サナアの旧市街

登録年
1986年
所在国
イエメン
登録区分
文化遺産
地域
アジア
登録基準
(iv) (v) (vi)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 一覧に面積の行が無い

イエメン、首都サナア県。標高2,200 m の山の谷。

本体 一覧に行が無い
緩衝地帯 一覧に行が無い
登録 1986年、基準 (iv)(v)(vi)
dossier 385
危機遺産リスト 2015年〜現在
節の見出し `Integrity (2011)` など、年が付いている
保存状況報告 19年分(1990〜2026年)
境界データ GIS のデータ未受領の注記がある
ほかの保全の仕組み 2003年条約2要素——金属(金・銀・銅)への彫刻、サナアの歌

面積の行が無い理由が、本文に書かれている

一覧には本体の面積も緩衝地帯も行がありません。

その理由が、保護管理の節(2011年時点)に書かれています。

登録に関するその決定において、世界遺産委員会は「旧市街の周りに適切な緩衝地帯が設定されるべきである」と勧告した。この勧告は、資産の保護を改善するために実施されるべきである——その資産はまた、明確に定められた境界も必要としている。

「明確に定められた境界も必要」と書かれています。

一覧に面積の行が無いことと、本文の「境界が必要」が整合しています。

ゼミは、一覧に行が無いときに本文に理由が書かれていないかを確かめます。カイロ89 やイマーム広場115 のように本文が緩衝地帯の存在を前提に書く資産とは別のことです。

遺産 一覧 本文
サナア385 本体も緩衝地帯も行が無い 委員会が緩衝地帯の設定を勧告し、「明確に定められた境界も必要」
カイロ89 緩衝地帯の行が無い 「資産とその緩衝地帯」と書く
イマーム広場115 緩衝地帯の行が無い 「資産とその緩衝地帯」「緩衝地帯内の歴史的中心」と書く
マラケシュ331 緩衝地帯の行が無い 緩衝地帯に触れず、「境界の見直しが想定されている」と書く
ラバト1401 緩衝地帯の行が無い 緩衝地帯に触れていない

「一覧に行が無い」の中身が、五通りに分かれます。

どんな市か — 103のモスク、14のハンマーム、6,000を超える家

説明文に書かれている数

居住の期間 2,500年以上
モスク 103
ハンマーム 14
家 6,000を超える
いつ建てられたか すべて11世紀より前

「すべて11世紀より前に建てられた」と説明文は書きます。

ただし顕著な普遍的価値の概要は「旧市街の家々は比較的最近の建設で、伝統的な構造を持つ」とも書きます。

二つの記述を、どちらかに決めず両方を記録します。

何が見えるか

サナアの旧市街は、石造の1階の上に数階を立ち上げる、版築(ピゼ)と焼成煉瓦の塔の並外れた密度によって定められ、焼成煉瓦の幾何学の型と白い石膏で際立って装飾されている。 建物の黄土色は、近くの山々の焦茶色の土に溶け込んでいる。

市の中では、ミナレットが空の輪郭を貫き、広々とした緑のバースターン(庭園)が、密に詰まった家々・モスク・浴場の建物・隊商宿のあいだに散らばっている。

いつからか

時期 中身
2,500年以上 居住
紀元前2世紀 イエメンの諸王国の前哨地として公式の地位を与えられた
紀元1世紀 内陸の交易路の中心として現れた
525–575年 アビシニア支配期。大聖堂と殉教者廟の遺跡がキリスト教の影響を証し、その頂点はユスティニアヌスの治世と一致した
7世紀以降 サナアがイスラムの信仰の広がりの主要な中心となったときの市の深い変化の結果、前イスラム期の遺構は大きく破壊された
16世紀以降 オスマン支配のもとでの相次ぐ再建。イスラム最初の数世紀に特徴的な空間の組織を尊重しながら、市の外観を変え、西へ第二の市をもって拡張した

