モスタル旧市街の石橋と周辺

登録年
2005年
所在国
ボスニア・ヘルツェゴビナ
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(vi)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 基準(vi)だけ、そして再建が価値

ボスニア・ヘルツェゴビナ、ネレトヴァ川の深い谷。ヘルツェゴビナ=ネレトヴァ県。

本体 7.6 ha
緩衝地帯 47.6 ha(本体の約6.26倍)
登録 2005年、基準 (vi) だけ
dossier 946rev
連続性資産 一覧に `Serial` の行が無い

基準(vi)だけの資産が二つ目になった

これまで読んだ215件で、基準(vi)だけの資産は10章のリラの修道院216 に続いて二つ目です。

完全性の節は「資産は7.60 ha を包含し、48 ha の緩衝地帯を伴う」で、一覧の7.6 ha と47.6 ha の四捨五入です。食い違いではありません。

基準(vi) — 再建されたことが価値になる

古い橋とその周囲の「ルネサンス(renaissance)」とともに、モスタル市の象徴の力と意味——多様な文化、民族、宗教の背景を持つ共同体の共存の例外的で普遍的な象徴として——が補強され強められてきた。それは、圧倒的な破局に直面しての、平和のための人の連帯と力強い協力の限りない努力を際立たせている。

再建される前の姿ではなく、再建されたことが基準(vi)の根拠として書かれます。「補強され強められてきた」は、再建の後の状態です。これまで読んだ215件でここだけです。

名前の由来は「橋の番人」

現在の名、モスタルは1474年に初めて言及され、「モスタリ(mostari)」——橋の番人から派生した。

都市の構造として15世紀に、川と陸の道の交わりに設けられた集落は、元はフム丘とヴェレジ山の麓のあいだ、ネレトヴァ川の谷に位置していた。この比較的小さな集落は、書かれた歴史の出どころに記されるとおり1459年の年代を持つ橋の周りに二つの塔を持っていた。

建てた人の名が、説明文と概要で違う

出どころ 設計者
説明文 「名高い建築家シナンによって設計された」古い橋
概要 「名高い建築家、ミマール・ハイルッディーンによって設計された傑作(彼の師である偉大な建築家ミマール・シナンの設計に従って)」

説明文はシナンの設計、概要はハイルッディーンの設計(師シナンの設計に従って)です。どちらかに決めず、両方を記録します。

紛争の年も違う

出どころ 書かれていること
説明文 「1990年代の紛争において」/「古い橋は最近再建された」(年が無い)
概要 「1990年の紛争において」/「古い橋は2004年に再建された」

概要は再建の年(2004年)を書き、説明文は「最近」とだけ書きます。紛争の年は「1990年代」と「1990年」で違います。

四つの信仰が並ぶ

ここでの建築は寛容の象徴を示した——ムスリム、キリスト教徒、ユダヤ教徒の共有された生活。モスク、教会、シナゴーグが並んで存在し、それは、この地域において、西ヨーロッパの文化を伴うローマ・カトリックのクロアチア人、ビザンツ文化の要素を伴う東方正教のセルビア人、そしてセファルディムのユダヤ人が、ボスニア人=ムスリムとともに四世紀を超えて生き続けたことを示している。

9章・10章のキリスト教の章、11章のイスラム教の章で読んだ共存の書き方と並べられます。

こうして特定の地域の建築が創られ、物理の寸法ではほとんど控えめだが、その人々の文化の歴史にとって相当の重要さを持つ唯一無二の建築の達成の連なりを残した。

「寸法では控えめ」と書かれます。大きさが価値の尺度ではないことが、本文に書かれています。

創造の過程は、単一の川へ合流する流れのように、個々の寄与する要素の単なる総和を超えるものになったさまざまな文化の影響の絶えざる流れを生んだ。

完全性と真正性 — 再建を隠さない

完全性 — 「戦前の外観と特徴に従って」

再建の仕事の後、古い橋はふたたび、時と空間において、モスタル旧市街の歴史の証言である。

「ふたたび(again)」と書かれます。

古い橋の複合とその周囲の記念碑的な構造、インフラ、都市の織物の大部分の再建の仕事は、場所の全体の完全性を考慮に入れた。これは、戦前の外観と特徴に従って、垂直と水平の寸法、形、尺度、物質化を維持することによって達成された。言いかえれば、モスタル旧市街の統合された表現である。

何を基準に戻したかが「戦前の外観と特徴」と明記されます。10章のキーウ527 は「18世紀後期のウクライナ・バロックの時期の建築の形に従って」でした。どの時点に戻したかを読みます。

