タウリカ半島のケルソネソスとそのコーラ

登録年
2013年
所在国
ウクライナ
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(ii) (v)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 都市と、その畑

黒海北岸、クリミア南西部のヘラクレア半島。紀元前5世紀にドーリア系ギリシア人の植民地として創設された古代都市の遺構です。

登録の要点は、都市と畑が一組になっていることです。

ポリス 都市の遺構。紀元前5世紀から13世紀の物的遺構が直交格子の上に配される
コーラ(chora) 都市の農業後背地。同じ大きさの長方形の区画。10,000 ha の範囲に400の等しい割当地の広大な土地区画体系の断片が保存

直交格子の基本の方位は、都市の外の広い景観へそのまま続きます。区画はブドウ畑を支え、その生産物は都市から輸出されました。都市は15世紀まで栄えました。

紀元3世紀には黒海でもっとも生産的なワインの中心として知られ、ギリシア・ローマ・ビザンツの諸帝国と黒海北方の人びととの交換の拠点であり続けました。

資産には、公共建築の複合体と居住区、初期キリスト教の記念物、石器時代と青銅器時代の集落の遺構、ローマと中世の塔の防御施設と給水施設、そしてきわめてよく保存されたブドウの植栽と区画の壁の例が含まれます。

基準(v)は「失われた農業景観」に対して

基準(v)は、ケルソネソスとそのコーラが遺存的(relict)な農業景観を表すことに対して認められています。かつて400を超えた等しい割当地の、広大で場所によってはよく保存された土地割当体系が、保存されたポリスと結びついている、という書き方です。

区画の壁・防御施設・農場・特徴的な格子の配置が住民の暮らしの型を体現し、のちの生産の変化にもかかわらず景観の農業的な利用と継続を示すとされます。

UNESCO はこれを古代のポリスに結びついた民主的な土地組織の優れた例とも書いています。区画が等しい大きさであることが、都市の社会組織を反映しているという読み方です。

登録の範囲 — 2026年から危機遺産

本体 259.3752 ha
緩衝地帯 3,041.0876 ha
構成 連続資産(6つの構成資産)
登録 2013年、基準 (ii)(v)
危機遺産 2026年から現在まで

緩衝地帯が本体の約11.7倍。この章でもっとも比が大きい組み合わせです(シンガポール植物園は約2.8倍、紅河は約1.8倍)。コーラという広い農業景観を守るための緩衝地帯だと読めます。

この章で危機遺産は2件です。バッティール(1492)は2014年の登録と同時、ケルソネソスは登録から13年後の2026年から。

完全性 — 半分が失われ、残りの一部しか登録されていない

UNESCO の記述がきわめて率直です。

6つの構成資産には、ケルソネソスの完全な古代ポリスと、そのコーラの断片が含まれる。コーラの約半分は都市開発によって失われており、それでもなお、残っているもののうち小さな部分しか登録されていない。

この選定はコーラの景観の十分な断片を与えるとしつつ、将来、さらにコーラの区画を含める資産の拡大が望ましく、資産の完全性をさらに強めるだろうと書かれています。

コーラへの都市開発の影響 著しい
広い景観の完全性 脆弱。配慮を欠く都市開発や基盤整備によるさらなる悪影響を防ぐため、決然として一貫した保護と計画の仕組みを要する
都市内 侵入的な性格の著しい開発があり、一部は移転が約束されている

「十分である」と「もっと含めたほうがよい」が同じ節に書かれます。登録は、望ましい範囲すべてを含めて行われるとは限りません。

真正性 — 掘っていないことが、真正性を保った

材料・意匠・材質における真正性の条件は、ポリスとコーラの考古遺構について良好とされます。

発掘 ケルソネソスの40 ha のうち約10 ha が発掘済みで、町の歴史と発展のよい理解につながった
コーラ 発掘はより少ないが、構造と配置はよく理解されている
修復 数例のアナスティローシスを除いて、大規模な修復や保存の事業は行われていない。これが材料と材質における高い度合いの真正性を保ってきた
形と意匠 都市の配置とコーラの区画分割との関係においてよく保たれている

手を入れなかったことが真正性を保ったという書き方です。

立地と環境の真正性は部分的に影響を受けている

主として20世紀の建造物が古代都市の一部を破壊したこと、またコーラの近くの都市の侵食と基盤整備の事業によるものです。

その影響は、ヨットクラブとその関連施設を現在の場所から取り除き、大聖堂を考古遺跡の中によりよく統合することで、可能な範囲まで減らすことができるだろう。

真正性の節が、具体的な施設名を挙げて移転を示しています。バッティールが分離壁への警告だったのと並べて読めます。

誰が守っているか — 予算の優先順位まで書かれている

資産はウクライナ文化遺産保護法(2010年9月9日 No. 2518-VI)に従って、国の最高水準の保護を受けています。この地位は、境界内で保存状態や文化遺産・指定記念物の利用に悪影響を与えうる一切の活動を禁じます。

「ケルソネソス国家保護区の記念物の保護区域の境界と土地利用規制」という事業が始められ、より精緻なゾーニングと保護の考え方をマスター開発計画へ統合して、広がったコーラの景観の保護の地位を強めることを目指しています。この草案の公式な採択に優先順位を与えるべきとされます。

