明清の様式を保ってきたが、無形遺産は真正性の対象から外されている
正解と解説を開く
正解:3.1996年2月3日の大地震を含む多数の地震にもかかわらず、明代と清代の配置・都市形態・街路景観・建築様式を保ってきた
> 大研・白沙・束河の資産区域は、1996年2月3日の大地震を含む多数の地震にもかかわらず、明代と清代の全体の配置・都市形態・街路景観・建築様式を保ってきた。さらに無形遺産——トンパ(東巴)文化、ナシ文字、伝統的住居の建築技能——が受け継がれ促されてきたとされ、無形遺産も真正性の対象に入っています。
確認4:麗江の旧市街の保護管理について、一次資料に書かれていることは?
- 世界遺産委員会が行ったリアクティブ・モニタリングに積極的に応え、委員会の決定を実施してきたとされる
- 世界遺産委員会の監視を受けた経緯は無い
- 保護の文書はまだ作られていない
- 世界遺産委員会のリアクティブ・モニタリングに応えてきたが、保護マスタープランと管理計画はまだ作られていないとされる
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正解:1.世界遺産委員会が行ったリアクティブ・モニタリングに積極的に応え、委員会の決定を実施してきたとされる
> 近年、さまざまなレベルの世界遺産の保護管理機関が追加の措置を取ってきた。彼らは世界遺産委員会が行ったリアクティブ・モニタリングに積極的に応え、委員会の決定を注意深く実施し、専門機関と専門家を組織して顕著な普遍的価値についての研究を強めた。作られた文書には保護マスタープラン・民家修理マニュアル・環境保護マニュアル・商業発展計画・管理計画があります。「商業発展計画」が保護の文書に並んでいるのが特徴です。
参考資料
確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。