基本を学ぶ
どこにあり、何が登録されたのか — パンタナルの1.3%
ブラジル中西部の西の端、マト・グロッソ州の南西の隅。四つの保護区域のまとまりです。
| 本体 | 187,818 ha |
|---|---|
| 緩衝地帯 | 一覧に行が無い |
| 登録 | 2000年、基準 (vii)(ix)(x)=3つ |
| dossier | 999(bis / ter / rev なし) |
| シリアル | 一覧に `Serial` の行が無い。本文は四つの保護区域のまとまりと書く |
| 保存状況報告 | 3年分(2021・2023・2025年) |
| ほかの保全の仕組み | 2つの仕組み / 2要素——生物圏保存地域(Pantanal)/ラムサール(Pantanal Matogrossense) |
| `Activities` | 1件(Rapid Response Facility=緊急対応機構) |
四つの構成
| 構成 | |
|---|---|
| パンタナル・マトグロッセンセ国立公園 | もっとも厳格な完全な保護 |
| アクリザル特別保護区 | — |
| ペーニャ特別保護区 | — |
| ドロシェ特別保護区 | — |
本文は「四つの隣接する保護区域」と書きます。一覧に構成資産の表は無いので、個々の面積は未確認のままにします。
登録範囲はパンタナルの1.3%
| パンタナル地域の広さ | 約14,000,000 ha(「世界最大の淡水湿地の生態系の一つ」) |
|---|---|
| 資産 | 187,818 ha |
| 割合 | 1.3%(説明文) |
「パンタナルが世界遺産」ではありません。パンタナルの1.3%が登録されています。分母は「ブラジルのパンタナル地域」で、「世界の湿地」ではありません。
一次資料が、資産の名前そのものに疑問を書く
保護管理の節に、こう書かれます。
この「パンタナル保護地域(Pantanal Conservation Area)」と題された資産は、実のところ広大な生態系のごく小さな部分である。たとえば、パンタナルの北の部分はきわめて異なっており、したがってこの資産はパンタナル全体を完全に代表するものではない。
一次資料が、自分の資産の名前が指すものと登録範囲のずれを書く資産は、これまで読んだ221件でここだけです。
ただし「名前が誤り」とは書いていません。「完全に代表するものではない」までです。書かれていない評価を足しません。
続きに、拡張の勧めが書かれる
ブラジルの法制に、その自然の資源の保全を改善するための「モザイク(mosaics)」の道具が施行されたいま、「パンタナル保護地域」が、隣接する諸国の領土にある同じ生態系の部分と国境を越える資産を形づくるようにどう拡張されうるかを調べるために、この資産を見直すことが望ましいだろう。
一次資料が資産そのものの見直しを促す書き方です。「国境を越える資産になる予定」ではなく「望ましいだろう」までです。
登録後の文書に「提案された資産」という語が残る
完全性の節に、こう書かれます。
提案された遺跡(the proposed site)の周りには、いくつかの放棄された私有地があり、それが資産に追加の保護を確かにしうることに注意すべきである。より広い区域が資産に含めるために得られれば、遺跡の完全性は改善されるだろう。
2000年に登録された資産の顕著な普遍的価値の本文が、資産を「提案された遺跡」と呼びます。推薦のときの書き方がそのまま残ったものと読めますが、一次資料は理由を書いていないので推測しません。
三つの基準
| 基準 | 中身 |
|---|---|
| (vii) | アモラール山地に縁取られた湿地の景観。10月から4月の雨季に川があふれ広大な地域を冠水させ、水が引くと多数の小さな一時的な湖が残る。オオオニバスの群れが半乾燥地域の巨大なサボテンの近くに育つのが見られる |
| (ix) | 「縮小された尺度で、この遺跡はパンタナルにおける進行中の生態と生物の過程の模型(model)である」。セラード・アマゾン・チャコ・大西洋の生態系の影響を受ける。洪水期に大型哺乳類が平原から高く乾いた地域へ移動し、きわめて厳しい乾季には平原が地域で唯一湿ったままの区域になりうる |
| (x) | 哺乳類約80種・鳥650種・爬虫類50種・魚300種。オオアルマジロ・オオアリクイ・オオカワウソ・ヌマジカ・スミレコンゴウインコ(オウムで最大の種)。ジャガーの個体群は「おそらくパンタナル地域全体で最大」 |
アモラール山地は最高で標高900 mで、「季節的に冠水する区域と山地の移行は急である」「この生態の勾配はパンタナル地域全体に唯一のもの」と書かれます。
数はぼかして書かれます——「約80種」「おそらく最大」。
完全性と保護管理 — 直すべきものが資産の外にある
完全性
「パンタナル保護地域の大きさは明確に定められ、長期の生物多様性の保全のための重要な生態と生物の過程の維持に十分である」。そのうえで「パンタナルの脆弱性の度合いは高い」とされます。
| 人の営みとして挙げられるもの |
|---|
| 浚渫/過剰な漁業/森林破壊/激しい侵食/廃水/廃棄物/水力の変化をもたらすダム/水路の人工化 |
