ウィーンの歴史地区

登録年
2001年
所在国
オーストリア
登録区分
文化遺産
地域
ヨーロッパ
登録基準
(ii) (iv) (vi)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか — 三つの時期

オーストリア東部、ドナウ川沿い。初期のケルトとローマの集落から中世とバロックの都市へ発展し、ついにオーストリア=ハンガリー帝国の首都になりました。

資産は三つで構成されます。

構成
市の中世の核(ローマの集落に基づく)
軸線の配置をもつ主要なバロックのまとまり
近代の初めからのグリュンダーツァイト(Gründerzeit)の建造

基準(iv)は、ヨーロッパの文化的・政治的な発展の三つの鍵となる時期——中世、バロック期、グリュンダーツァイト——が例外的によく示されていることに対して認められています。

城壁が二度、壊された

時期 城壁
12世紀初め 集落がローマの防御の外へ拡張し、ローマの防御は取り壊された
16・17世紀のオスマンとの衝突のあいだ はるかに広い区域を囲んでいた中世の町の城壁が再建され、稜堡を備えた。これが19世紀後半に中世の城壁が取り壊されるまでウィーンの核であり続けた

城壁を壊したことが、次の時代の都市計画を生みました。

34の郊外が市に編入され、皇帝が内市街の周りの要塞の取り壊しを命じたとき、ウィーンの歴史に新しい段階が訪れた。この機会が、都市計画の歴史における19世紀のもっとも重要なまとまりの一つを作るために生かされ、社会的・経済的な発展のこの決定的な時期にヨーロッパの残りに大きく影響した。

1874年にホーフブルクがノイエ・ホーフブルク(「帝国フォーラム」)で拡張され、大きな博物館の複合体と一つのまとまりに結ばれました。ブルク劇場・議会・市庁舎・大学がこれらと結ばれた別のまとまりをなし、オペラ座と、取り壊された市壁の線に沿うリングシュトラーセ沿いの多数の公共・私有の建物が加わりました。

基準(vi)が一文だけ

基準(vi)の記述は、この章でいちばん短いものです。

16世紀以来、ウィーンはヨーロッパの音楽の首都として普遍的に認められてきた。

これで終わりです。

Brief synthesis はもう少し書いています——16世紀から20世紀の音楽の発展における主要な人物たちを迎え、とくにウィーン古典派とロマン主義がヨーロッパの「音楽の首都」としてのウィーンの評判を固めた。そしてモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの住居に関わる建物が挙げられています。

この章と前の章では、基準(vi)の中身が資産ごとにずいぶん違います。

資産 基準(vi)
大ジンバブエ364 国の紋章になったこと
プラハ616 中世のキリスト教の発展における役割、カレル大学、並ぶ名前
ロイ・マタ1280 いまも力の源であり霊感であること
ナン・マドール1503 いまも伝統的に所有され管理されていること
ウィーン1033 「音楽の首都として認められてきた」の一文

2017年に危機遺産になり、2026年に解除された

本体 371 ha
緩衝地帯 462 ha
登録 2001年、基準 (ii)(iv)(vi)
危機遺産 2017年から2026年(解除された)

この章で、危機遺産から解除された資産はウィーンだけです。

この章と前の章の危機遺産——アレッポ21(2013年から現在)、オデーサ1703(2023年から現在)、バッティール1492(2014年から現在)、ナン・マドール1503(2016年から現在)、ケルソネソス1411(2026年から現在)。解除された例はカスビの王墓1022(2010-2023年)とウィーン(2017-2026年)の二つです。

なぜ危機遺産になったのか。真正性の節に書かれています。

歴史的な都市の織物は、この継続する交流によって形づくられており、それが都市景観を時とともに進化し成長させてきた。それは緩衝地帯の外に新しく現れつつあるスカイラインに反映されている。 ウィーンの継続する発展は、顕著な普遍的価値を支える属性——その視覚的な質を含む——を考慮するきわめて慎重な取り組みを要する。とくに新しい高層建築について。

「とくに新しい高層建築について」が真正性の節の最後の言葉です。

リガ(852)は「建物が低い」ことが価値でした。ウィーンは「高層建築」が真正性の課題です。同じ章の中で、高さの扱いが正反対の向きで書かれています。

完全性と真正性 — 「重なり合い、多層に織り合わされている」

完全性

371 ha の境界内に顕著な普遍的価値を支えるすべての属性があるとされます——その建築と都市の質と配置、そしてオーストリアと中央ヨーロッパの歴史を象徴する三つの主要な発展の段階(中世・バロック・グリュンダーツァイト)を示すもの。

歴史地区はその特徴的なスカイラインも保ってきた。 462 ha の緩衝地帯が登録資産の直近の環境を守っている。

真正性

資産は立地、その形と意匠、その実体と材料の点で実質的に(substantially)本物である。 この真正性は、都市の建物・構造・空間の重なり合いと多層の織り合わせのなかに大きく存している。

「重なり合い(overlapping)と多層の織り合わせ(multi-layered interweaving)」という言い方です。

資産は上述の三つの鍵となる時期からの本物の例を通じて継続する価値の交流を示す建築の要素を注目すべき度合いで保ってきたとされます。

建築の要素に加えて、ウィーンの歴史地区はヨーロッパの音楽の首都としての役割を保ってきた。

役割の継続が真正性に入っています。

シエナ(717)の「中世に両替商、いまは銀行」、アレッポ(21)の「手工芸と商業の活動が続いている」と同じ考え方です。

誰が守っているか — 所有の割合が三つに分かれる

所有

所有 割合
私有 約75%
公有 18%
ローマ・カトリック教会 7%

この章と前の章では、所有の書かれ方が資産ごとに違います——ビニャーレス840 は約92%が私有、英国の湖水地方422 は公的所有が合わせても過半に届かない、ムスカウ1127 は主に国有、ポルト755 は大きな割合が私有。ウィーンは三つに分けて割合が書かれています。

