基本を学ぶ
どこにあり、何が登録されたのか — 四つの教会
フィリピン。四つのローマ・カトリック教会がフィリピン諸島の別々の区域にあります。
| 教会の数 | 4 |
|---|---|
| 場所 | ルソン島北部に2、マニラのイントラムロスの中心に1、中部ビサヤのイロイロに1 |
| 登録 | 1993年、基準 (ii)(iv) |
| 軽微な範囲変更 | 2013年 |
| 一覧の面積 | 行が無い |
| 緩衝地帯 | 一覧に数値が無い(完全性の節に「近年の緩衝区域の画定」の記述あり) |
| dossier | 677bis |
| 連続性資産 | はい(Serial: yes) |
説明文が挙げる所在地は マニラ、サンタ・マリア、パオアイ、ミアガオ です。
この資産には基準(vi)が付いていません。
要塞のような外観
教会の共通かつ固有の属性は、そのずんぐりした、記念碑的で巨大な外観である。それは、海賊・略奪者への、また地震活動の起きやすい国の地質条件への応答として、要塞/防護のような性格を示している。
海賊と地震の両方への応答として、同じ外観が説明されています。
| 材料 | |
|---|---|
| 石 | 凝灰岩またはサンゴ質石灰岩 |
| あるいは | 煉瓦 |
| 固め | 石灰で固めた |
融合の具体例
| 特徴 | とくに見られる教会 |
|---|---|
| 高いバロック様式のレタブロ(祭壇) | サン・アグスティン教会(イントラムロス) |
| コントラフエルテ(控え壁)の渦形と壁ファサードの角錐の頂飾 | パオアイ教会 |
| クリプトコラテラル礼拝堂を分ける壁の控え壁 | サン・アグスティン教会 |
| 素朴/民俗の破風の図像(パパイヤ、ココナツ、ヤシの木の浮彫という在地の要素と、在地の伝統的な衣服を着た守護聖人(聖クリストフォロス)) | ミアガオ教会 |
| 鐘塔が本体に付く | サン・アグスティン、ミアガオ |
| 鐘塔が本体から離れる | パオアイ、サンタ・マリア |
| トロンプ・ルイユ様式の天井画 | サン・アグスティン教会 |
「キリストの生涯の在地の理解を表す」破風の図像に、パパイヤ・ココナツ・ヤシが彫られています。
インディアス法に従っている
バロック教会は、1563年にフェリペ2世がスペイン植民地領内のすべての新発見の集落のために制定した「インディアス法(Ley de las Indias)」に従う優れた敷地計画の原則を映している。
同じ法が、この章のサント・ドミンゴ526 の基準(vi)にも出てきます(最初のインディアス法が宣され施行された)。一方は「従っている」、一方は「宣された場所」です。
基準(ii)(iv) — 新しい教会建築の伝統
| 基準 | 中身 |
|---|---|
| (ii) | 教会の群は、フィリピンの物理的な条件に適応した建築と設計の様式を確立し、それがこの地域ののちの教会建築に重要な影響を与えた |
| (iv) | ヨーロッパの教会の設計と建造を、在地の材料と装飾のモチーフを使って融合させ、新しい教会建築の伝統を形づくったことを表す |
どちらも Brief synthesis の文とほぼ同じです。
基準の文が本文の繰り返しになっている資産は、これまでにもありました——ポトシ420(基準(ii)(iv)(vi)がいずれもBrief synthesis と重なる)。
「周縁のバロック様式」
真正性の節は、この四つの教会を「周縁のバロック様式(Peripheral Baroque Style)」と呼びます。
この章では、バロックの呼び名が資産ごとに違います。
| 遺産 | 呼び名 |
|---|---|
| フィリピンのバロック教会群677 | 周縁のバロック様式 |
| ポトシ420 | アンデス・バロック |
| グアナフアト482 | メキシコのチュリゲレスコ様式 |
| クスコ273 | プラテレスコ、ムデハル、チュリゲレスコの様式とインカの伝統との「不可能な融合」 |
| ゴア234 | マヌエル、マニエリスム、バロック(インド・ポルトガル様式の根) |
「バロック」と一語で片づけず、どの語が使われているかを読みます。
完全性と真正性 — 緩衝地帯が後から画定された
完全性