「前イスラム期の遺構が大きく破壊された」と、キリスト教の影響の証が残っていることが、同じ段落に書かれています。

大モスク

大モスクの中の考古の遺構が示すとおり、それは預言者がまだ生きているあいだに建設されたと言われる。

「と言われる(said to have been)」です。断定ではありません。

(vi): サナアの大モスクは、ヒジュラ暦6年に建てられ、メッカとメディナの外に建てられた最初のモスクとして知られる。

基準(vi)では「知られる(is known as)」です。

ゼミは「〜と言われる」「〜として知られる」を、「〜である」に変えません。

三つの基準

基準 中身
(iv) 部分的に保存された城壁の中に、均質な建築の総体の際立った例を与えており、その設計と細部が、時を越えて尊重されてきたイスラム最初の数世紀に特徴的な空間の組織を翻訳している
(v) 同時代の社会の変化の結果として脆弱になったサナアの家々は、並外れた傑作であり伝統的な人間の集落の際立った例である
(vi) ヒジュラ最初の年におけるイスラムの広がりの歴史と、直接的かつ有形に結びついている。アル・ハサン・B・アフマド・アル・ハムダーニー、アフマド・アル・ラーズィー、アル・シャウカーニーを含む歴史上のイエメンの人物の寄与を通じて、イエメン・アラブ・イスラム世界の歴史に主要な役割を果たした

基準(v)の中に脆弱性が書かれています(この章で基準(v)が付く5件すべてで同じ)。

完全性と真正性(2011年時点)— 「耐えがたい圧力」

完全性(2011)

顕著な普遍的価値を表す属性のすべての意義ある割合が資産の中にある。

「すべて」ではなく「意義ある割合」です。

しかしながら、市のある区画では、新しい開発の加速がその性格を侵食している。 資産の視覚の完全性は、周囲の景観における新しい近代ホテルと通信塔の増加によって脅かされている。

「視覚の完全性」という語が使われます。

四つの圧力

次のことが、市とその住民にさまざまな耐えがたい圧力を作り出している——

伝統的な法の体系の消滅、または新しく補足的なものの適用
加速する社会と経済の変化
市の中と周りの急速な都市の開発
バースターンが次々に建て込まれることによる、開かれた空間の消滅

「耐えがたい(unbearable)」と書かれる資産は、これまで読んだ116件でここだけです。

「伝統的な法の体系の消滅」が圧力として挙げられるのも、116件でここだけです。

真正性(2011)

顕著な普遍的価値を担う属性は、市とその建物の全体の設計——装飾された正面を伴う——、伝統的な建設材料、市の都市の環境の一部と考えられる開かれた空間(バースターン、マカーシェ、サラーハート)、そして山々に囲まれた市の視覚の外観である。

開かれた空間に三つの名前が挙げられています。

これらの属性の真正性は、正しくない保全の実践と開発に脆弱である。

「正しくない保全の実践」が脅威として書かれます。

カイロ89 の「保全の運動が変容をもたらす」、24章の真珠採取1364 の「保全が過剰だと記憶を消し去りうる」と並べて読みます。

持ち家の割合

伝統的な社会経済の活動に関わる関連する無形の価値——非常に高い割合の持ち家を含む——は、示され続けている。

「持ち家の割合」が無形の価値として書かれる資産は、これまで読んだ116件でここだけです。

8章のルーネンバーグ741 は「ほぼ全体が私有」で、所有者への圧力が脅威として書かれていました。サナア385 は持ち家の高さが価値として書かれます。同じ「私有」の扱いが逆です。

誰が守っているか(2011年時点)— 法が発効すれば改善される

二つの法と、まだの法

法 状態(2011年時点の記述)
1997年古物法 保護を確かにしている
2002年建築法 同上
歴史都市保存法 「発効すれば保護は改善される」=まだ発効していない

「法が発効すれば改善される」という書き方です。

できているものと、これからのもの

状態
保全計画の準備 完了した
市とその周囲の建物の網羅的な目録 完了した
保全計画の策定 GOPHCY が今後数年で行うことを目指している
保全ユニット 設立が提案されている(すべての関係者を関わらせるため)
市の管理計画 その準備の過程に関係者が参加するよう促される(=まだ無い)

「準備は完了した」と「策定を目指している」が両方書かれています。準備(preparation)と策定(development)が別の段階として書かれているので、混同しません。

GOPHCY

GOPHCY(イエメンの歴史都市の保存のための総機構)は、1990年に設立された、持続可能な開発のためのふさわしい戦略を創るために設けられた独立の機関である。 新しい法が発効した後、それは世界遺産資産の管理の全体の当局となる。

