ビニャーレス渓谷

登録年
1999年
所在国
キューバ
登録区分
文化遺産
地域
南北アメリカ
登録基準
(iv)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか

キューバ島の西端近く、シエラ・デ・ロス・オルガノスの中。山に囲まれたカルスト景観で、モゴーテ(mogotes)と呼ばれるドーム状の石灰岩の岩塔が点在し、高さ300 mに達するものもあります。

19世紀の初めに植民され、肥沃な土壌と、牧畜と飼料作物・食用作物の栽培に適した気候を持ちます。数世紀にわたって、伝統的な農法がほとんど変わらずに残ってきました——とくにタバコの栽培で。

機械化すると品質が下がるから、変わらなかった

UNESCO はその理由を書いています。

栽培と収穫の機械的な方法はタバコの品質を下げるため、畜力のような昔ながらの方法がいまも使われている。

「伝統が守られた」のではなく「機械化が品質に合わなかった」。ここが読みどころです。

文化的景観としての質は、農場と村の土着の建築によって高められます。平野に散る建物の大半は簡素で、地元の自然の材料で建てられ、住居や家族農場として使われています。ビニャーレスの村は大通りに沿って細長く伸び、元来の配置と、ポーチのある平屋の木造家屋を中心とする植民地建築の興味深い例を多く残しています。

多文化の統合

渓谷には先住の人びと・スペインの征服者・かつてタバコ農園で働いたアフリカ人奴隷の寄与が統合された独自の文化があります。その好例として、畑で働く者(veguero)の音楽表現が挙げられ、ベニート・エルナンデス・カブレラ(通称ビニャレーロ)がその主たる担い手だったとされます。伝統的な工芸も盛んです。

キューバの人びとは、場所の美しさと歴史的・文化的な重要性からこの渓谷に強く自分を重ねるとされ、視覚芸術ではカリブの景観の象徴に変えられてきました。

基準は(iv)ただ一つです(メイマンドの(v)単独と並ぶ、この章で2件だけの単独基準)。

真正性 — 八つの属性のうち六つが名指しされている

この節は、作業指針の読み方の教材になります。

UNESCO はビニャーレス渓谷を「生きている景観」と呼び、次の面で高い度合いの真正性があるとしています。

# 作業指針第82項の属性 ビニャーレスで名指しされているか
① 形と意匠 ○
② 材料と材質 ○
③ 用途と機能 ○
④ 伝統・技術と管理の仕組み ○(伝統と技術)
⑤ 位置と環境 ○
⑥ 言語その他の無形遺産の形態 —
⑦ 精神と感性 ○
⑧ その他の内的・外的要因 —

六つが名指しされています。姫路城で示されているのは4つ(形と意匠・材料と材質・伝統と技術・位置と環境)でした。遺産ごとに、示される属性の数も組み合わせも違います。

⑦精神と感性が入っているのが特徴です。作業指針第83項は、精神と感性のような属性は真正性の条件の実際の適用に馴染みにくいとしつつ、それでも性格と場所の感覚の重要な指標だとしています。

渓谷は独自の性格を保ちながら、近代の生活条件に適応し、来訪者の流れを受け入れてきたとされ、資産の属性は顕著な普遍的価値を真実にかつ信頼できる形で表している、と結ばれます。

完全性と、脅かすもの

境界の中に、顕著な普遍的価値を表すのに必要な自然と文化の要素がすべてあるとされます。カルスト景観を定める特徴、農業の利用の型、土着の建築、そして土地保有の形、伝統的な農法、それを支える基盤——これらが文化的景観に結びついた無形遺産を支えています。

132 km² の資産は、重要性を伝える特徴と過程の完全な表現を十分に確かにする大きさがあり、開発や放置による悪影響を受けていないとされます。

観光の開発は、資産の完全性にとって将来の脅威になると見込まれる。

真正性の節にも、完全性と真正性を脅かしうる危険が挙げられています。

危険
ハリケーン——この国を頻繁に襲う自然災害
気候変動による水源の減少
都市の社会経済的な発展の必要による圧力の増大

「いまは悪影響を受けていない」と「将来の脅威」が並べて書かれる形は、紅河ハニ族棚田群と同じです。

誰が守っているか — 約92%が私有

所有

所有 割合
私有 約92%
うち個人の農家 30%
うち全国小農業者協会(ANAP) 残り

この章で所有の構成がはっきり書かれているのは、ビニャーレスと英国の湖水地方の2件です。湖水地方はナショナル・トラスト20%超・国立公園庁約4%・ほかの構成員16%で、合わせても過半に届きませんでした。ビニャーレスは約92%が私有。キューバのコーヒー農園(1008)は政府が所有でした。

同じ国の中でも、所有の形はまったく違います。

法と機関

根拠 年
キューバ共和国憲法の規定 1976年2月24日
国家記念物に指定する宣言 1979年3月27日
文化財保護法(法律第1号) 1977年8月4日
国家・地方記念物法(法律第2号) 1977年8月4日

カルスト景観はビニャーレス国立公園の一部でもあります。管理の最高の責任は国家文化遺産評議会にあり、地元の監督はピナール・デル・リオ州文化遺産センターと、科学技術環境省・観光省・農業省の州支局(いずれも州行政評議会の一部)が担います。