法の層

法 年
連邦記念物保護法 1923年連邦法律公報第533号。最新の改正は2000年1月1日発効
市の建築法と旧市街保全に関する改正 1972年ウィーン法律公報第16号
ウィーン自然保護法 1998年(市の一部に適用)
ほかに ガレージ法、樹木保存法

「ガレージ法」と「樹木保存法」が世界遺産の保護の道具に挙がっているのが特徴です。駐車場と樹木という、都市の日常の規則が歴史地区の保護に効いています。

2級で押さえること

2017年に危機遺産になり、2026年に解除された——この章で解除された唯一の資産(前の章ではカスビの王墓が2010-2023年)。原因は真正性の節に書かれている——「緩衝地帯の外に新しく現れつつあるスカイライン」と、「とくに新しい高層建築について」慎重な取り組みを要すること。リガは「建物が低い」ことが価値で、ウィーンは「高層建築」が課題。同じ章で高さの扱いが正反対の向きに書かれている。基準(vi)は「16世紀以来、ヨーロッパの音楽の首都として普遍的に認められてきた」の一文だけ。真正性は「都市の建物・構造・空間の重なり合いと多層の織り合わせ」に存し、音楽の首都としての役割の継続も真正性に入る。城壁を壊したことが次の時代の都市計画(リングシュトラーセ)を生んだ。所有は私有約75%・公有18%・ローマ・カトリック教会7%。法の道具にガレージ法と樹木保存法が挙がっている。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産が出てくるキーワード

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
景観問題「眺望」が、どの節に出てくるか「とくに新しい高層建築について」

いまのところ、この遺産が出てくるキーワードは1つです。ゼミの試作46本で数えた話で、公式テキストの分類ではありません。

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。このキーワードの練習では、ほかの参加記事と並べて読みます——同じ論点が、別の資産でどう書かれているかを見るためです。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:ウィーンの歴史地区の危機遺産の記載について正しいものは?

  1. 2017年に記載され、2026年に解除された
  2. 2017年に記載され、現在も記載が続いている
  3. 危機遺産に記載されたことはない
  4. 2017年に記載され、2026年に解除されたが、緩衝地帯については記載が続いている
正解と解説を開く

正解:1.2017年に記載され、2026年に解除された

2017年から2026年で、解除されました。この章で解除された資産はウィーンだけです(前の章ではカスビの王墓1022 が2010-2023年)。危機遺産の記載に緩衝地帯だけを対象とする扱いはありません。アレッポ21(2013年〜)、オデーサ1703(2023年〜)は現在も記載が続いています。

確認2:ウィーンの歴史地区の真正性の節が、最後に求めていることは?

  1. 中世の城壁の復元
  2. リングシュトラーセ沿いの建物の高さの統一
  3. 顕著な普遍的価値を支える属性を考慮する慎重な取り組みと、緩衝地帯の外側における新しい高層建築の全面的な禁止を求めること
  4. 顕著な普遍的価値を支える属性——その視覚的な質を含む——を考慮するきわめて慎重な取り組み、とくに新しい高層建築について
正解と解説を開く

正解:4.顕著な普遍的価値を支える属性——その視覚的な質を含む——を考慮するきわめて慎重な取り組み、とくに新しい高層建築について

> ウィーンの継続する発展は、顕著な普遍的価値を支える属性——その視覚的な質を含む——を考慮するきわめて慎重な取り組みを要する。とくに新しい高層建築について。全面的な禁止を求める記述はありません。その前に、都市景観の進化が緩衝地帯の外に新しく現れつつあるスカイラインに反映されていると書かれています。リガ852 は「建物が低い」ことが価値で、向きが正反対です。

確認3:ウィーンの歴史地区の登録基準(vi)の記述について正しいものは?

  1. モーツァルト・ベートーヴェン・シューベルトの住居を列挙している
  2. 「16世紀以来、ヨーロッパの音楽の首都として普遍的に認められてきた」の一文だけである
  3. 記述が置かれていない
  4. 「16世紀以来ヨーロッパの音楽の首都として認められてきた」としたうえで、ウィーン古典派とロマン主義の役割を詳しく述べている
正解と解説を開く

正解:2.「16世紀以来、ヨーロッパの音楽の首都として普遍的に認められてきた」の一文だけである

基準(vi)は「16世紀以来、ウィーンはヨーロッパの音楽の首都として普遍的に認められてきた」の一文だけです。この章でいちばん短い基準の記述です。ウィーン古典派とロマン主義、そしてモーツァルト・ベートーヴェン・シューベルトの住居は、Brief synthesis のほうに書かれています。

確認4:ウィーンの歴史地区の保護の道具として挙げられているものに含まれるものは?

  1. 連邦の河川法
  2. 国の音楽文化保護法
  3. ガレージ法と樹木保存法
  4. ガレージ法と樹木保存法に加え、高層建築の高さを定める連邦の建築基準
正解と解説を開く

正解:3.ガレージ法と樹木保存法

法の道具には、連邦記念物保護法(1923年。最新の改正は2000年1月1日発効)、市の建築法と旧市街保全に関する改正(1972年)、ウィーン自然保護法(1998年)のほか、ガレージ法、樹木保存法が「関連する」として挙げられています。駐車場と樹木という都市の日常の規則が歴史地区の保護に効いています。高層建築の高さを定める連邦の基準についての記述はありません。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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