「新法が発効した後に当局になる」という順序です。

管理の当局が「これから決まる」と書かれる資産は、これまで読んだ116件でここだけです。

長期の意図

長期には、旧市街の持続可能な保存と開発のための明確な戦略を採択し、環境のよりよい統制に至り、商業と住居の活動のあいだの均衡を確かにすることが意図されている。

三つが並んでいます。

「商業と住居の活動のあいだの均衡」は、同じ章のダマスカス20 の「商業と半工業の活動が住居の区域へ広がっている」と同じ論点です。

2級で押さえること

基準(iv)(v)(vi)、一覧に本体も緩衝地帯も面積の行が無い、1986年登録、危機遺産リスト2015年〜現在、節の見出しに年が付いている(`Integrity (2011)` など)、保存状況報告が19年分(1990〜2026年)、2003年条約2要素(金属への彫刻/サナアの歌)。面積の行が無い理由が本文(2011)に書かれている——「登録に関するその決定において、世界遺産委員会は『旧市街の周りに適切な緩衝地帯が設定されるべきである』と勧告した。この勧告は……実施されるべきである——その資産はまた、明確に定められた境界も必要としている」。「一覧に行が無い」の中身は五通りに分かれる(サナア385=境界が必要と本文が書く/カイロ89・イマーム広場115=本文が緩衝地帯の存在を前提に書く/マラケシュ331=境界の見直しが想定されている/ラバト1401=触れていない)。標高2,200 m の山の谷。2,500年以上の居住。説明文は「103のモスク、14のハンマーム、6,000を超える家、すべて11世紀より前に建てられた」と書くが、概要は「旧市街の家々は比較的最近の建設で、伝統的な構造を持つ」とも書く——どちらかに決めず両方を記録する。石造の1階の上に数階を立ち上げる版築(ピゼ)と焼成煉瓦の塔の並外れた密度で、焼成煉瓦の幾何学の型と白い石膏で装飾される。建物の黄土色は近くの山々の焦茶色の土に溶け込む。広々とした緑のバースターン(庭園)が、密に詰まった家々・モスク・浴場の建物・隊商宿のあいだに散らばる。紀元前2世紀にイエメンの諸王国の前哨地として公式の地位、紀元1世紀に内陸の交易路の中心。アビシニア支配期(525–575年)の大聖堂と殉教者廟の遺跡がキリスト教の影響を証し、その頂点はユスティニアヌスの治世と一致した——一方で7世紀以降の深い変化の結果、前イスラム期の遺構は大きく破壊されたと同じ段落に書かれる。16世紀以降のオスマン支配下の再建は、イスラム最初の数世紀に特徴的な空間の組織を尊重しながら、市の外観を変え、西へ第二の市をもって拡張した。大モスクは「預言者がまだ生きているあいだに建設されたと言われる」、基準(vi)は「ヒジュラ暦6年に建てられ、メッカとメディナの外に建てられた最初のモスクとして知られる」——「言われる」「知られる」を「である」に変えない。基準(vi)にはアル・ハサン・B・アフマド・アル・ハムダーニー、アフマド・アル・ラーズィー、アル・シャウカーニーの名が挙がる。完全性(2011)は「属性のすべての意義ある割合が資産の中にある」(「すべて」ではない)とし、視覚の完全性が周囲の景観における新しい近代ホテルと通信塔の増加によって脅かされているとする。四つのことが「市とその住民にさまざまな耐えがたい圧力」を作り出している——伝統的な法の体系の消滅または新しく補足的なものの適用/加速する社会と経済の変化/市の中と周りの急速な都市の開発/バースターンが次々に建て込まれることによる開かれた空間の消滅。「耐えがたい」と「伝統的な法の体系の消滅」は116件でここだけ。真正性(2011)の属性は、市と建物の全体の設計・伝統的な建設材料・開かれた空間(バースターン、マカーシェ、サラーハート)・山々に囲まれた市の視覚の外観で、「正しくない保全の実践と開発に脆弱」。「非常に高い割合の持ち家」が無形の価値として書かれる——8章のルーネンバーグ741 は「ほぼ全体が私有」で所有者への圧力が脅威だったので、同じ「私有」の扱いが逆になる。1997年古物法と2002年建築法が保護を確かにし、「歴史都市保存法が発効すれば保護は改善される」=まだ発効していない。保全計画の準備と網羅的な目録は完了し、保全計画の策定はGOPHCY が今後数年で目指す。保全ユニットの設立は提案され、市の管理計画はまだ無い(準備と策定を混同しない)。GOPHCY は1990年に設立された独立の機関で、「新しい法が発効した後、それは世界遺産資産の管理の全体の当局となる」——管理の当局が「これから決まる」と書かれるのは116件でここだけ。長期には、旧市街の持続可能な保存と開発のための明確な戦略の採択、環境のよりよい統制、商業と住居の活動のあいだの均衡が意図されている。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産が出てくるキーワード

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
イスラム建築モスクが、その資産でどの役を与えられているか「メッカとメディナの外に建てられた最初のモスクとして知られる」

いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:サナアの旧市街の一覧に面積の行が無いことについて、UNESCO の記述に合うものは?

