基本を学ぶ
どこにあり、何が登録されたのか — いま危機遺産リストにある
ボリビア、ポトシ県ポトシ。ボリビア・アンデスの氷のような孤独の中、標高4,000 m。
| 本体 | 2,210.93 ha |
|---|---|
| 緩衝地帯 | 2,217.81 ha(本体とほぼ同じ) |
| 登録 | 1987年、基準 (ii)(iv)(vi) |
| 軽微な範囲変更 | 2025年 |
| 危機遺産リスト | 2014年〜現在 |
| dossier | 420bis |
本体と緩衝地帯がほぼ同じ面積です。これまで読んだなかで、比が1倍に近い資産は少数です(リオ・デ・ジャネイロ1100 が約1.19倍)。
危機遺産リスト
これまで読んだ73件で、危機遺産リストに関わるのは4件になりました。
| 遺産 | 危機遺産リスト |
|---|---|
| ポトシ420 | 2014年〜現在 |
| 聖ヒラリオン修道院1749 | 2024年〜現在 |
| アブー・メナー90 | 2001年〜2025年(外れた) |
| ウィーンの歴史地区1033 | 2017年〜2026年(外れた) |
保全状況(SOC)報告は17年分(1993〜2026)です。
緩衝地帯の記述が一覧と合っていない
保護管理の節は、長期に必要とされることの最後に「資産の緩衝地帯を画すること」を挙げています。しかし一覧には緩衝地帯2,217.81 ha の数値があります。
2025年の軽微な範囲変更で設定されたと読めますが、本文がそれに合わせて更新されていません。どちらかに決めず、両方を記録します。
13章の聖ヒラリオン修道院1749 と同じ「一覧に数値があるのに本文がまだと書く」形です。
16世紀の世界最大の産業複合
ポトシは近代における主要な銀鉱山のもっとも優れた例であり、16世紀の世界最大の産業複合と評されていた。 前スペイン期の小さな集落だったポトシは、1572年のフランシスコ・デ・トレドの訪問に続いて「帝国都市」となった。 市の南のセロ・デ・ポトシで新世界最大の銀の鉱脈が発見されたのち、市とその地域は非常に繁栄した。
セビーリャと世界経済
スペインのための植民期の主要な銀の供給者として、ポトシはセビーリャへの貴金属の大量の輸入に直接かつ有形に結びついており、それがスペイン通貨の洪水を引き起こし、16世紀に世界的に重要な経済の変化をもたらした。
基準(vi)もこれと同じことを述べます。
社会の文脈が、川で分かれている
鉱山から王立造幣局までの産業の生産の連鎖の全体が保全されており、根底にある社会の文脈も同じようによく例証されている——スペインの入植者のための区画と、強制された労働者のための区画が、人工の川によって互いに隔てられている。
「人工の川によって隔てられている」はBrief synthesis と基準(iv)の両方に書かれています。
17世紀までに、16万人の入植者がポトシに住み、ミタ(強制労働)の制度のもとで鉱山で働くことを強いられた13,500人のインディオがいた。
技法と数
セロ・デ・ポトシは1580年以降に完全な生産能力に達した。そのとき、「パティオ」として知られるペルーで開発された鉱業の技法——銀鉱石の抽出が一連の水力の製粉機と水銀アマルガム法に依存するもの——が実施された。
| ラグーナ(貯水池) | 22 |
|---|---|
| インヘニオ(製粉機) | 140 |
| 窯 | 耐火の土の窯(ワイラ/グアイラ) |
| 高原とその谷の操業 | 約5,000 |
| 王立鉱山複合 | 約5,000のうちもっとも大きくもっともよく保存された |
| 教区または修道院の教会 | 22 |
貯水池から強制された水の流れが、銀鉱石を砕く140のインヘニオを動かす水力を生んだ。砕かれた鉱石は耐火の土の窯で水銀とアマルガム化され、棒に鋳造され、王立造幣局の刻印を打たれ、スペインに運ばれた。
カサ・デ・ラ・モネダ(王立造幣局)は1759年に再建されました。
これらの建造物の多くは、インディオの影響を取り込む「アンデス・バロック」様式である。この創意に富む建築は、当時の豊かな社会と宗教の生活を映しており、アンデス中央地域における建築と記念碑的芸術の発展に持続する影響を与えた。
基準(ii)がこれと同じことを述べます。
この活動は1800年以降に著しく緩やかになったが、いまも続いている。
真正性の節に「人命を守る」と書かれている
完全性
境界内に顕著な普遍的価値を表すのに必要なすべての要素がある——人工の湖の体系、鉱山、鉱物処理の製粉機、建築と都市の形、そして自然環境。「そのすべてがセロ・デ・ポトシの荘厳な存在によって支配されている。」
完全性の節に脅威が書かれていません。脅威は真正性の節に出てきます。
13章の雲岡石窟1039 は、完全性の節に脅威が無く保護管理の節に出てきました。ポトシ420 は真正性の節です。どの節に書かれているかを読みます。
真正性
ポトシ市はアンサンブルの形と意匠、材料と実体、立地と環境の点で本物である。いまも荘厳なセロ・デ・ポトシによって支配され、「帝国都市」ポトシの街路、広場、市民と宗教の建物、教区と教会は、その大きな壮麗の忠実な証人として残り、アメリカ大陸における鉱業の重要な歴史を語っている。
山が崩れている