教会の重要な属性——その建築アンサンブルをなし、その様式の唯一無二さを現すもの——は、すべて資産の境界内にある。登録のときに同定された意義のあるすべての要素がいまもきわめて確かに存在し、どれも損なわれておらず、宗教的な意義に結びついたその動的な機能は無傷でよく維持されている。
教会の生地は、相当な程度よく保存されている。ただし一部は、環境の条件と時の経過のため劣化したかもしれない。
「かもしれない(may have)」という推量形です。
緩衝地帯は登録時に未定義だった
教会とその周囲の複合が覆う区域は登録のときに認められていたが、そのいくつかで緩衝地帯は未定義だった。近年の緩衝区域の画定が、当初同定された核に保護の層を加えている。
登録後に緩衝地帯が画定された資産です。
この章では、緩衝地帯の状態がかなり違います。
| 遺産 | 緩衝地帯 |
|---|---|
| フィリピンのバロック教会群677 | 登録時は一部で未定義。近年画定された |
| グアナフアト482 | 一覧に行が無く、拡張の提案が審査中 |
| ポトシ420 | 一覧に数値があるが、画することが長期の必要 |
| クスコ273 | 一覧に数値があるが、法令は特定していない |
| ジェロニモス修道院263 | 103 ha。拡大が統合的な保護に決定的だった |
| グアラニーの布教施設群275 | 一覧に行が無い |
真正性 — 再建の可能性が脅威
「周縁のバロック様式」のフィリピンのバロック教会群は、16〜18世紀のスペイン植民期フィリピンの教会建築を映す、その真正な特徴と賞賛すべき建築技術を維持してきた。
資産への潜在的な脅威は、教会が信徒によく仕え続けることを確かにする努力の中で、登録のときに存在しなかった教会の元のアンサンブルの一部を再建する可能性である。
「再建の可能性」が脅威として書かれています。
これまで読んだ79件で、再建そのものが脅威として挙げられる例はここだけです。6章のカスビの王墓1022 は火災で失われた建物を「真正な更新」できるとされ、13章のラニ・キ・ヴァヴ922 は構造の安定のための点的な再建が必要だったと書かれていました。
責任ある修復と保全に向けた政府の努力が、バロック教会の元の材料と実質的な特徴の保持をもたらしてきた。 バロック教会がカトリック信仰の神の礼拝の行為に捧げられた恒久の聖なる場所として使われることは続いている。
誰が守っているか — 三者協定と、まだ承認されていない規則
所有が分かれている
三つの教会とその土地は、それぞれの単独法人(corporations sole)によって法的に所有・運営・管理され、一つ(サン・アグスティン、イントラムロス)はアウグスチノ会によって所有・管理されている。教会は伝統的に教会当局と教区民によって運営されてきた。
管理計画
個別の教会の管理計画は登録のときには作成されていなかったが、イントラムロスのサン・アグスティン教会はイントラムロス管理局の管理計画で覆われている。
四つのうち一つだけが管理計画で覆われています。
三つの機関と三者協定
| 機関 | 役割 |
|---|---|
| 国家文化芸術委員会(NCCA) | 全体の遺跡管理者 |
| 国立博物館(NM) | 保全・修復事業の実施者 |
| フィリピン国家歴史委員会(NHCP) | 保全・修復事業の実施者 |
| 教会当局 | 日々の管理 |
世界遺産資産と、そのほかの国の指定遺産のための保全と管理のための三者協定がある。三者協定の主たる当事者は、NCCA、NM、NHCP、そして教会当局である。
法
| 登録のとき | 大統領令260号と375号で国家文化財宝と国家歴史的ランドマークと宣言されていた |
|---|---|
| 現在 | RA 10066(国家遺産法)とRA 10086(NHCP法) |
| 2008年5月29日 | 聖座とフィリピン共和国のあいだの、フィリピンにおけるカトリック教会の文化遺産に関する「アコルド」が批准された |
| 教会法 | 教会の文化遺産資源の司牧的配慮に関する教会法もカトリック当局によって適用されている |
国の法と教会法の両方が適用されています。
まだ承認されていない規則