資産の責任機関は、文化省が管理機関として権限を与えたケルソネソス国家保護区です。

主要な保護の課題
侵食、とくに海岸侵食
すべての構成資産での適切な保安措置の確立
都市開発——セヴァストポリ市が考古遺跡のきわめて近くにあり成長を続けている

予算をどこに使うかが指示されている

改訂された管理計画は2013年半ばに最終化される予定で、公式に採択されるべきとされます。管理の優先順位は保存の必要に置かれるべきです。

ケルソネソス市内の遺構の危機的な保存状態——その一部は著しく老朽化し、あるいは崩壊に近い——に鑑み、予算の資源を増やす必要がある。解説やその他の観光の事業よりも、保存と来訪者の安全に明確な予算上の優先が与えられる必要がある。

UNESCO が予算の配分の優先順位まで書くのは、この章では唯一です。

2級で押さえること

都市と畑が一組——10,000 ha に400の等しい割当地のコーラが、古代のポリスに結びついた民主的な土地組織の例とされる。基準(v)は遺存的(relict)な農業景観に対して。コーラの約半分が都市開発で失われ、残りのうち小さな部分しか登録されていない——「十分」と「拡大が望ましい」が同じ節に書かれる。手を入れなかったことが真正性を保った(40 ha のうち約10 ha のみ発掘、大規模な修復なし)。ヨットクラブの移転と大聖堂の統合が具体的に示されている。解説や観光より保存と来訪者の安全に予算の優先をと明記。緩衝地帯が本体の約11.7倍でこの章最大。2026年から危機遺産。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産が出てくるキーワード

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
嗜好品作物そのものか、作る仕組みの全体か「黒海でもっとも生産的なワインの中心」

いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:ケルソネソスのコーラ(chora)について正しいものは?

  1. ブドウ畑ではなく穀物の畑として使われていた
  2. 10,000 ha の範囲に400の等しい割当地という土地区画体系の断片が保存されており、古代のポリスに結びついた民主的な土地組織の例とされる
  3. 都市の防御のための無人の緩衝地として設けられた
  4. 都市の直交格子とは別の方位で区画され、住民の身分に応じて大きさが異なる区画に分けられており、区画の壁もその身分の差を示していて、都市の社会組織が読み取れる
正解と解説を開く

正解:2.10,000 ha の範囲に400の等しい割当地という土地区画体系の断片が保存されており、古代のポリスに結びついた民主的な土地組織の例とされる

10,000 ha の範囲に400の等しい割当地の広大な土地区画体系の断片が保存されています。直交格子の基本の方位は都市の外の広い景観へ続きます。区画はブドウ畑を支え、生産物は都市から輸出されました。UNESCO はこれを古代のポリスに結びついた民主的な土地組織の優れた例と書いており、区画が等しい大きさであることが社会組織を反映しています。

確認2:ケルソネソスの完全性について、UNESCO の記述に合うものは?

  1. コーラの全域が登録範囲に含まれている
  2. コーラは失われており、登録されているのは都市だけである
  3. コーラの約半分が登録されており、残りの半分は緩衝地帯として保護されているため拡大の必要はない
  4. コーラの約半分が都市開発で失われ、残っているもののうち小さな部分しか登録されていない
正解と解説を開く

正解:4.コーラの約半分が都市開発で失われ、残っているもののうち小さな部分しか登録されていない

6つの構成資産には完全な古代ポリスとコーラの断片が含まれます。コーラの約半分は都市開発によって失われ、それでもなお残っているもののうち小さな部分しか登録されていません。この選定は十分な断片を与えるとしつつ、将来の拡大が望ましく、完全性をさらに強めるだろうと書かれています。「十分」と「拡大が望ましい」が同じ節に書かれます。

確認3:ケルソネソスの材料と材質における真正性が高く保たれてきた理由としてUNESCO が挙げているものは?

  1. 数例のアナスティローシスを除いて、大規模な修復や保存の事業が行われてこなかったこと
  2. 発掘された区域をすべて埋め戻してきたこと
  3. 20世紀の建造物が遺構を覆って保護したこと
  4. 40 ha のすべてが発掘され、遺構の記録が完全に取られたうえで本物の材料で復元されてきたこと
正解と解説を開く

正解:1.数例のアナスティローシスを除いて、大規模な修復や保存の事業が行われてこなかったこと

数例のアナスティローシスを除いて、大規模な修復や保存の事業は行われていません。これが材料と材質における高い度合いの真正性を保ってきました。手を入れなかったことが真正性を保ったという書き方です。発掘は40 ha のうち約10 haにとどまり、コーラはさらに少ないものの構造と配置はよく理解されているとされます。

確認4:ケルソネソスの保護管理で、UNESCO が予算について書いていることは?

  1. 観光収入を保存に充てる仕組みを作るべきである
  2. 予算は十分であり、配分の見直しは必要ない
  3. 解説やその他の観光の事業よりも、保存と来訪者の安全に明確な予算上の優先を与える必要がある
  4. 解説と観光の事業に予算を重点的に配分し、その収入で保存の費用をまかなう仕組みに移すべきである
正解と解説を開く

正解:3.解説やその他の観光の事業よりも、保存と来訪者の安全に明確な予算上の優先を与える必要がある

市内の遺構の危機的な保存状態——一部は著しく老朽化し、あるいは崩壊に近い——に鑑み、予算の資源を増やす必要があるとされ、解説やその他の観光の事業よりも、保存と来訪者の安全に明確な予算上の優先が与えられる必要があると書かれています。UNESCO が予算の配分の優先順位まで書くのは、この章では唯一です。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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