世界遺産を支える仕組みと英語表現

基本を学ぶ

誰が決め、誰が支えているのか

世界遺産委員会

登録するかどうかを決めるのが世界遺産委員会です。条約を結んだ国の中から選ばれた21か国で構成され、年に1回開かれます。

世界遺産基金

遺産を守るためのお金を集めるしくみが世界遺産基金です。条約を結んだ国が出すお金などでつくられ、支援が必要な国の遺産を守るために使われます。

3つの専門機関

  • ICOMOS … 文化遺産の調査・評価
  • IUCN … 自然遺産の調査・評価
  • ICCROM … 保存や修復の技術を研究し、人を育てる

ICCROM は登録の審査をする機関ではありません。ここが区別のポイントです。

英語で世界遺産

4級には英語の問題も出ます。基本の言い方を押さえておきましょう。

  • World Heritage … 世界遺産
  • Outstanding Universal Value … 顕著な普遍的価値
  • cultural heritage … 文化遺産
  • natural heritage … 自然遺産
  • UNESCO … ユネスコ(国連教育科学文化機関)

とくに heritage(遺産)という単語は、そのまま問われることがあります。

3級 3級向けに理解を深める

4級では委員会・基金・3つの専門機関と英語の言い方を覚えました。3級では、それぞれが何を担っているのかを動詞で結び直します。

三つの機関を動詞で覚える

ICOMOS は文化遺産を評価する。IUCN は自然遺産を評価する。ICCROM は保存と修復の技術を研究し、人を育てる。ICCROM だけが登録の審査に関わりません。ここが取り違えやすいところです。決めるのは世界遺産委員会で、評価する機関とは別です。

委員会が21か国であることの意味

世界遺産委員会は、条約を結んだ国の中から選ばれた21か国で構成されます。条約を結んだ国すべてが同時に委員になるわけではありません。任期があり、入れ替わります。「全部の国が決めている」のではない、という点が要点です。

基金は誰のためにあるか

世界遺産基金は、条約を結んだ国が出すお金などでつくられ、支援が必要な国の遺産を守るために使われます。守る責任は第一にその国にありますが、その国だけでは支えきれないときに国際社会が支える、という形が基金に表れています。

英語をもう一段

4級では World Heritage / Outstanding Universal Value / cultural heritage / natural heritage / UNESCO を覚えました。3級では、ここに略称と機関名を結びつけます。顕著な普遍的価値は OUV と略されます。3級の公式テキストには「英語で読んでみよう!」として46件の遺産の英文があり、遺産名の英語表記も出題の範囲に入ります。

3級で押さえること

  • ICOMOS=文化を評価、IUCN=自然を評価、ICCROM=保存修復の研究と育成
  • 委員会は21か国。締約国すべてではない
  • 顕著な普遍的価値は OUV と略す

2級 2級向けに理解を深める

この層は作業指針 WHC.25/01(2025-07-16) から書いている。作業指針は改訂され、段落の番号も中身も変わる。教材が基準にするのは第5版・第6版(2024年の世界遺産委員会まで反映)で、現行の作業指針とは別。適用時点が確かめられていないものは、その旨を書いてある。

世界遺産委員会(第19項)

世界遺産委員会は21の委員で構成され、少なくとも年1回(6〜7月)開催される。委員会はビューローを設置し、会期中に必要と認めるだけ頻繁に開催する。

作業指針は「21の委員(members)」と書きますが、条約第8条は「締約国(States Parties)で構成する」と定め、当初の15から21に増やされたとしています。

つまり委員は国です。「21か国」という言い方は条約に沿っています。作業指針の「members」だけを読んで、個人の専門家が務めると取り違えないようにします。

諮問機関の主題別研究(第147項)

世界遺産委員会の要請により、または必要に応じて、ICOMOS と IUCN は主題別研究(thematic studies)を行い、潜在的な推薦資産を地域・世界・主題の文脈で評価する。

これらの研究は、締約国が提出した暫定一覧表の検討と、暫定一覧表の調和のための会合の報告、および諮問機関や資格ある組織・個人が行ったその他の技術的研究に基づくべきである。

