キューバ南東部の最初のコーヒー農園の考古学的景観

登録年
2000年
所在国
キューバ
登録区分
文化遺産
地域
南北アメリカ
登録基準
(iii) (iv)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか

キューバ南東部、シエラ・マエストラ山脈の麓。19世紀から20世紀初めの植民地期のコーヒー生産を示す文化的景観です。グアンタナモ州とサンティアゴ・デ・クーバ州にまたがり、サンティアゴ・デ・クーバ州側はシエラ・マエストラ国立公園(1980年)の区域に含まれます。

登録されているのは171の旧コーヒー農園(カフェタル)の建築・考古の遺構だけではありません。

要素
171のカフェタルの遺構
灌漑と水の管理のための設備
農園どうしと、コーヒーの積出地を結ぶ山道と橋の交通網

典型的な農園は、所有者の家・段状の乾燥場・脱穀と焙煎の作業場・労働者の住まいから成ります。大きな農園には工房などの附属建物もあります。

誰が作り、誰が働いたか

UNESCO の記述は率直です。急峻で起伏の激しいシエラ・マエストラ山麓の地形は、主にフランス系とハイチ系だった農園主たちが、「アフリカ人奴隷の汗と血を通して」自然環境を利用した工夫を物語る、と書かれています。

湿式のコーヒー精製はこの地域のフランス人が独自に発展させた方式で、貯水槽・水道橋・架水路という固有の水利施設を必要としました。それらはいまも景観の中に見えます。

残る植生も、自然の森や果樹の陰でコーヒーを育てる形と、在来の植物を取り込んだフランス式の整形庭園の両方を示しています。

登録の範囲 — 緩衝地帯が「例外的に」無い

本体 81,475 ha
緩衝地帯 設定されていない
構成 連続資産(serial)

UNESCO は理由を明記しています。171の農園とその間の景観を含めた territory の広がりのため、例外的に緩衝地帯を含まない。

「例外的に(Exceptionally)」という語が使われています。緩衝地帯が無いことは、ここでは説明を要する扱いです。

英国の湖水地方にも緩衝地帯がありませんが、理由が違います。湖水地方は境界が1951年指定の国立公園そのものだから。キューバは171の農園とその間の土地まで本体に入れたから。

「緩衝地帯が無い」で終わらせず、なぜ無いのかまで読みます。

完全性 — 放棄されたから、残った

完全性の理由が、ほかの文化的景観と逆です。

UNESCO は、この景観が無傷で残った主な理由を20世紀初めにこの地域の大部分が放棄されたことだと書いています。この地域の伝統的なコーヒー栽培の技法が、ラテンアメリカの他の地域で採られた新しい方法にだんだん太刀打ちできなくなったためです。

800 km² を超える範囲に171の農園という広さが、栽培から精製、そして製品を市場へ結んだ道・小径・橋までを含む文化的景観の保存を可能にしたとされます。

いまの脅威

脅威 中身
放棄そのもの 大部分が放棄された考古遺跡であり、自然が景観を取り戻している。侵入を防ぐため、農園を刈り払い囲う作業が行われてきた
地震 この地域は活発な地殻変動帯で、地震の記録がある
観光と資源開発 将来、無秩序な観光と自然資源の利用による脅威が増しうる。ただしいまは孤立しているため、大半の文化資産への到達がきわめて限られている
気候変動 コーヒー農園への影響、とくに干ばつ

「残った理由」と「いまの脅威」が、どちらも放棄に結びついています。放棄が保存を可能にし、放棄が自然の侵入を招いています。

真正性 — 修復のたびに掘って、文書を読む

登録範囲内のカフェタルは、重要な物質文化を伴う農業産業の時代の豊かで完全な歴史を示すとされています。残る証拠には、湿式精製に必要だった水道橋・架水路・貯水槽・果肉を除く臼の巧妙な仕組みが含まれます。

農園主は多くがフランス系かハイチ系で、音楽・舞踊・食文化に独特の地域文化を作り、それがいまも続いていると書かれています。

修復の過程で真正性をどう保つか

約50か所の考古遺跡での丁寧な発掘と研究、そしてキューバとフランスの文書館にある遺言書・日記・旅行者の記録といった文字資料の検討によって保たれる、とされています。

修復の事業は詳細な考古学的・文献的な研究に基づき、本物の材料と技法を用いてきました。1960年代のラ・イサベリカ博物館の整備、近年のティ・アリバ農園の所有者の家の博物館化、サン・フアン・デ・エスコシアの庭園がその例です。

農園の保存状態はばらばらです。復元されたラ・イサベリカの博物館から、考古遺跡以上のものではない廃墟までが同じ資産に含まれます。共通の特徴を持ちながら、一つずつが固有の要素を持って異なるとされています。

もとの道路施設の一部は改良されましたが、大半はラバの道や歩道のままです。

誰が守っているか、そして資料の食い違い

所有と保護

構成資産は農業省(Minagri)の各機関を通じてキューバ政府が所有しています。国は国家記念物委員会を通じて、フランス系コーヒー農園集落の廃墟の体系に法的保護と保全を与えます。州のレベルでは州文化遺産センターが担い、サンティアゴ市の保存官事務所が関わります。

シエラ・マエストラ国立公園(1980年)の中では強い法の保護が働いています。グアンタナモ州内の農園は、ニペ-サグア-バラコア山系の地域計画規制の一部として特別な保護を受けます。