無形のものが「現地にある」

資産の顕著な普遍的価値を映す要素は、無形のもの(とくにその象徴の力)を含めて、現地に(in situ)存在する。

無形のものが「現地に存在する」と書かれる資産です。の制度の記載とは別に、本文が無形の要素を完全性の要素に数えています。

さらに、より古い中世の橋(古い橋とほとんど同じ位置の)の考古の発見が、強い歴史と機能の完全性、ならびに建築家と都市計画者が新しい開発の原則と建築をより早い中世の時代と統合する能力を指し示している。

モスタル旧市街は……新しい、あるいは不適切に更新された構造の形での改変を導入することなく、都市の景観の認識できる特徴と都市形態の母型における読み取りやすさとともに全体としてのその一貫性を保存した。

真正性 — 再建はまったく隠されていない

古い橋の再建は、高い質の記録に頼って、徹底した詳細な多面の分析に基づいていた。形の真正性、真正な材料と技法の使用は十分に認識できる一方で、再建はまったく隠されていない。

`the reconstruction has not been hidden at all`。再建であることを隠さないことが、真正性の説明に入ります。

残っている元の材料は博物館に展示され、再建の不可分の一部になっている。

壊れた元の部材が博物館に置かれ、それが「再建の一部」とされます。14章のデルフィ393 は資産の中に博物館だけが建てられ、17章の殷墟1114 は二つの博物館を建てました。モスタル946 は、博物館の中のものが再建の一部だと書きます。

橋の織物の再建は、この資産の無形の次元の修復への背景として見られるべきである。

`the background to the restoration of the intangible dimensions`。物を直すことが、無形のものを直すための背景だと書かれます。物と象徴の関係が、ここまではっきり書かれる資産は215件でここだけです。

都市の尺度での真正性

都市の尺度では、真正性は、物理の構造の改修と適切な機能の導入による歴史の核の統合的な復旧を通じて保存されている。それぞれの構造のための元の体積、敷地、建造の材料の使用が、歴史の織物の類型と形態を保存した。

建築の真正性は、現代の理論と実践の適用によって達成され、広範な研究と、遺跡で見つかった元の要素の再利用を伴う。再建は、異なる歴史の層と以前の修復の仕事への尊重をもって、元の構造の思想と原則に忠実なままであった。

「現代の理論と実践」で達成されたと書かれます。10章のトロイツェ・セルギエフ657 は1920年代の修復が「現代の保全の実務とは異なる方法」とされ、歴史の文脈で見るよう求められていました。モスタル946 は、現代の理論を使ったことが根拠です。

誰が守っているか — 旧ユーゴ時代の法律がいまも並ぶ

法令が三つ、年代が三つの時代にまたがる

法令 年
ボスニア・ヘルツェゴビナ国定記念物保存委員会の決定の実施についての法律 2002年
ボスニア・ヘルツェゴビナ社会主義共和国の文化、歴史、自然の遺産の保護と利用についての法律 1985年
ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の水準における物理計画と土地利用についての法律 2006年

1985年の法律は「社会主義共和国(SR)」の名を持ちます。旧ユーゴスラビア時代の法律が、いまも保護の根拠として並んでいます。10章のゲラティ710 は「ソ連の時期以来」の指定でしたが、あちらは指定、ここは法律です。

国定記念物の境界が、資産の範囲と一致する

加えて、モスタルの歴史的都市区域が、登録資産の区域に対応する境界を伴って国定記念物として登載された。

14章のトロイア849 は1995年の決定で古代都市の限界を「世界遺産の資産の限界と一致するよう作られた」と書きました。モスタル946 も国内の指定が資産の範囲と一致します。

管理計画が四つの部分からなり、実施されている

管理の点では、モスタル旧市街のための管理計画が実施されてきた。この文書は四つの部分(統治、財政、計画と実施。2001年のマスタープランを含む)からなり、資産の顕著な普遍的価値を保存し保護する目的で作成された。

管理計画が「実施されてきた」と書かれ、しかも中身が四部に分かれます。17章ではドーラヴィーラ1645 が「承認され実施されている」でした。モスタル946 は部分の名まで書かれます。

計画はまた、適切な管理、資産の顕著な普遍的価値・文化と歴史の特徴にふさわしいしかたでの世界遺産の資産の持続可能な利用、文化の価値の持続可能な保護と保全を確保するために必要な活動も定めている。それはまた、地元の共同体の条件と生活の質を改善することにおける資産の積極的な役割も際立たせている。