  1. 緩衝地帯の行だけが無く、本文は緩衝地帯の存在を前提に書いている
  2. 本体も緩衝地帯も行が無く、本文(2011)が「資産はまた、明確に定められた境界も必要としている」と書いている
  3. 面積の行はあるが、本文がそれを否定している
  4. 本体も緩衝地帯も行が無く、本文が境界の必要を書いており、それはこの章で一覧に本体の面積の行が無い唯一の例ではない
正解と解説を開く

正解:2.本体も緩衝地帯も行が無く、本文(2011)が「資産はまた、明確に定められた境界も必要としている」と書いている

サナア385 は、一覧に本体も緩衝地帯も面積の行がありません。唯一の例です——ほかに一覧の行が無いのは緩衝地帯だけ(カイロ89・マラケシュ331・ラバト1401・イマーム広場115)です。保護管理(2011)は、委員会が緩衝地帯の設定を勧告したことを引き、「その資産はまた、明確に定められた境界も必要としている」と書きます。本文が緩衝地帯の存在を前提に書くのはカイロ89 とイマーム広場115 です。

確認2:サナアの旧市街の家々の建設時期について、UNESCO のページをどう記録すべきか?

  1. 説明文の「すべて11世紀より前に建てられた」と、概要の「比較的最近の建設で、伝統的な構造を持つ」の両方を記録する
  2. 説明文に従って、すべて11世紀より前と記録する
  3. 概要に従って、比較的最近の建設と記録する
  4. 説明文の「すべて11世紀より前に建てられた」と概要の「比較的最近の建設」が食い違うので、建設時期については何も記録しない
正解と解説を開く

正解:1.説明文の「すべて11世紀より前に建てられた」と、概要の「比較的最近の建設で、伝統的な構造を持つ」の両方を記録する

説明文は「103のモスク、14のハンマーム、6,000を超える家、すべて11世紀より前に建てられた」と書きます。概要は「旧市街の家々は比較的最近の建設で、伝統的な構造を持つ」とも書きます。何も記録しないのではありません——どちらかに決めず、両方を記録します。

確認3:サナアの旧市街の完全性(2011)で「耐えがたい圧力」として挙げられているものに含まれるのは?

  1. 観光客の増加
  2. 圧力は挙げられていない
  3. 伝統的な法の体系の消滅または新しく補足的なものの適用と、観光客の増加の両方
  4. 伝統的な法の体系の消滅、または新しく補足的なものの適用
正解と解説を開く

正解:4.伝統的な法の体系の消滅、または新しく補足的なものの適用

四つです——伝統的な法の体系の消滅、または新しく補足的なものの適用/加速する社会と経済の変化/市の中と周りの急速な都市の開発/バースターンが次々に建て込まれることによる開かれた空間の消滅。観光客の増加は含まれていません(イマーム広場115 の脅威に入ります)。「耐えがたい」と「伝統的な法の体系の消滅」は、これまで読んだ116件でここだけです。

確認4:サナアの旧市街の管理の当局について、UNESCO の記述(2011)に合うものは?

  1. GOPHCY はすでに世界遺産資産の管理の全体の当局である
  2. 管理の当局についての記述は無い
  3. GOPHCY は1990年に設立された独立の機関で、「新しい法が発効した後、世界遺産資産の管理の全体の当局となる」
  4. GOPHCY は1990年に設立された独立の機関で、新しい法の発効後に全体の当局となるが、その新しい法はすでに発効している
正解と解説を開く

正解:3.GOPHCY は1990年に設立された独立の機関で、「新しい法が発効した後、世界遺産資産の管理の全体の当局となる」

> 新しい法が発効した後、それは世界遺産資産の管理の全体の当局となる。その法はまだ発効していません——「歴史都市保存法が発効すれば保護は改善される」と書かれています。管理の当局が「これから決まる」と書かれる資産は、これまで読んだ116件でここだけです。

参考資料

確認日:2026年10月27日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。