2009年フィリピン文化遺産法の施行規則(IRR)は、まだ承認の過程にあるが、世界遺産資産には最高の保全の基準が適用され、その真正性・完全性・顕著な普遍的価値は損なわれることを許されないと定めている。
まだ承認されていません。
交換した部分を見分けさせる
劣化した部分の交換を含む修理が行われる場合、交換された区域が元のものと区別されるように注意して行われる。
修復を見分けさせる方法が、また一つ増えました。
| 遺産 | 見分けさせ方 |
|---|---|
| マサダ1040 | 新しいモルタル目地に入れた黒い線 |
| ラニ・キ・ヴァヴ922 | 滑らかな表面と装飾の欠如 |
| フィリピンのバロック教会群677 | 交換された区域が元のものと区別されるように注意して行う |
| サント・ドミンゴ526 | 修復の介入は明らかなまま残っている |
| メルヴ886 | よく記録されており、戻すことが可能 |
在地の共同体
在地の共同体の関与が強く促されており、彼らは重要な関係者と考えられ、その見解が協議の過程で聴かれる。教会当局のすべての側面への関与は不可欠であり、彼らは資産の所有者として、自らの水準で保全が行われることを確かにするための合意の本質的な部分をもなしている。
2級で押さえること
基準(ii)(iv)で、(vi)が付いていない。四つのローマ・カトリック教会(ルソン島北部に2、マニラのイントラムロスに1、中部ビサヤのイロイロに1。説明文はマニラ、サンタ・マリア、パオアイ、ミアガオ)。2013年に軽微な範囲変更(dossier は 677bis)、連続性資産(Serial: yes)、一覧に面積・緩衝地帯の行が無い。ずんぐりした記念碑的で巨大な外観が、海賊・略奪者への、また地震活動の起きやすい国の地質条件への応答として、要塞/防護のような性格を示している。材料は凝灰岩またはサンゴ質石灰岩、あるいは煉瓦を石灰で固めたもの。ミアガオ教会の破風にパパイヤ・ココナツ・ヤシの木の浮彫と、在地の伝統的な衣服を着た聖クリストフォロス。鐘塔が本体に付く(サン・アグスティン、ミアガオ)/離れる(パオアイ、サンタ・マリア)。1563年にフェリペ2世が制定した「インディアス法」に従う敷地計画の原則を映す(サント・ドミンゴ526 は最初のインディアス法が宣された場所)。真正性の節は四つを「周縁のバロック様式」と呼ぶ。緩衝地帯は登録のとき一部で未定義で、近年画定された。潜在的な脅威は、登録のときに存在しなかった元のアンサンブルの一部を再建する可能性——再建そのものが脅威に挙がるのは79件でここだけ。三つの教会は単独法人が所有し、サン・アグスティンはアウグスチノ会が所有・管理する。個別の教会の管理計画は登録のときには無く、サン・アグスティンだけがイントラムロス管理局の管理計画で覆われている。NCCA(全体の遺跡管理者)・NM・NHCP・教会当局の三者協定。2008年に聖座とフィリピン共和国の「アコルド」が批准された。2009年文化遺産法の施行規則はまだ承認の過程にある。交換された区域は元のものと区別されるように注意して行う。
準1級
準1級向けに理解を深める
準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。
この遺産は、準1級のキーワードで3通りに出てきます
| キーワード | このキーワードで見るもの | 本文の手がかり |
|---|---|---|
| 海賊 | 海からの危険が、資産の説明にどう入るか | 「海賊・略奪者への、また地震活動の起きやすい国の地質条件への応答として」 |
| ヨーロッパの建築 | 様式の名が、移った先でどう変わるか | 「周縁のバロック様式(Peripheral Baroque Style)」 |
| 地震の被害 | 同じ地震でも、書かれる資産と書かれない資産がある | 「地震活動の起きやすい」 |
準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。
キーワードで練習する
級別の確認問題
2級 確認問題
答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。
確認1:フィリピンのバロック教会群の外観について、UNESCO の記述に合うものは?