観光の開発計画は、自動車が入れない歩道で結ばれた定められた区域での管理された観光に絞られています。

登録基準の表記が割れている

UNESCO 自身のページで、登録基準が二通り出てきます。

出どころ 基準
ページ下部の一覧(Criteria) (iii)(iv)
顕著な普遍的価値の中の見出し (ii) と (iv)

どちらかが間違いだと決めつけることはできません。ゼミはページ下部の一覧((iii)(iv))を採ります。ただし食い違いがあること自体を記録に残します。姫路城の建物の数(83と82)と同じ扱いです。

2級で押さえること

放棄されたから残った——20世紀初めに新しい技法に太刀打ちできず大部分が放棄されたことが、完全性の主な理由。その放棄が、いまは自然の侵入という脅威にもなっている。緩衝地帯が「例外的に」無い(171の農園とその間の景観まで本体に入れたため)。湖水地方の「無い」とは理由が違う。保存状態は復元された博物館から考古遺跡以上のものではない廃墟までばらばら。登録基準の表記が UNESCO のページ内で割れている(一覧は(iii)(iv)、見出しは(ii)と(iv))。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで2通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
嗜好品作物そのものか、作る仕組みの全体か「だんだん太刀打ちできなくなった」
地殻変動地殻の動きが、その資産で何の役を果たすか「活発な地殻変動帯」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:キューバ南東部のコーヒー農園の景観が無傷で残った主な理由として、UNESCO が挙げているものは?

  1. 国立公園に早くから指定され、立ち入りが厳しく制限されてきたこと
  2. 農園主の子孫が建物を住居として使い続けてきたこと
  3. 湿式精製の水利施設が頑丈に作られており、地震の多い地域でありながら倒壊を免れてきたこと。所有者の家も同じ工法で建てられていたこと
  4. 20世紀初めに、伝統的な栽培技法が他地域の新しい方法に太刀打ちできなくなり、地域の大部分が放棄されたこと
正解と解説を開く

正解:4.20世紀初めに、伝統的な栽培技法が他地域の新しい方法に太刀打ちできなくなり、地域の大部分が放棄されたこと

UNESCO は、無傷で残った主な理由を20世紀初めに地域の大部分が放棄されたことだと書いています。伝統的な栽培技法が、ラテンアメリカの他の地域で採られた新しい方法にだんだん太刀打ちできなくなったためです。その放棄が、いまは自然が景観を取り戻すという脅威にもなっています。シエラ・マエストラ国立公園の指定は1980年で、放棄よりあとです。

確認2:キューバ南東部のコーヒー農園に緩衝地帯が無い理由として、UNESCO が明記しているものは?

  1. シエラ・マエストラ国立公園が周囲を囲んでいるため
  2. 171の農園とその間の景観まで本体に含めた territory の広がりのため、例外的に緩衝地帯を含まない
  3. 活発な地殻変動帯にあり、境界を固定できないため
  4. 大半の農園が孤立していて到達がきわめて限られており、周囲からの開発の圧力がそもそも存在しないため。将来の観光による脅威も指摘されていない
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正解:2.171の農園とその間の景観まで本体に含めた territory の広がりのため、例外的に緩衝地帯を含まない

UNESCO は「例外的に(Exceptionally)」という語を使い、171の農園とその間の景観を含めた territory の広がりのため、緩衝地帯を含まないと明記しています。緩衝地帯が無いことは、ここでは説明を要する扱いです。英国の湖水地方にも緩衝地帯がありませんが、理由は境界が1951年指定の国立公園そのものだからで、違います。

確認3:キューバ南東部のコーヒー農園の修復で、真正性を保つためにUNESCO が挙げている方法は?

  1. 復元を行わず、廃墟のまま保存すること
  2. 残っている建物の形に合わせて、失われた部分を推定で復元すること
  3. 約50か所の考古遺跡での発掘と研究、および両国の文書館にある遺言書・日記・旅行者の記録の検討
  4. 農園主の子孫からの聞き取りを集めて、建物の用途と間取りを口承から復元すること。文書館の記録は照合に用いないこと
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正解:3.約50か所の考古遺跡での発掘と研究、および両国の文書館にある遺言書・日記・旅行者の記録の検討

真正性は、約50か所の考古遺跡での丁寧な発掘と研究と、キューバとフランスの文書館にある遺言書・日記・旅行者の記録といった文字資料の検討によって保たれるとされています。修復の事業は詳細な研究に基づき、本物の材料と技法を用いてきました(ラ・イサベリカ博物館・ティ・アリバ農園・サン・フアン・デ・エスコシアの庭園)。復元しない方針ではありません。保存状態は農園ごとにばらばらです。

確認4:キューバ南東部のコーヒー農園について、UNESCO のページの中で表記が割れているものは?

  1. 登録基準(ページ下部の一覧は(iii)(iv)、顕著な普遍的価値の見出しは(ii)と(iv))
  2. 登録年(2000年と2001年)
  3. 農園の数(171と181)
  4. 本体の面積(81,475 ha と 800 km² で割れていて、どちらを採るかがページ内で決まっていない)
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正解:1.登録基準(ページ下部の一覧は(iii)(iv)、顕著な普遍的価値の見出しは(ii)と(iv))

ページ下部の一覧は(iii)(iv)、顕著な普遍的価値の中の見出しは(ii) と (iv) です。どちらかが間違いだと決めつけることはできないので、ゼミは一覧の(iii)(iv)を採り、食い違いがあること自体を記録に残します(姫路城の建物の数が83と82で割れているのと同じ扱い)。なお81,475 ha と「800 km² を超える範囲」は食い違いではありません——81,475 ha は約815 km² です。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

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