基本を学ぶ
どこにあり、何が登録されたのか
ミクロネシア連邦。ポンペイ島の南東岸沖に100を超える小島。玄武岩とサンゴの巨石の壁で築かれています。
これらの小島が1200年から1500年のあいだに建てられた石の宮殿・神殿・墓所・居住域の遺構を抱えています。
サウデロール朝の祭祀中心で、太平洋の島嶼文化の生気に満ちた時代——1200-1500年に定住と社会組織の劇的な変化を経た時代——を表すとされます。
いまの首長制度につながっている
考古遺構を通じて、ナン・マドールはポンペイの継続する社会的・祭祀的な伝統とナーンムワルキ(Nahnmwarki)の権威に物として結びついている。
| 基準 | 対象 |
|---|---|
| (i) | 際立った記念碑的な巨石建築。島のほかの場所の採石場から運ばれた巨大な柱状玄武岩を用いた壁の構築で、独特な「ヘッダー・ストレッチャー技法」で積まれている |
| (iii) | 太平洋諸島における首長制社会の発展の例外的な証。巨大な規模・技術的な洗練・精巧な巨石構造の集中が、島嶼社会の複雑な社会的・宗教的な慣行を証する |
| (iv) | 首長の住居・儀礼/祭祀の場・墓所の構造・生活の場が合わさって、約1000年前からの首長制社会の発展の時代を示す記念碑的な祭祀中心の際立った例。島の人口の増加と農業の集約化に結びつく |
| (vi) | 太平洋諸島における伝統的な首長の制度と統治の仕組みの元来の発展の表現で、それはナーンムワルキの制度という形でいまに続いており、ナン・マドールはその下で伝統的に所有され管理されている |
基準(vi)が「いまも伝統的に所有され管理されていること」に対して認められています。
登録の範囲 — 登録と同時に危機遺産
| 本体 | 76.7 ha |
|---|---|
| 緩衝地帯 | 664 ha |
| 登録 | 2016年、基準 (i)(iii)(iv)(vi) |
| 危機遺産 | 2016年から現在まで |
登録された年から危機遺産です。4章のバッティール(1492・2014年登録と同時)と同じ型です。
説明文に理由が書かれています。
脅威のため、とくに水路の埋没(siltation)がマングローブの抑制されない成長に寄与し、既存の建造物を弱めていることのために、この遺跡は危機遺産リストにも記載された。
水路が埋まる → マングローブが育つ → 石の構造が壊れる。この章では珍しい、自然の過程が壊していく型の脅威です。
完全性と真正性 — どちらも「脆弱」と書かれている
完全性
資産は顕著な普遍的価値を表すのに必要なすべての要素を含み、重要性を伝える特徴と過程の完全な表現を確かにする十分な大きさとされます。
開発や改変による侵入的な要素は無く、元来の要素の復元も行われていない。
「復元が行われていない」ことが積極的に書かれています。マサダ(1040)やティムリチ・オヒンガ(1450)と並べて読めます。
1820年代までに居住目的での利用が止まったため、宗教的・伝統的な意義は保ちながら、資産は植生の繁茂・高潮の影響・一部の石積みの崩落に苦しんでいる。石の構造物の保存状態はいまきわめて懸念されるものであり、資産の完全性を脆弱なものにしている。
真正性
資産は立地と環境・無形文化・精神と感性・材料・形と意匠の点で真正である。 石の構造物の繁茂とその保存状態は、それらの多くが見られない状態にあることを意味し、真正性を脆弱なものにしている。
「見られない」ことが真正性を脆くしています。
パパハナウモクアケア(1326)の真正性が配置が意味を明らかに示す能力にかかっていたのと同じ型です。ナン・マドールは、草に覆われて見えないこと自体が真正性の問題になっています。
作業指針第82項の属性で言うと、「材料と材質」「形と意匠」「立地と環境」「精神と感性」「言語その他の無形遺産の形態」の五つが名指しされています。
誰が守っているか — 法と、首長の慣習
法の三層
| 層 | 中身 |
|---|---|
| 連邦 | 連邦政府が法的に保護し、ミクロネシア連邦(FSM)の歴史保存局を通じて国立公文書・文化・歴史保存局(NACH)が管轄 |
| 州 | ポンペイ歴史・文化保存法(2002年)のもとでポンペイ州政府が保護し、ポンペイ歴史保存局が管轄 |
| 慣習 | FSM 憲法が伝統的な首長の慣習上の利益を認めており、資産はナーンムワルキ・マドレニームウによって慣習的に保護されている |
憲法が慣習上の利益を認めているという点が、この章のほかの資産と違います。ティムリチ・オヒンガ(1450)は長老のタブーが法を補強、大ジンバブエ(364)は伝統的な障壁が守っているでした。ナン・マドールは憲法に書かれています。
登録時点で進行中だったこと
関係者すべて(伝統的な所有者を含む)を交えた管理委員会が設けられています。そしてこの協働は、法案 LB 392 の成立(2016年10月に成立見込みと書かれている)によって固められる予定とされます。それはナン・マドール歴史保存信託を創設し、所有と管理をナーンムワルキ首長の伝統的な監督の下に置くものです。
管理計画は、国際的な財政的・技術的な援助を得て2017年半ばまでに完成する見込みである。
それには文化資源管理の訓練を受けた専任の資産管理者の任命と、危機への備え・保全・観光の戦略、そして継続的な維持と監視の計画が含まれるとされます。
登録の時点で、管理計画も信託も法案も「これから」でした。この章と4章を通じて、登録は管理の完成を待たないという読み方が繰り返し出てきます(紅河1111・バッティール1492・ケルソネソス1411・メイマンド1423・大ジンバブエ364)。
2級で押さえること
基準が四つ((i)(iii)(iv)(vi))で、(vi) は「いまもナーンムワルキの制度の下で伝統的に所有され管理されていること」に対して認められている。登録と同時に危機遺産(2016年〜)。理由は水路の埋没 → マングローブの成長 → 石の構造が壊れるという、この章では珍しい自然の過程が壊していく型の脅威。「元来の要素の復元は行われていない」と積極的に書かれている。完全性も真正性も「脆弱」とされ、真正性の理由は繁茂で多くが見られない状態にあること。FSM 憲法が伝統的な首長の慣習上の利益を認めている(長老のタブーや伝統的障壁より一段強い書き方)。登録の時点で管理計画・信託・法案がすべて「これから」だった。
準1級
準1級向けに理解を深める
準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。
この遺産が出てくるキーワード
| キーワード | このキーワードで見るもの | 本文の手がかり |
|---|---|---|
| 巨石記念物 | 巨石が、その資産でどんな扱いを受けているか | 「玄武岩とサンゴの巨石の壁」 |
いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。
準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。
キーワードで練習する
級別の確認問題
2級 確認問題
答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。
確認1:ナン・マドールが登録と同時に危機遺産になった理由として説明文に書かれているものは?