- 軽快で装飾的な外観がヨーロッパのバロックをそのまま伝えている
- 外観についての記述は無い
- ずんぐりした記念碑的で巨大な外観が、海賊・略奪者への、また地震活動の起きやすい国の地質条件への応答として要塞のような性格を示している
- ずんぐりした巨大な外観が海賊・略奪者への応答として要塞のような性格を示しているが、地震活動への配慮は含まれていないと明確に書かれている
正解と解説を開く
正解:3.ずんぐりした記念碑的で巨大な外観が、海賊・略奪者への、また地震活動の起きやすい国の地質条件への応答として要塞のような性格を示している
> 教会の共通かつ固有の属性は、そのずんぐりした、記念碑的で巨大な外観である。それは、海賊・略奪者への、また地震活動の起きやすい国の地質条件への応答として、要塞/防護のような性格を示している。海賊と地震の両方への応答として、同じ外観が説明されています。真正性の節はこの様式を「周縁のバロック様式」と呼びます。
確認2:フィリピンのバロック教会群の緩衝地帯について、UNESCO の記述に合うものは?
- 登録のときにすべて画定されていた
- 緩衝地帯はいまも画定されていない
- 登録のときは一部で未定義だったが近年画定され、その数値はページ下部の一覧にも記載されている
- 登録のときは一部で未定義だったが、近年画定されて当初同定された核に保護の層を加えている
正解と解説を開く
正解:4.登録のときは一部で未定義だったが、近年画定されて当初同定された核に保護の層を加えている
> 教会とその周囲の複合が覆う区域は登録のときに認められていたが、そのいくつかで緩衝地帯は未定義だった。近年の緩衝区域の画定が、当初同定された核に保護の層を加えている。一覧に緩衝地帯の数値はありません(面積の行もありません)。
確認3:フィリピンのバロック教会群の真正性の節が挙げている潜在的な脅威は?
- 地震による倒壊
- 登録のときに存在しなかった教会の元のアンサンブルの一部を再建する可能性
- 来訪者の増加
- 登録のときに存在しなかった元のアンサンブルの一部を再建する可能性と、地震による倒壊の危険の両方
正解と解説を開く
正解:2.登録のときに存在しなかった教会の元のアンサンブルの一部を再建する可能性
> 資産への潜在的な脅威は、教会が信徒によく仕え続けることを確かにする努力の中で、登録のときに存在しなかった教会の元のアンサンブルの一部を再建する可能性である。地震は、要塞のような外観が応答した「地質条件」としてBrief synthesis に出てきますが、真正性の節の脅威ではありません。再建そのものが脅威に挙げられる例は、これまで読んだ79件でここだけです。
確認4:フィリピンのバロック教会群の管理計画について、UNESCO の記述に合うものは?
- 個別の教会の管理計画は登録のときには作成されておらず、サン・アグスティンだけがイントラムロス管理局の管理計画で覆われている
- 四つすべてに個別の管理計画がある
- 管理計画はまったく無い
- 個別の教会の管理計画は登録のときには作成されていなかったが、その後イントラムロス管理局を含む四つすべてについて作成され正式に承認された
正解と解説を開く
正解:1.個別の教会の管理計画は登録のときには作成されておらず、サン・アグスティンだけがイントラムロス管理局の管理計画で覆われている
> 個別の教会の管理計画は登録のときには作成されていなかったが、イントラムロスのサン・アグスティン教会はイントラムロス管理局の管理計画で覆われている。四つすべてについて作成されたという記述はありません。ほかにNCCA・NM・NHCP・教会当局の三者協定があり、2009年文化遺産法の施行規則はまだ承認の過程にあります。
参考資料
確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。