資産が地元の生活の質を改善する役割を持つと書かれます。

マスタープランがボスニア・ヘルツェゴビナ連邦政府によって採択された。

運用は市が設けた機構が

運用の点では、モスタル市議会が、保存、開発、遺跡管理、監視に責任を負う機構「スタリ・グラード」(モスタルにある)を設けた。機構は、遺産保護を担当するほかの機関(主として連邦記念物保護研究所)と緊密に協力して働く。

遺産保護に関わる仕事は、主としてボスニア・ヘルツェゴビナ連邦政府とモスタル市によって資金を与えられている。モスタル市はまた、市のインフラの改善に関わる事業も実施する。

財源が二つ名指しされます。

残っている課題

開発の圧力が資産とその緩衝地帯の完全性の条件と保全を脅かさないことを実効的に確保することに課題が残っている。この目的のために、遺産保護の各部局は、潜在的な否定的な影響を防ぎ和らげるための必要な措置を整える必要がある。

一覧の下部

記載 中身
保存状況報告 6年分(2006-2011年)
GIS のデータ 未受領
ほかの保全の仕組み 記載なし
タブ `Assistance`

保存状況報告が2011年で止まっています。2012年以降の記載がないことは「問題が無い」とは読みません。

2級で押さえること

基準(vi)だけ——215件でリラの修道院216(10章)に続いて二つ目、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ネレトヴァ川の深い谷、本体7.6 ha・緩衝47.6 ha(約6.26倍)、2005年登録、dossier 946rev。基準(vi)は「古い橋とその周囲の「ルネサンス」とともに、モスタル市の象徴の力と意味……が補強され強められてきた。それは、圧倒的な破局に直面しての、平和のための人の連帯と力強い協力の限りない努力を際立たせている」——再建される前の姿ではなく、再建されたことが基準の根拠。215件でここだけ。名は1474年に初めて言及され「モスタリ(mostari)」=橋の番人から派生した。集落は15世紀に川と陸の道の交わりに設けられ、書かれた出どころに1459年の年代を持つ橋の周りに二つの塔があった。設計者が説明文と概要で違う——説明文はシナン、概要はミマール・ハイルッディーン(師ミマール・シナンの設計に従って)。紛争の年も「1990年代」(説明文)と「1990年」(概要)で違い、再建は説明文「最近」/概要「2004年」。「ここでの建築は寛容の象徴を示した——ムスリム、キリスト教徒、ユダヤ教徒の共有された生活。モスク、教会、シナゴーグが並んで存在し」、ローマ・カトリックのクロアチア人・東方正教のセルビア人・セファルディムのユダヤ人がボスニア人=ムスリムとともに四世紀を超えて生きた。建築の達成は「物理の寸法ではほとんど控えめだが、その人々の文化の歴史にとって相当の重要さを持つ」。完全性は「戦前の外観と特徴に従って、垂直と水平の寸法、形、尺度、物質化を維持すること」によって達成されたとし、無形のもの(とくに象徴の力)も「現地に存在する」要素に数える。より古い中世の橋の考古の発見が、古い橋とほとんど同じ位置にある。真正性は「再建はまったく隠されていない」とし、残っている元の材料は博物館に展示され「再建の不可分の一部になっている」。「橋の織物の再建は、この資産の無形の次元の修復への背景として見られるべきである。」建築の真正性は「現代の理論と実践の適用」によって達成され、「異なる歴史の層と以前の修復の仕事への尊重」をもって元の構造の思想と原則に忠実なままだった。法令は三つで、1985年のものは「社会主義共和国(SR)」の名を持つ(旧ユーゴ時代の法律がいまも並ぶ)。モスタルの歴史的都市区域が「登録資産の区域に対応する境界」を伴って国定記念物として登載された。管理計画は「実施されてきた」もので、四つの部分(統治、財政、計画と実施。2001年のマスタープランを含む)からなり、「地元の共同体の条件と生活の質を改善することにおける資産の積極的な役割」も際立たせる。マスタープランは連邦政府が採択。運用はモスタル市議会が設けた機構「スタリ・グラード」が担い、連邦記念物保護研究所と緊密に協力する。財源は連邦政府とモスタル市。「開発の圧力が……完全性の条件と保全を脅かさないことを実効的に確保することに課題が残っている。」一覧下部は保存状況報告6年分(2006-2011年。2012年以降は記載なし)、GIS 未受領、タブに `Assistance`。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで2通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
無形文化遺産別の条約のもの。要素の名は資産の名と違うことが多い「無形のもの(とくにその象徴の力)を含めて」
戦争・紛争戦争が、登録の理由・真正性・完全性のどこに出るか「再建はまったく隠されていない」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:モスタル946 の基準(vi)が、価値の根拠としていることは?