構成要素によって受け方が違います——国立公園とドロシェ保護区は負の人の活動に直接影響を受け、アクリザルとペーニャ保護区は影響が小さいが、その氾濫地域はこれらの影響を受ける。
保護管理 — 法ではなく政令
| 保護 | 国立公園と特別保護区は連邦政府の政令(federal government decrees)によって保護される |
|---|---|
| 管理(国立公園) | ICMBio(シコ・メンデス生物多様性保全研究所)。環境省に属する自律した連邦の機関 |
| 管理(特別保護区) | エコトロピカ財団が1998年から管理計画を実施 |
「法(law)」ではなく「政令(decree)」と書かれます。
計画が四つ並び、まとめる計画は「望ましい」
| 年 | 計画 |
|---|---|
| 1994年 | 緊急行動計画 |
| 1997年 | 研究計画 |
| 2004年 | 管理計画(国立公園) |
| 1998年から | エコトロピカ財団の管理計画(特別保護区) |
| 未作成 | 「資産のすべての構成要素のための統合された管理計画が望ましい(advisable)」 |
計画が四つあっても、全体を一つにまとめた計画は無いという書き方です。
価値を保つ鍵が資産の外にある
資産の長期の完全性は、パンタナル複合体の水文の体制の維持に依存する。この地域における航行可能な水路の建設の計画やほかの似た事業は、パンタナル全体への現実の脅威をなす。
187,818 ha の資産の完全性が、約14,000,000 ha の複合体の水の動きに依存すると書かれます。
密猟も内と外で書き分けられます——「野生動物の密猟とその違法な商取引は資産の内側では統制されてきたが、カイマン、ジャガー、オウムのような種への圧力は資産の外側で続いている」。ほかに違法なスポーツ漁業・巣の場所の攪乱・「豪奢な品への要求(汚染源)」が挙げられます。
2級で押さえること
本体187,818 ha/緩衝地帯は一覧に行が無い、2000年登録、基準(vii)(ix)(x)=3つ、dossier 999(bis / ter / rev なし)、一覧に `Serial` の行が無いが本文は四つの隣接する保護区域のまとまりと書く(パンタナル・マトグロッセンセ国立公園+アクリザル・ペーニャ・ドロシェの三つの特別保護区)、保存状況報告3年分(2021・2023・2025年)、`Activities` が1件(Rapid Response Facility)。登録範囲はパンタナル地域(約14,000,000 ha)の1.3%——「パンタナルが世界遺産」ではない。分母は「ブラジルのパンタナル地域」で「世界の湿地」ではない。一次資料が、自分の資産の名前が指すものと登録範囲のずれを書く——「この『パンタナル保護地域』と題された資産は、実のところ広大な生態系のごく小さな部分である。たとえば、パンタナルの北の部分はきわめて異なっており、したがってこの資産はパンタナル全体を完全に代表するものではない」。221件でここだけ。ただし「名前が誤り」とは書いていないので、書かれていない評価を足さない。続きに「ブラジルの法制に『モザイク』の道具が施行されたいま、隣接する諸国の領土にある同じ生態系の部分と国境を越える資産を形づくるようにどう拡張されうるかを調べるために、この資産を見直すことが望ましいだろう」と、資産そのものの見直しが促される。「予定」ではなく「望ましいだろう」まで。登録後の文書に「提案された遺跡(the proposed site)」という語が残る——完全性の節が、2000年に登録済みの資産を推薦のときの語で呼ぶ。理由は書かれていないので推測しない。基準(vii)はアモラール山地(最高標高900 m)に縁取られた湿地の景観で、10月から4月の雨季に川があふれ、水が引くと多数の小さな一時的な湖が残る。オオオニバスの群れが半乾燥地域の巨大なサボテンの近くに育つ。「季節的に冠水する区域と山地の移行は急である」「この生態の勾配はパンタナル地域全体に唯一のもの」。基準(ix)は「縮小された尺度で、この遺跡はパンタナルにおける進行中の生態と生物の過程の模型である」。洪水期に大型哺乳類が平原から高く乾いた地域へ移動し、きわめて厳しい乾季には平原が地域で唯一湿ったままの区域になりうる。基準(x)は哺乳類約80種・鳥650種・爬虫類50種・魚300種。オオアルマジロ・オオアリクイ・オオカワウソ・ヌマジカ・スミレコンゴウインコ(オウムで最大の種)。ジャガーの個体群は「おそらくパンタナル地域全体で最大」で、数はぼかして書かれる。完全性は「大きさは明確に定められ十分である」としたうえで「脆弱性の度合いは高い」と書き、浚渫・過剰な漁業・森林破壊・激しい侵食・廃水・廃棄物・ダム・水路の人工化を並べる。構成要素によって受け方が違い、国立公園とドロシェ保護区は直接影響を受け、アクリザルとペーニャは影響が小さいがその氾濫地域は影響を受ける。保護は「法」ではなく連邦政府の政令による。国立公園の管理は ICMBio(シコ・メンデス生物多様性保全研究所。環境省に属する自律した連邦の機関)、特別保護区はエコトロピカ財団が1998年から管理計画を実施。