メイマンドの文化的景観

登録年
2015年
所在国
イラン
登録区分
文化遺産
地域
アジア
登録基準
(v)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 動くのは動物ではなく人

イラン中央の山脈の南端、谷の奥にある半乾燥の自立した一帯。村人は半遊牧の農牧民です。

この遺産の要点は、移牧の向きです。

この文化的景観は、かつてはより広く見られたと思われる仕組みの例で、動物ではなく人の移動を伴う。

住民は年のうちに、定められた集落——伝統的には4つ、近年は3つ——へ家畜とともに移ります。そのうち3つの集落では家は仮設で、4つめでは洞窟住居が恒久的です。

集落 時期 住まい
サル・エ・アーゴル 冬の終わりから春の遅くまで マルハーネ(円形・半地下・低い空石積みの壁・木と野薊の茅の屋根)とマシュクダーン(地上・空石積み・枝の円錐屋根)
サル・エ・バーグ 夏から初秋 季節河川の近く。暑い時期は軽い造り(空石積みに木組みと草の茅)、悪天候では高い石壁と円錐屋根
洞窟集落 冬 軟岩(カマル)を掘った住居。最大5層

約400のキチェ(住居)が同定され、123が無傷です。1戸は1〜7室で、伝統的に居住と貯蔵に使われてきました。

夏の村の周りには小麦と大麦の段々畑の跡と、いまは多くが廃墟になった水車の跡があります。ブドウ果汁を煮詰めて濾す穴はいまも使われ、ケル・エ・ドゥーシャーブがそのドゥーシャーブ(ブドウのシロップ)を入れるのに使われています。

きわめて乾いた気候のため、伝統的に水の一滴ごとを川・泉・地下の溜まりから集め、貯水槽に貯めるかカナート(地下水路)で導いて、家畜・果樹園・小さな菜園に使いました。共同体は自然環境と強い結びつきを持ち、それが社会的慣行・文化的儀礼・宗教的信仰に表れているとされます。

登録の範囲

面積
本体 4,953.85 ha
緩衝地帯 7,024.65 ha

緩衝地帯は本体の約1.42倍。登録は2015年。

基準は(v)ただ一つです。この章で単独の基準はメイマンドだけ(紅河は(iii)(v)、湖水地方は(ii)(v)(vi)、シンガポール植物園は(ii)(iv)、バッティールは(iv)(v))。

推薦書は1423rev。一度練り直してから登録されています。

完全性 — 数字で弱さが示されている

農牧の仕組みと恒久・季節の住まいを示す構成要素はすべて境界の中にあるとされます。しかし、そのあとが長い。

構成要素はしかし脆弱である。移牧の仕組みの回復力との関係において。人口は減りつつあるが、いまのところ続いている。

弱さが数字で示されています。

洞窟住居 400のうち、冬に人が住むのは約90のみ
いくつかは週末だけ(移り住んだ最寄りの町から戻るとき)
アーゴル(季節の集落) 8つが生きていて、2つが放棄
家族 約70家族

小さな灌漑畑は輪郭としては残っているものの、もはや自給のための主要作物を育てるのには使われていません。近隣の町との交通が改善したため、人びとは以前と違う方法で家畜と菜園の世話をできるようになり、一世代前よりずっと少ない人数しか洞窟の村で越冬していません。

季節の建物の大半は毎季ほとんど作り直され、それ自体が何世代も続いてきた伝統的な慣行の反映です。だが、その慣行はきわめて脆弱で、牧畜の暮らしが若い世代に魅力的でなく十分に成り立たないなら、一世代のうちに消えうると書かれています。

真正性 — 残っているカナートは2本

景観そのものと、それと関わる伝統的慣行(洞窟住居・季節の仮設の住まい・水の構造物)について、構成要素の大半の真正性にはほとんど疑いがないとされます。

ただし、具体的な減りが書かれています。

水の構造物 近年いくつかが改変され、カナートは2本しか残っていない
洞窟の構造物 過去10年で大規模な修復を受けた

真正性もまた伝統的慣行の弱まりに対して脆弱とされ、景観を管理する共同体の規模が小さくなること、より多くの家族が夏のあいだだけ谷に住むようになること、そしてとくに洞窟住居への観光の影響が挙げられています。

紅河ハニ族棚田群の真正性の弱点は「材料が手に入らない」でした。メイマンドは「担う人が減っている」です。物ではなく人の数が真正性の弱点として書かれています。

誰が守っているか — そして「村を博物館にしない」

法の保護

洞窟の村は国家遺産リストに登録され、歴史記念物保護保存法で保護されています。

資産の全体は、イランのほかの登録資産と同様に、登録のうえで法的に保護されると理解されている。

登録の時点では、全体の法的保護はまだでした。

ほかにイランの文化・自然の法が及びます。イラン民法は公共記念物の所有の移転を禁じ、重要な文化財の私的所有を禁じます。イスラム刑法も保護し、登録された記念物の修復・修理・改装・移転・用途変更などはイラン文化遺産・手工芸・観光機構(ICHHTO)の承認なしに行えません。

管理

2001年以来 ICHHTO が資産の責任を負い、メイマンド文化遺産拠点が設けられて、メイマンド村議会と村役場と密に結びついています。日々の事柄は地元の議会が拠点と協働して管理し、いまのところ行政のための地元の資源は足りているとされます。