セロ・デ・ポトシ(セロ・リコ=豊かな山、またはスマフ・オルコとも呼ばれる)の、続いている鉱業の操業による劣化が長く懸念されてきた。何百年もの鉱業が山を多孔質で不安定にしてきたためである。 ボリビア鉱業公社は、山の形・地形・自然環境の保全を、その将来の採掘のための目的の一つに含めた。 それでも、2005年の世界遺産センター/ICOMOS 技術調査団による、資産の安全と安定を改善するための勧告、および持続可能な鉱業活動を可能にするために必要なほかの条件は取り組まれず、山の頂上の一部が崩落した。 したがって資産の真正性は脅かされており、人命を守り、労働条件を改善し、資産のこの脆弱な構成要素のさらなる劣化を防ぐため、緊急で適切な行動が取られなければならない。
「人命を守り」が真正性の節に書かれています。
これまで読んだ73件で、顕著な普遍的価値の中に人命が出てくるのはここだけです。
「勧告が取り組まれず、山の頂上の一部が崩落した」という書き方も、原因と結果を結んでいます。
誰が守っているか — 参加型の管理計画が無い
法
| 法 | 年 |
|---|---|
| 国家政治憲法 第191条 | — |
| 国家記念物法 | 1927年5月8日 |
| 芸術・歴史・考古・記念物遺産に関する補完基準(最高政令第05918号) | 1961年11月6日 |
| ポトシの修復と価値付けのための国家委員会の創設(最高政令第15616号) | 1978年7月11日 |
| 国家文化財の保護に関する基準(政令法第15900号) | 1978年10月19日 |
| 法第600号——1979年に米州機構総会がポトシ市を「アメリカの記念物都市」と指定したことの実施に資金を出すため | 1984年2月23日 |
ポトシ歴史区域修復計画(PRAHP)とその規則、いくつもの研究も資産の保護を包含します。
管理計画が無い
「資産のための参加型の保全管理計画は無い。」
はっきり「無い」と書かれています。
この章で、管理計画について「無い」と書かれる資産は2件です。
| 遺産 | 書かれ方 |
|---|---|
| ポトシ420 | 「参加型の保全管理計画は無い」 |
| ゴア234 | 「世界遺産資産のための特別な規定は無く、管理計画も無い」 |
国際的な支援で修復している
修復作業は、UNESCO、米州機構、スペイン政府、ドイツ連邦共和国政府からの国際的な支援によって実現されている。ボリビア多民族国の文化省が保全と保存の作業を担当している。
キハロ通り事業が1981年に、歴史的な中心街の住宅の修復を促すために作られた。基本的なサービスはポトシ自治体と協力して提供されている。
「ただし、この地域には強い景気の後退があることに留意すべきである。文化観光が社会的・経済的・教育的な支えを与えるのに役立つと期待されている。」
景気の後退が書かれる資産は、これまで読んだ77件でここだけです。
長期に必要とされること
八つ挙げられています。
| ① | 2011年の技術調査団が同定した緊急その他の措置を完全に実施すること |
|---|---|
| ② | 承認された戦略的緊急計画を最終化し実施すること(区域の産業的採掘の合理化と計画を含む) |
| ③ | 山の頂上の構造的安定を確かにする承認された措置を策定し実施すること |
| ④ | 最高政令27787号第6条を改正して、標高4,400 m と 4,700 m のあいだの地上地下すべての探査・採掘・そのほかの介入を止めること |
| ⑤ | 最近の地球物理学の研究に基づく分析とモデル化を完了し、山に影響する異常をさらに同定すること |
| ⑥ | 監視体系を整えること |
| ⑦ | 参加型の管理計画を最終化し提出すること |
| ⑧ | 資産の緩衝地帯を画すること |
④が標高の数字まで指定しています。
チュティリョス(サン・バルトロメとサン・イグナシオ・デ・ロヨラの祭、ポトシにおける文化の出会い)が無形文化遺産として記録されています。
2級で押さえること
基準(ii)(iv)(vi)、標高4,000 m、本体2,210.93 ha・緩衝2,217.81 ha(ほぼ同じ)、2025年に軽微な範囲変更(dossier は 420bis)。危機遺産リストに2014年から現在も載っている。近代における主要な銀鉱山のもっとも優れた例で、16世紀の世界最大の産業複合と評されていた。1572年のフランシスコ・デ・トレドの訪問に続いて「帝国都市」となった。セビーリャへの貴金属の大量の輸入に直接かつ有形に結びつき、スペイン通貨の洪水を引き起こし、16世紀に世界的に重要な経済の変化をもたらした。17世紀までに16万人の入植者と、ミタ(強制労働)の制度のもとで鉱山で働くことを強いられた13,500人のインディオ。スペインの入植者の区画と強制された労働者の区画は、人工の川によって隔てられている。1580年以降「パティオ」の技法(水力の製粉機と水銀アマルガム法)。22のラグーナ、140のインヘニオ、約5,000の操業、22の教会、1759年に再建されたカサ・デ・ラ・モネダ。「アンデス・バロック」様式がインディオの影響を取り込む。完全性の節に脅威が書かれておらず、脅威は真正性の節に出る。セロ・リコは何百年もの鉱業で多孔質で不安定になり、2005年の世界遺産センター/ICOMOS 技術調査団の勧告が取り組まれず、山の頂上の一部が崩落した。「資産の真正性は脅かされており、人命を守り、労働条件を改善し……緊急で適切な行動が取られなければならない」——顕著な普遍的価値の中に人命が出てくるのは77件でここだけ。「資産のための参加型の保全管理計画は無い」と明記。修復はUNESCO・米州機構・スペイン政府・ドイツ政府の国際的な支援で実現されている。この地域には強い景気の後退がある。長期に必要とされることが八つ挙げられ、標高4,400 m と 4,700 m のあいだの探査・採掘を止めるための政令の改正、参加型管理計画の最終化、緩衝地帯を画することが含まれる。