  1. 古い橋とその周囲の「ルネサンス」とともに、共同体の共存の象徴としての象徴の力と意味が補強され強められてきたこと
  2. 16世紀に建てられた橋が、紛争を経ても破壊されずに残ったこと
  3. 橋が当時の最先端の技術で造られたこと
  4. 古い橋とその周囲の「ルネサンス」とともに象徴の力が強められてきたことだが、再建された部分は基準の対象から外されている
正解と解説を開く

正解:1.古い橋とその周囲の「ルネサンス」とともに、共同体の共存の象徴としての象徴の力と意味が補強され強められてきたこと

> 古い橋とその周囲の「ルネサンス」とともに、モスタル市の象徴の力と意味……が補強され強められてきた。それは、圧倒的な破局に直面しての、平和のための人の連帯と力強い協力の限りない努力を際立たせている。再建される前の姿ではなく、再建されたことが基準(vi)の根拠として書かれる資産で、215件でここだけです。橋は1990年代の紛争で破壊され、2004年に再建されました。再建された部分を外すという記述はありません。

確認2:モスタル946 の古い橋の設計者は、一次資料にどう書かれているか?

  1. 説明文と概要のどちらも「シナン」と書いている
  2. 説明文は「シナン」、概要は「ミマール・ハイルッディーン」(師ミマール・シナンの設計に従って)
  3. 設計者は分かっていないと書かれている
  4. 説明文は「ミマール・ハイルッディーン」、概要は「シナン」と、入れ替わった形で書かれており、概要のほうが新しい研究を反映している
正解と解説を開く

正解:2.説明文は「シナン」、概要は「ミマール・ハイルッディーン」(師ミマール・シナンの設計に従って)

説明文——「名高い建築家シナンによって設計された」古い橋。概要——「名高い建築家、ミマール・ハイルッディーンによって設計された傑作(彼の師である偉大な建築家ミマール・シナンの設計に従って)」。どちらかに決めず、両方を記録します。なお紛争の年も「1990年代」(説明文)と「1990年」(概要)で違い、再建は説明文「最近」/概要「2004年」です。

確認3:モスタル946 の真正性の節が、再建について書いていることは?

  1. 再建された部分は元の部分と見分けがつかないように仕上げられている
  2. 元の材料はすべて再建に使われ、博物館には何も残されていない
  3. 再建はまったく隠されておらず、残っている元の材料は博物館に展示されて再建の不可分の一部になっている
  4. 再建はまったく隠されておらず、残っている元の材料は橋の上に並べて展示され、博物館には複製だけが置かれている
正解と解説を開く

正解:3.再建はまったく隠されておらず、残っている元の材料は博物館に展示されて再建の不可分の一部になっている

> 形の真正性、真正な材料と技法の使用は十分に認識できる一方で、再建はまったく隠されていない。残っている元の材料は博物館に展示され、再建の不可分の一部になっている。再建であることを隠さないことが、真正性の説明に入ります。元の部材は橋の上ではなく博物館にあり、それが「再建の一部」とされます。さらに「橋の織物の再建は、この資産の無形の次元の修復への背景として見られるべきである」とも書かれます。

確認4:モスタル946 の管理計画について、保護管理の節が書いていることは?

  1. まだ起草されていない
  2. 起草されたが承認を待っている
  3. 実施されてきたもので、四つの部分からなるが、マスタープランは別の文書として未採択で、採択の時期も書かれていない
  4. 実施されてきたもので、統治・財政・計画と実施の四つの部分からなり、2001年のマスタープランを含む
正解と解説を開く

正解:4.実施されてきたもので、統治・財政・計画と実施の四つの部分からなり、2001年のマスタープランを含む

> 管理の点では、モスタル旧市街のための管理計画が実施されてきた。この文書は四つの部分(統治、財政、計画と実施。2001年のマスタープランを含む)からなり……マスタープランは管理計画の中に含まれ、さらに「マスタープランがボスニア・ヘルツェゴビナ連邦政府によって採択された」とも書かれます。17章のドーラヴィーラ1645 は「承認され実施されている」で、モスタル946 は部分の名まで書かれます。

参考資料

確認日:2026年10月28日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。