シンガポール植物園

登録年
2015年
所在国
シンガポール
登録区分
文化遺産
地域
アジア
登録基準
(ii) (iv)

基本を学ぶ

どこにあり、何が登録されたのか

シンガポール市の中心。1859年の創設以来の植物園の変化そのものが登録の対象です。

UNESCO は三つの段階を書いています。

段階 中身
遊園(Pleasure Garden) イングランド風景式庭園の様式
植民地の経済植物園 園芸と植物学の研究のための設備を備える
近代の世界水準の植物園 科学機関であり、保全・レクリエーション・教育の場

「イギリスの熱帯の植民地植物園」の優れた例とされ、よく保たれた景観設計と目的の継続を通じて、熱帯植物学と園芸学の科学的知識の進展に鍵となる役割を果たした、と書かれています。

基準(ii) — ゴムのプランテーションの話

基準(ii)の記述は具体的です。

キュー植物園(イギリス)が最初の苗を提供した一方で、シンガポール植物園はその植え付け・育成・東南アジアの大部分とそれ以外への配布の条件を提供した。

19世紀以来この地域の植物研究の中心で、20世紀のプランテーション・ゴムの拡大に大きく寄与したとされます。1875年以来の東南アジアにおける科学・研究・植物保全の重要な中心だったとも書かれています。

登録の範囲

面積
本体 49 ha
緩衝地帯 137 ha

この章でいちばん小さい本体です。紅河16,603 ha・湖水地方229,205 ha・キューバ81,475 ha と比べると、都市の中の49 ha。緩衝地帯(137 ha)は本体の約2.8倍で、この章で本体と緩衝地帯の比がいちばん大きい組み合わせです。

登録は2015年、基準は(ii)(iv)。

この資産は2003年の無形文化遺産保護条約の記載要素「シンガポールのホーカー文化」とも結びついています(植物園そのものとは別の要素です)。

完全性と真正性 — 「さらに強められる」という書き方

完全性

顕著な普遍的価値を表すのに必要な属性をすべて含み、植物園の当初の配置を完全に含んでいるとされます。歴史的な樹木と植栽、庭園の設計、歴史的な建物と構造物が組み合わさって、歴史を通じた植物園の重要な目的を示しています。

そのあとに、こう続きます。

資産の完全性は、重要な植物の植え替えと保持に向けた追加の方針を作ることによって、さらに強められる可能性がある。

真正性

植物園として、また科学研究の場としての利用が続いていることによって示されるとされます。物質的な残りの真正性は、よく研究された歴史的な樹木と植栽(歴史的な植物標本を含む)、設計された空間配置の歴史的な要素、そして本来の用途で使われているか、その価値と両立する新しい用途に転用されている建物と構造物によって示されています。

この章で三通りの書き方が出そろう

書き方 遺産
弱点をはっきり並べる 紅河ハニ族棚田群(材料・土砂崩れ・生計・観光)
弱点を書かない 英国の湖水地方(属性の分布で価値を述べて終わる)
「さらに強められる」と書く シンガポール植物園

「強められる可能性がある」は、いまは足りていないという意味です。弱点と言い切らずに不足を示す書き方で、これは緩衝地帯の記述にも出てきます(次の節)。

誰が守っているか — 都市の中の植物園

指定と保護

大部分が国立公園の中にあり、ほかに保全区域・樹木保全区域・自然区域(雨林の区域に適用)の指定があります。44本の遺産樹木が資産の中にあり、旧ラッフルズ・カレッジの1〜5号館、ラッフルズ・ホール、E.J.H. コーナー・ハウス、バーキル・ホール、ホルタム・ホール、リドリー・ホール、6号館、車庫、野外音楽堂、スワン・レイク・ガゼボといった保護された建物・構造物があります。

都市計画の仕組みで守る

仕組み 中身
計画法(Planning Act) 主たる保護。保全と開発を規制し、新しい開発や工事に許可を要する
シンガポール・コンセプトプラン 40〜50年の戦略的計画を導く
URA 国の土地利用計画・保全の当局
マスタープラン(2014) 計画法のもとで作られる法定計画。定期的に見直される
開発管理計画 新しい開発の高さと位置、保全建物とその周囲の保全原則を示す

緩衝地帯でも「強められる」と書かれている

緩衝地帯内の土地は「戸建て住宅地域」(「グッド・クラス・バンガロー地域」を含む)に指定され、住宅開発の高さと形態に指針があります。この指針のもとで、緩衝地帯内の開発は概して低層・低密度を保つべきとされます。

ただし、これは「戸建て住宅地区」の指定を緩衝地帯の全体に適用することによって強められる可能性がある。

緩衝地帯の全体に指定が及んでいないことが読み取れます。管理計画は、顕著な普遍的価値の属性の実効的な保護・保全・提示・伝達を主たる目的として作られ、資産の管理の包括的な枠組みを与えるとされています。

2級で押さえること

基準(ii)はゴムのプランテーション——キュー植物園が苗を提供し、シンガポールが植え付け・育成・東南アジアへの配布の条件を提供した。本体49 ha でこの章で最小、緩衝地帯137 ha は本体の約2.8倍で比は最大。完全性と緩衝地帯の両方に「さらに強められる可能性がある」と書かれている——弱点と言い切らずに不足を示す、この章で三つめの書き方。保護は計画法・コンセプトプラン(40〜50年)・マスタープラン(2014)という都市計画の仕組みで、44本の遺産樹木が指定されている。