管理計画はあるが、資源が足りない

管理計画は1999年に州と市の行政評議会によって承認されました。9つのサブプログラム(行政/研修/建設/保護/農業資源管理/研究・監視・科学協力/公開利用/解説と環境教育/機関間の協力)に67の事業が含まれます。

計画の一部を実施するための財政的・物的な資源が乏しい。

計画があることと、実施できることは別です。紅河は計画が法的承認を経ていない、バッティールは村議会が最終化中、ビニャーレスは承認済みだが資源が足りない。「管理計画がある」で止めずに、どの段階かを読みます。

2級で押さえること

機械化すると品質が下がるから、伝統的な農法が残った——「守った」ではなく「機械化が合わなかった」。真正性で作業指針第82項の8属性のうち六つが名指しされている(形と意匠・材料と材質・用途と機能・伝統と技術・位置と環境・精神と感性)。姫路城は4つで、遺産ごとに数も組み合わせも違う。約92%が私有(うち個人農家30%、残りは全国小農業者協会)。管理計画は1999年承認で9つのサブプログラムに67事業だが、実施の資源が乏しい——「計画がある」で止めずに段階を読む。基準は(iv)単独。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで2通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
嗜好品作物そのものか、作る仕組みの全体か「栽培と収穫の機械的な方法はタバコの品質を下げるため」
カルスト地形溶ける岩が、その資産で何をしているか「カルスト景観を定める特徴、農業の利用の型、土着の建築、そして」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:ビニャーレス渓谷で伝統的な農法が数世紀にわたって残った理由として、UNESCO が挙げているものは?

  1. 国家記念物の指定によって機械の使用が禁じられたこと
  2. モゴーテに囲まれた地形のため機械が入れなかったこと
  3. 渓谷の約92%が私有地で、個人の農家が機械を導入する資力を持たなかったため、畜力に頼り続けたこと。全国小農業者協会もそれを方針としたこと
  4. 栽培と収穫の機械的な方法はタバコの品質を下げるため、畜力のような昔ながらの方法がいまも使われていること
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正解:4.栽培と収穫の機械的な方法はタバコの品質を下げるため、畜力のような昔ながらの方法がいまも使われていること

UNESCO は、栽培と収穫の機械的な方法はタバコの品質を下げるため、畜力のような昔ながらの方法がいまも使われていると書いています。「伝統が守られた」のではなく「機械化が品質に合わなかった」という読みどころです。所有の構成(約92%が私有、うち個人農家30%、残りは全国小農業者協会)は保護管理の節に出てきます。

確認2:ビニャーレス渓谷の真正性で名指しされている属性の数は、作業指針第82項の8つのうちいくつか。

  1. 四つ(形と意匠・材料と材質・伝統と技術・位置と環境)
  2. 八つすべて
  3. 六つ(形と意匠・材料と材質・用途と機能・伝統と技術・位置と環境・精神と感性)
  4. 三つ(形と意匠・材料と材質・用途と機能)で、無形の属性は真正性の判断から外されている
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正解:3.六つ(形と意匠・材料と材質・用途と機能・伝統と技術・位置と環境・精神と感性)

ビニャーレス渓谷は「生きている景観」とされ、位置と環境・形と意匠・材料と材質・用途と機能・伝統と技術・精神と感性の面で高い度合いの真正性があるとされています。姫路城で示されているのは4つ(形と意匠・材料と材質・伝統と技術・位置と環境)でした。遺産ごとに、示される属性の数も組み合わせも違います。

確認3:ビニャーレス渓谷の管理計画について正しいものは?

  1. 1999年に承認され9つのサブプログラムに67の事業を含むが、一部を実施するための財政的・物的な資源が乏しい
  2. 登録の時点で管理計画が存在しなかった
  3. 管理計画は作られたが法的な承認を経ていない
  4. 1999年に承認され67の事業がすべて完了しており、次の計画の策定に移っているため、資源の不足は解消している
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正解:1.1999年に承認され9つのサブプログラムに67の事業を含むが、一部を実施するための財政的・物的な資源が乏しい

管理計画は1999年に州と市の行政評議会によって承認され、9つのサブプログラムに67の事業を含みます。しかし計画の一部を実施するための財政的・物的な資源が乏しいと書かれています。「管理計画がある」で止めずに、どの段階かを読みます——紅河は法的承認を経ていない、バッティールは村議会が最終化中、ビニャーレスは承認済みだが資源が足りない。

確認4:ビニャーレス渓谷の完全性について、UNESCO が「将来の脅威になると見込まれる」としているものは?

  1. 気候変動による水源の減少
  2. 観光の開発
  3. ハリケーン
  4. 都市の社会経済的な発展の必要による圧力の増大で、すでに完全性に悪影響が及んでいる
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正解:2.観光の開発

完全性の節は、資産が開発や放置による悪影響を受けていないとしたうえで、観光の開発が将来の脅威になると見込まれると書いています。ハリケーン・気候変動による水源の減少・都市の社会経済的な発展の圧力は、真正性の節で「完全性と真正性を脅かしうる危険」として挙げられており、いずれもすでに悪影響が及んでいるとは書かれていません。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。