計画が四つ並ぶのに、全体をまとめた計画は無い——1994年の緊急行動計画・1997年の研究計画・2004年の管理計画・1998年からのエコトロピカ財団の管理計画があり、「資産のすべての構成要素のための統合された管理計画が望ましい」で止まる。価値を保つ鍵が資産の外にある——「資産の長期の完全性は、パンタナル複合体の水文の体制の維持に依存する。この地域における航行可能な水路の建設の計画やほかの似た事業は、パンタナル全体への現実の脅威をなす」。187,818 ha の完全性が約14,000,000 ha の複合体の水の動きに依存する。密猟も内と外で書き分けられる——「野生動物の密猟とその違法な商取引は資産の内側では統制されてきたが、カイマン、ジャガー、オウムのような種への圧力は資産の外側で続いている」。ほかに違法なスポーツ漁業・巣の場所の攪乱・「豪奢な品への要求(汚染源)」。
準1級
準1級向けに理解を深める
準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。
この遺産が出てくるキーワード
| キーワード | このキーワードで見るもの | 本文の手がかり |
|---|---|---|
| 密猟 | 脅威の順位・内と外・止められたという書き方 | 「資産の内側では統制されてきた」 |
いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。
準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。
キーワードで練習する
級別の確認問題
2級 確認問題
答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。
確認1:パンタナル自然保護区の名前について、UNESCO のページの保護管理の節に書かれているのは?
- 資産の名前については何も書かれていない
- 「パンタナル保護地域」という名前は、資産の登録範囲とパンタナル地域全体の範囲が一致することを示すために世界遺産委員会が選んだものであり、両者を同じものとして扱ってよいと書かれている
- 「この『パンタナル保護地域』と題された資産は、実のところ広大な生態系のごく小さな部分である」
- 「パンタナル保護地域」という名前は誤りであり、次の委員会で改称されることが決まっていると書かれている
正解と解説を開く
正解:3.「この『パンタナル保護地域』と題された資産は、実のところ広大な生態系のごく小さな部分である」
一次資料が、自分の資産の名前が指すものと登録範囲のずれを書く例です。ただし「名前が誤り」とは書いていません。「パンタナル全体を完全に代表するものではない」までなので、書かれていない評価を足しません。
確認2:パンタナル自然保護区の完全性の節が、資産を呼ぶときに使っている語は?
- 「提案された遺跡(the proposed site)」
- 資産を指す語は使われていない
- 「候補の遺跡(the candidate site)」という語が使われ、推薦の段階の文書であることが節の冒頭に明記されている
- 「暫定一覧の遺跡(the tentative list site)」という語が使われ、本登録ではないことが示されている
正解と解説を開く
正解:1.「提案された遺跡(the proposed site)」
2000年に登録された資産の顕著な普遍的価値の本文が、推薦のときの語で資産を呼びます。推薦の書き方がそのまま残ったものと読めますが、一次資料は理由を書いていないので推測しません。
確認3:パンタナル自然保護区の登録範囲とパンタナル地域の関係として、説明文に書かれているのは?
- 資産とパンタナル地域の関係は書かれていない
- 資産はパンタナル地域のほぼ全体にあたり、地域の外に残る湿地はごくわずかであると書かれている
- 資産はパンタナル地域の約半分にあたり、残りの半分は隣接する二つの国の領土のなかにあると書かれている
- 資産はパンタナル地域の1.3%にあたる
正解と解説を開く
正解:4.資産はパンタナル地域の1.3%にあたる
割合は分母が分かってはじめて意味を持ちます。ここでの分母は「ブラジルのパンタナル地域」(約14,000,000 ha)で、「世界の湿地」ではありません。
確認4:パンタナル自然保護区の管理計画について、保護管理の節に書かれているのは?
- 管理計画については書かれていない
- 計画は四つあるが、すべての構成要素のための統合された管理計画は「望ましい」とされる
- すべての構成要素のための統合された管理計画が1994年に作られ、以後は三年ごとに改訂され続けていると書かれている
- 国立公園にも特別保護区にも計画は無く、最初の計画の作成がこれから始まると書かれている
正解と解説を開く
正解:2.計画は四つあるが、すべての構成要素のための統合された管理計画は「望ましい」とされる
計画がいくつもあることと、全体を一つにまとめた計画があることは別です。「望ましい(advisable)」は、まだ無いという書き方です。
参考資料
確認日:2026年10月28日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。