準1級 準1級向けに理解を深める

準1級の掲載範囲は確かめていません。準1級の範囲は「日本の全遺産と主要な世界の遺産700件」ですが、どの700件かは公式に出ていません。ここに並ぶのは、ゼミが作ったキーワードの練習(試作46本)で、この記事がどのキーワードに入ったかです。公式テキストの分類ではありません。

この遺産は、準1級のキーワードで2通りに出てきます

キーワードこのキーワードで見るもの本文の手がかり
大英帝国支配が、説明のどこに、どんな語で出てくるか「キュー植物園(イギリス)が最初の苗を提供した一方で」
庭園庭園が、その資産でどんな扱いを受けているか「歴史的な樹木と植栽、庭園の設計、歴史的な建物と構造物が組み合わさって」

準1級は、遺産を1件ずつではなくキーワードで横に読みます。同じ資産が、キーワードごとに別の一文で引かれます。「この遺産はどのテーマか」ではなく、「このキーワードで読むと、この遺産の何が見えるか」で読みます。

キーワードで練習する

級別の確認問題

2級 確認問題

答えを選んでから、正解と解説を開きましょう。

確認1:シンガポール植物園の登録基準(ii)が述べている内容は?

  1. キュー植物園が最初の苗を提供し、シンガポール植物園が植え付け・育成・東南アジアの大部分とそれ以外への配布の条件を提供したこと
  2. イングランド風景式庭園の様式をそのまま熱帯へ移したこと
  3. 1859年の創設以来、都市の中に49 ha の緑を保ってきたこと
  4. 熱帯の植物をイギリスへ送り出す拠点となり、キュー植物園の収蔵品の大部分がここから供給されたこと。ゴムの苗もここからキューへ渡ったこと
正解と解説を開く

正解:1.キュー植物園が最初の苗を提供し、シンガポール植物園が植え付け・育成・東南アジアの大部分とそれ以外への配布の条件を提供したこと

基準(ii)は、キュー植物園(イギリス)が最初の苗を提供した一方で、シンガポール植物園がその植え付け・育成・東南アジアの大部分とそれ以外への配布の条件を提供したと述べています。20世紀のプランテーション・ゴムの拡大に大きく寄与したとされ、1875年以来この地域の科学・研究・植物保全の重要な中心でした。

確認2:シンガポール植物園の完全性について、UNESCO の書き方の特徴は?

  1. 弱点を具体的に列挙している
  2. 弱点に触れずに、属性の分布で価値を述べて終わっている
  3. 必要な属性をすべて含むとしたうえで、重要な植物の植え替えと保持の方針が足りないことを、言い切らない形で示している
  4. 完全性が損なわれていると判定し、重要な植物の植え替えと保持の方針を作ることを登録の条件として課しており、履行の期限も定められている
正解と解説を開く

正解:3.必要な属性をすべて含むとしたうえで、重要な植物の植え替えと保持の方針が足りないことを、言い切らない形で示している

顕著な普遍的価値を表すのに必要な属性をすべて含み、当初の配置を完全に含むとしたうえで、重要な植物の植え替えと保持に向けた追加の方針によって「さらに強められる可能性がある」と続けています。これは、いまは足りていないという意味です。弱点と言い切らずに不足を示す書き方で、同じ形が別の箇所にも出てきます。

確認3:シンガポール植物園の緩衝地帯について、UNESCO が書いている不足は?

  1. 緩衝地帯が設定されていない
  2. 「戸建て住宅地区」の指定が緩衝地帯の全体に適用されていない
  3. 緩衝地帯の面積が本体より狭い
  4. 緩衝地帯の中に高層の住宅開発がすでに建っており、顕著な普遍的価値の視覚的な完全性が失われている
正解と解説を開く

正解:2.「戸建て住宅地区」の指定が緩衝地帯の全体に適用されていない

緩衝地帯の土地は「戸建て住宅地域」に指定され、開発は概して低層・低密度を保つべきとされますが、「これは『戸建て住宅地区』の指定を緩衝地帯の全体に適用することによって強められる可能性がある」と書かれています。全体に及んでいないことが読み取れます。緩衝地帯は137 haで、本体49 haの約2.8倍です。

確認4:シンガポール植物園の真正性について、建物に関して書かれていることは?

  1. すべての建物が創設時の用途で使われ続けている
  2. 建物は真正性の根拠から外され、樹木と植栽だけで判断されている
  3. 創設時の用途を失った建物は真正性を損なうため、順次取り除く方針が立てられている。44本の遺産樹木もその対象である
  4. 本来の用途で使われているか、その価値と両立する新しい用途に転用されていることで示される
正解と解説を開く

正解:4.本来の用途で使われているか、その価値と両立する新しい用途に転用されていることで示される

真正性は、植物園として、また科学研究の場としての利用が続いていることによって示されます。物質的な残りの真正性は、よく研究された歴史的な樹木と植栽、設計された空間配置の歴史的な要素、そして本来の用途で使われているか、その価値と両立する新しい用途に転用されている建物と構造物によって示されています。転用は真正性を損なうとはされていません。

参考資料

確認日:2026年10月26日。世界遺産ゼミは非公式の学習コンテンツです。確認問題は独自に作成しています。特定の試験回への対応は未確定です。

参照した公式教材の版: くわしく学ぶ世界遺産300 <第6版>

この遺産が出題される級は、上のバッジから確認できます。