当初の推薦書の管理計画が資産区域の規則を定めました。緩衝地帯については、工業団地や高速道路のような大規模な計画はICHHTO の同意を要します。

持続的発展の計画は最近ようやく枠組みができたばかりで、行動計画へ落とし込むには、合意された時間軸と必要な資源を伴うさらなる作業が要ると書かれています。大学の学部が作った3つの計画(生態的能力の評価/農牧の暮らしの記述と比較研究/水源と農業の影響の研究)もあり、地元の班が農事暦の活動の地図化に取り組んでいます。

残る懸念

こうした取り組みと地域共同体の対話への参加にもかかわらず、約70家族という小さな共同体が、メイマンドの農牧の仕組みを生かし続ける持続的で回復力のある単位をなしうるかという懸念は残る、とされます。真正性と完全性はこうして、伝統的慣行の弱まりに対して脆弱です。

観光については、はっきりこう書かれています。

観光が地元の伝統を損なうのではなく支えるように、また村を博物館に変えて農牧の伝統の消滅に寄与することを避けるように管理されるには、どうするかを定めた計画が必要である。

「保存すること」が「暮らしを止めること」になりうるという書き方です。生きている文化的景観の難しさがここに出ています。

2級で押さえること

動くのは動物ではなく人——三段階の移牧で、冬は軟岩を掘った洞窟住居(最大5層)。完全性の弱さが数字で示されている——洞窟住居400のうち冬に住むのは約90、アーゴルは8が生きて2が放棄、約70家族。真正性の弱点は担う人が減っていること(紅河は「材料」。物ではなく人)。カナートは2本しか残っていない。登録の時点では資産全体の法的保護がまだで、持続的発展の計画も枠組みだけ。「村を博物館に変えない」ための観光の計画が必要と明記されている。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで2通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
伝統的な暮らし人が住んでいることを、資産がどう扱うか「そのうち3つの集落では家は仮設で」
嗜好品作物そのものか、作る仕組みの全体か「ブドウ果汁を煮詰めて濾す穴はいまも使われ」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:メイマンドの文化的景観の移牧の仕組みについて、UNESCO が「かつてはより広く見られたと思われる」としている特徴は?

  1. 動物だけを季節ごとに別の牧地へ移すこと
  2. 一年を通じて洞窟住居に定住すること
  3. 家畜を連れて国境を越えて移動し、隣の谷の共同体と牧地を共有すること
  4. 動物ではなく人が移動すること
正解と解説を開く

正解:4.動物ではなく人が移動すること

UNESCO は、この文化的景観をかつてはより広く見られたと思われる仕組みの例で、動物ではなく人の移動を伴うと書いています。住民は年のうちに定められた集落(伝統的には4つ、近年は3つ)へ家畜とともに移り、3つでは家は仮設、4つめでは洞窟住居が恒久的です。冬の洞窟住居は軟岩(カマル)を掘ったもので最大5層になります。

確認2:メイマンドの完全性について、UNESCO が挙げている数字に合うものは?

  1. 洞窟住居400のすべてが冬に使われている
  2. 洞窟住居は約400のうち冬に人が住むのは約90で、アーゴルは8つが生きていて2つが放棄されている
  3. 洞窟住居は123すべてに人が住んでいる
  4. 洞窟住居は約400のうち123が無傷で、そのすべてで越冬が続いており、アーゴルの数も近年は増えている
正解と解説を開く

正解:2.洞窟住居は約400のうち冬に人が住むのは約90で、アーゴルは8つが生きていて2つが放棄されている

約400のキチェ(住居)が同定され、123が無傷です。そのうち冬に人が住むのは約90のみで、いくつかは週末だけ(移り住んだ最寄りの町から戻るとき)です。アーゴル(季節の集落)は8つが生きていて2つが放棄。共同体は約70家族。完全性の弱さが数字で示されています。

確認3:メイマンドの真正性の弱点と、紅河ハニ族棚田群の真正性の弱点の違いは?

  1. どちらも伝統的な材料の入手が弱点である
  2. どちらも担う人の減少が弱点である
  3. メイマンドは担う人が減っていること、紅河は伝統的な材料が入手しにくくなっていること
  4. メイマンドは伝統的な材料の入手、紅河は観光の影響が弱点で、担う人の数はどちらの節にも出てこない
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正解:3.メイマンドは担う人が減っていること、紅河は伝統的な材料が入手しにくくなっていること

メイマンドの真正性は伝統的慣行の弱まりに対して脆弱とされ、景観を管理する共同体の規模が小さくなること、より多くの家族が夏だけ谷に住むようになること、とくに洞窟住居への観光の影響が挙げられています。カナートは2本しか残っていません。紅河の弱点は伝統的な家の材料が入手しにくいことでした。物ではなく人の数が弱点として書かれているのがメイマンドです。

確認4:メイマンドの観光について、UNESCO が計画に求めている内容は?

  1. 村を博物館に変えて農牧の伝統の消滅に寄与することを避けるように観光を管理すること
  2. 観光客の数を制限して、洞窟住居への立ち入りを禁じること
  3. 観光収入を住民に分配して、牧畜を続ける動機にすること
  4. 観光のための施設を緩衝地帯の外に集め、資産の中では一切の商業活動を認めないこと。洞窟住居の公開も取りやめること
正解と解説を開く

正解:1.村を博物館に変えて農牧の伝統の消滅に寄与することを避けるように観光を管理すること

UNESCO は、観光が地元の伝統を損なうのではなく支えるように、また村を博物館に変えて農牧の伝統の消滅に寄与することを避けるように管理されるには、どうするかを定めた計画が必要だと書いています。「保存すること」が「暮らしを止めること」になりうるという書き方です。持続的発展の計画は最近ようやく枠組みができたばかりで、行動計画へ落とし込むにはさらなる作業が要るとされます。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。