- 高潮による石積みの崩落が進んでいること
- 盗掘によって巨石が持ち去られていること
- 居住目的での利用が1820年代に止まったため、伝統的な維持の慣行が完全に途絶えたこと
- 水路の埋没がマングローブの抑制されない成長に寄与し、既存の建造物を弱めていること
正解と解説を開く
正解:4.水路の埋没がマングローブの抑制されない成長に寄与し、既存の建造物を弱めていること
> 脅威のため、とくに水路の埋没(siltation)がマングローブの抑制されない成長に寄与し、既存の建造物を弱めていることのために、この遺跡は危機遺産リストにも記載された。水路が埋まる → マングローブが育つ → 石の構造が壊れる。この章では珍しい自然の過程が壊していく型の脅威です。高潮と石積みの崩落は完全性の節に別に挙げられています。
確認2:ナン・マドールの真正性が「脆弱」とされている理由は?
- 元来の要素の復元が不適切に行われたこと
- 石の構造物の繁茂と保存状態のため、その多くが見られない状態にあること
- 無形文化と精神と感性の面で真正性が失われたこと
- 1820年代の居住の終了によって、立地と環境の真正性と無形文化の真正性がどちらも失われたこと
正解と解説を開く
正解:2.石の構造物の繁茂と保存状態のため、その多くが見られない状態にあること
> 資産は立地と環境・無形文化・精神と感性・材料・形と意匠の点で真正である。> 石の構造物の繁茂とその保存状態は、それらの多くが見られない状態にあることを意味し、真正性を脆弱なものにしている。「見られない」ことが真正性を脆くしています。なお完全性の節には元来の要素の復元は行われていないと書かれています。
確認3:ナン・マドールの保護で、伝統的な首長の権限についてUNESCO が書いていることは?
- 伝統的な首長の権限は法的な根拠を持たない
- 州の歴史保存局が首長の権限を代行している
- FSM 憲法が伝統的な首長の慣習上の利益を認めており、資産はナーンムワルキ・マドレニームウによって慣習的に保護されている
- 伝統的な首長の権限は法案 LB 392 の成立によって初めて法的な根拠を得る予定で、それまでは慣習上の扱いにとどまるとされる
正解と解説を開く
正解:3.FSM 憲法が伝統的な首長の慣習上の利益を認めており、資産はナーンムワルキ・マドレニームウによって慣習的に保護されている
FSM 憲法が伝統的な首長の慣習上の利益を認めており、資産はナーンムワルキ・マドレニームウによって慣習的に保護されているとされます。憲法に書かれている点が、この章のほかの資産と違います(ティムリチ・オヒンガ1450 は長老のタブーが法を補強、大ジンバブエ364 は伝統的な障壁が守っている)。法案 LB 392 はナン・マドール歴史保存信託を創設し、所有と管理を首長の伝統的な監督の下に置くためのものです。
確認4:ナン・マドールの登録時点(2016年)の管理の状態について正しいものは?
- 管理委員会は設けられていたが、信託を創設する法案も管理計画もまだ成立・完成していなかった
- 管理計画・信託・法案のすべてが整っていた
- 管理委員会も管理計画も存在しなかった
- 管理計画は完成していたが、専任の資産管理者がまだ任命されておらず、危機への備えの戦略も作られていなかった
正解と解説を開く
正解:1.管理委員会は設けられていたが、信託を創設する法案も管理計画もまだ成立・完成していなかった
関係者すべてを交えた管理委員会は設けられていましたが、法案 LB 392 は「2016年10月に成立見込み」と書かれ、管理計画は「2017年半ばまでに完成する見込み」とされていました。専任の資産管理者の任命も管理計画に含まれる予定のものです。登録は管理の完成を待たない——紅河1111・バッティール1492・ケルソネソス1411・メイマンド1423・大ジンバブエ364 と同じ読み方です。
参考資料
確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。