そして、はっきり書かれています。

これらの研究は、締約国が資産を推薦する際に作成する比較分析と混同してはならない。

誰が作る何のため
主題別研究ICOMOS と IUCN潜在的な推薦資産を地域・世界・主題の文脈で評価する
比較分析締約国自分が推薦する資産について

日本の遺産でこれが出てくる例

石見銀山の登録決議(31 COM 8B.26・2007年)には、こうあります。

また、作業指針第147項に従い、石見とこの地域のほかの鉱山遺跡の主題別研究を、関係する締約国と諮問機関と協力して行うことを要請する。

一つの遺産の登録で、地域全体の研究が要請されました。

決議が引いたのは2007年時点の第147項ですが、現行版(WHC.25/01(2025-07-16))でも第147項は主題別研究でした(2026-10-06 実測)。ただし、同じ番号が同じ内容である保証はありません。

世界遺産基金の原資(第223項)

基金の資源は、条約の締約国が行う分担金(compulsory)と任意拠出金(voluntary)、および基金の規則が認めるその他の資源からなる。

二種類あります。「任意拠出金だけ」でも「分担金だけ」でもありません。

さらに、

可能なかぎり、世界遺産基金は、ほかの資金源から国際的支援のための追加の資金を動かすために用いられるべきである。

基金そのものを使い切るのではなく、呼び水にするという考え方です。

三つの諮問機関

3級で押さえた三つを、役割で並べ直します。

機関扱うもの
ICOMOS文化遺産
IUCN自然遺産
ICCROM文化財の保存・修復の研修と助言

複合遺産は ICOMOS と IUCN の両方が調べます。

主題別研究を行うのはICOMOS と IUCNで、ICCROM はここに挙げられていません(第147項)。

2級で押さえること

  • 世界遺産委員会は21の委員で構成され、少なくとも年1回(6〜7月)開催(第19項)。委員は国。条約第8条が「締約国で構成」と定め、当初15から21に増やされた
  • ICOMOS と IUCN が主題別研究を行い、潜在的な推薦資産を地域・世界・主題の文脈で評価(第147項)
  • 主題別研究(諮問機関)と比較分析(締約国)を混同してはならないと明記されている
  • 石見銀山の決議(31 COM 8B.26・2007年)が第147項に従って主題別研究を要請した
  • 同じ段落番号が同じ内容である保証はない。版を添えて読む
  • 基金の原資は分担金と任意拠出金、およびその他の資源(第223項)
  • 基金はほかの資金源から追加の資金を動かすために用いられるべきとされる
  • 主題別研究を行うのは ICOMOS と IUCN。ICCROM は挙げられていない

同じ論点が出てくる記事

2級の中心は、個別の暗記ではなく横断にあります。この記事で出てきた論点は、ほかの記事にも出てきます。

一次資料は一つではない

遺産ページに無ければ、登録決議や作業指針を見る。

  • 石見銀山 … 遺産ページに節が無く、登録決議にある
  • 世界遺産のしくみ(この記事)… 第147項の主題別研究と、締約国の比較分析は別
  • 数字の比べ方 … 版と段落を添える。記述が割れたときの決め方
  • 明治日本の産業革命遺産 … この記事は決議を扱っていないと明記

この記事の出どころ

  • UNESCO, Operational Guidelines for the Implementation of the World Heritage Convention, WHC.25/01(2025-07-16) https://whc.unesco.org/document/222376(2026-10-06 取得)

級別の確認問題

3級 確認問題

確認1:ICCROM(文化財保存修復研究国際センター)の役割として正しいものは?

  1. 保存と修復の技術を研究し、人を育てる
  2. 文化遺産の推薦を専門的に評価する
  3. 自然遺産の推薦を評価する
  4. 登録するかどうかを決める
正解と解説を開く

正解:1.保存と修復の技術を研究し、人を育てる

ICCROMだけが登録の審査に関わりません。評価はICOMOSとIUCN、決めるのは世界遺産委員会です。

確認2:世界遺産委員会の委員国についての説明として正しいものは?