準1級
準1級向けに理解を深める
準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。
この遺産は、準1級のキーワードで2通りに出てきます
| キーワード | このキーワードで見るもの | 本文の手がかり |
|---|---|---|
| ヨーロッパの建築 | 様式の名が、移った先でどう変わるか | 「インディオの影響を取り込む「アンデス・バロック」様式」 |
| 産業・経済活動関連遺産 | 産業の跡が、どんな形で資産になっているか | 「鉱山から王立造幣局までの産業の生産の連鎖の全体が保全されており」 |
準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。
キーワードで練習する
級別の確認問題
2級 確認問題
答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。
確認1:ポトシの市街の危機遺産リストについて、正しいものは?
- 2001年から2025年まで載って外れた
- 載ったことがない
- 2014年から載っていたが、2025年の軽微な範囲変更のときに外れた
- 2014年から現在も載っている
正解と解説を開く
正解:4.2014年から現在も載っている
危機遺産リストの登録年は「2014 – Present」で、現在も載っています。2025年にあったのは軽微な範囲変更で、危機遺産リストからの除外ではありません。2001年から2025年まで載って外れたのはアブー・メナー90 です。
確認2:ポトシの市街の社会の文脈について、UNESCO の記述に合うものは?
- 両者の区画は混在していた
- スペインの入植者のための区画と、強制された労働者のための区画が、人工の川によって互いに隔てられている
- 社会の文脈についての記述は無い
- スペインの入植者の区画と強制された労働者の区画が人工の川で隔てられていたが、18世紀には混在するようになった
正解と解説を開く
正解:2.スペインの入植者のための区画と、強制された労働者のための区画が、人工の川によって互いに隔てられている
> 鉱山から王立造幣局までの産業の生産の連鎖の全体が保全されており、根底にある社会の文脈も同じようによく例証されている——スペインの入植者のための区画と、強制された労働者のための区画が、人工の川によって互いに隔てられている。混在するようになったという記述はありません。この記述はBrief synthesis と基準(iv)の両方に出てきます。
確認3:ポトシの市街の真正性の節に書かれていて、これまで読んだ資産に無かったものは?
- 材料の分析による年代測定
- 来訪者数の上限
- 人命を守るため緊急で適切な行動が取られなければならないこと
- 人命を守るため緊急の行動が必要なことと、来訪者数の上限を設けるべきこと
正解と解説を開く
正解:3.人命を守るため緊急で適切な行動が取られなければならないこと
> したがって資産の真正性は脅かされており、人命を守り、労働条件を改善し、資産のこの脆弱な構成要素のさらなる劣化を防ぐため、緊急で適切な行動が取られなければならない。顕著な普遍的価値の中に人命が出てくるのは、これまで読んだ77件でここだけです。背景は、セロ・リコが何百年もの鉱業で多孔質で不安定になり、2005年の技術調査団の勧告が取り組まれず、山の頂上の一部が崩落したことです。
確認4:ポトシの市街の保全管理計画について、UNESCO の記述に合うものは?
- 「資産のための参加型の保全管理計画は無い」と明記され、その最終化と提出が長期に必要とされることに挙げられている
- 参加型の保全管理計画はすでに施行されている
- 管理計画についての記述は無い
- 「参加型の保全管理計画は無い」と明記されているが、ポトシ歴史区域修復計画とその規則がその役割を代行していると書かれている
正解と解説を開く
正解:1.「資産のための参加型の保全管理計画は無い」と明記され、その最終化と提出が長期に必要とされることに挙げられている
> 「資産のための参加型の保全管理計画は無い。」長期に必要とされることの⑦に「参加型の管理計画を最終化し提出すること」が挙げられています。ポトシ歴史区域修復計画(PRAHP)とその規則は資産の保護を包含するとされますが、「代行している」とは書かれていません。同じく「管理計画が無い」と書かれるのはゴア234 です。
参考資料
確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。