  1. 一度選ばれた国は、脱退するまで委員であり続ける
  2. 遺産を多くもつ国から自動的に選ばれる
  3. 条約を結んだ国すべてが、順番に全員委員になる
  4. 任期があって入れ替わるので、同じ国がずっと委員であり続けるわけではない
正解と解説を開く

正解:4.任期があって入れ替わるので、同じ国がずっと委員であり続けるわけではない

条約を結んだ国の中から選ばれた21か国で構成されます。「全部の国が決めている」のではない、という点が要点です。

確認3:世界遺産基金のお金の出どころについての説明として正しいものは?

  1. UNESCO の予算からまかなわれ、各国は負担していない
  2. 条約を結んだ国が出すお金などによってつくられている
  3. 世界遺産に登録された遺産がある国が負担している
  4. 登録された遺産の入場料収入を集めてつくられている
正解と解説を開く

正解:2.条約を結んだ国が出すお金などによってつくられている

守る責任は第一にその国にありますが、その国だけでは支えきれないときに国際社会が支える、という形が基金に表れています。

確認4:3級の公式テキストにある「英語で読んでみよう!」についての説明として正しいものは?

  1. 登録基準の英文だけを集めたもので、遺産名は出てこない
  2. 4級のテキストにだけあり、3級のテキストには無い
  3. 46件の遺産を英語で説明していて、遺産名の英語表記も出題の範囲に入る
  4. 英語の問題は出ないので、読まなくてよい補助の資料である
正解と解説を開く

正解:3.46件の遺産を英語で説明していて、遺産名の英語表記も出題の範囲に入る

3級では、略称と機関名まで英語で結びつけます。顕著な普遍的価値は OUV と略されます。

2級 確認問題

確認1:作業指針第147項が定めている「主題別研究」について正しいものは?

  1. 締約国が推薦書の中で作成する比較分析と同じものである
  2. ICOMOS と IUCN が、潜在的な推薦資産を地域・世界・主題の文脈で評価するために行う
  3. 世界遺産センターが毎年すべての遺産について行う
  4. 危機遺産リストに記載された遺産についてのみ行われる
正解と解説を開く

正解:2.ICOMOS と IUCN が、潜在的な推薦資産を地域・世界・主題の文脈で評価するために行う

締約国が作成する比較分析と混同しないよう明記されています。暫定一覧表の検討や、その調和のための会合の報告に基づくべきとされます。石見銀山の登録決議(31 COM 8B.26・2007年)は、この第147項に基づいて地域のほかの鉱山遺跡との主題別研究を要請しました。(作業指針 WHC.25/01(2025-07-16) 第147項)

確認2:世界遺産委員会を構成する「委員」について、条約と作業指針を読み合わせたときに正しいものは?

  1. 条約は人数を定めておらず、作業指針だけが21と定めている
  2. 作業指針が「委員(members)」と書いているため、個人の専門家が務める
  3. 条約第8条は「締約国」で構成すると定め、当初の15から21に増やされた。作業指針第19項の「21の委員」はその締約国を指す
  4. 条約は21、作業指針は15と、数が食い違っている
正解と解説を開く

正解:3.条約第8条は「締約国」で構成すると定め、当初の15から21に増やされた。作業指針第19項の「21の委員」はその締約国を指す

作業指針第19項は「21の委員(members)」、条約第8条は「締約国で構成する」と書きます。条約は当初15で、のちに21に増やされました。委員は国です。 「members」だけを読んで個人の専門家だと取り違えないのが、二つの一次資料を読み合わせる意味です。(作業指針 WHC.25/01(2025-07-16) 第19項/世界遺産条約 第8条)

確認3:世界遺産基金の原資について正しいものは?

  1. ユネスコの通常予算からの繰り入れのみ
  2. 締約国の分担金と任意拠出金、および基金の規則が認めるその他の資源
  3. 入場料収入と寄付金
  4. 締約国の任意拠出金のみ
正解と解説を開く

正解:2.締約国の分担金と任意拠出金、および基金の規則が認めるその他の資源

分担金(compulsory)と任意拠出金(voluntary)の両方です。基金はさらに、ほかの資金源から国際的支援のための追加資金を動かすために用いられるべきとされます。(作業指針 WHC.25/01(2025-07-16) 第223項(世界遺産基金))

読み終えたら、同じ級のクイズで確認してみましょう。